ブドウ糖を脂肪酸に変える

光合成は、植物が二酸化炭素と水からブドウ糖を作る仕組みでした。ブドウ糖はエネルギーとしてTCA回路に入って燃やされるのが原則です。

しかし、もし、エネルギーが余っていたらどうなるでしょう?

そこから先は植物も動物も変わりません。私がビールを飲んだら中に入っている糖質は、ブドウ糖に分解され、普段の食生活で十分に足りていますから、それがインスリンの働きで、脂肪細胞に送られて貯蔵のために脂肪になります。

植物の場合も、ブドウ糖が十分に足りている時は、TCA回路で燃料にならないで、脂肪に変えられて貯蔵されます。

ブドウ糖から脂肪の要素である脂肪酸がつくられることを脂肪酸生合成といいます。

脂肪酸生合成

β酸化はミトコンドリア内で行われましたが、脂肪酸生合成は、ミトコンドリアの外、細胞質ゾルで行われます。出発点は、オキサロ酢酸とアセチルCoAです。TCA回路のスタートと同じです。

脂肪酸の生合成は、炭素数16(C:16)の飽和脂肪酸パルミチン酸をまず合成します。他の脂肪酸は、出来上がったパルミチン酸を利用してつくられます。

パルミチン酸

パルミチン酸

オキサロ酢酸からクエン酸

オキサロ酢酸は、クエン酸シンターゼという酵素の働きによってアセチルCoAと結合して、CoAが外れてクエン酸になります。ここまではTCA回路での反応と変わりませんが、ATPが十分にあるときは、TCA回路が回りません。

CoAは、HS-CoAと書いたり、H-CoAと書いたり、-CoAと書いたり、本によってまちまちでした。この記事では、HS-CoAと書きます。下で出てくるアシルキャリアプロティンACPがHS-ACPとチオール基をつけたまま書かれているのでそれに合わせました。

オキサロ酢酸とアセチルCoAからクエン酸

オキサロ酢酸とアセチルCoAからクエン酸

クエン酸は、ミトコンドリアの膜を通過することができます。クエン酸はミトコンドリアから外の細胞質ゾルに出ることができます。ちなみに、クエン酸より分子の小さいアセチルCoAはミトコンドリアから外に出られないのだそうです。この辺は面白いところです。

クエン酸は、ミトコンドリアから細胞質ゾルに移動しました。

クエン酸から再びアセチルCoAとオキサロ酢酸へ

細胞質ゾルで、ATP-クエン酸リアーゼという酵素によって、再び、CoAをつけて、アセチルCoAとオキサロ酢酸に戻すことができます。こうして細胞質ゾルにアセチルCoAが出されて、脂肪酸の生合成が行われるようになります。

ATPクエン酸リアーゼ

ATPクエン酸リアーゼ

脂肪酸の合成は、脂肪酸の一つ、パルミチン酸(C:16)をつくるところからスタートします。他の脂肪酸はパルミチン酸を材料にして作られていくようになります。

まずはパルミチン酸がどのように作られていくのかを見ていきます。

アセチルCoAからマロニルCoAへ

細胞質ゾルでは、ミトコンドリアから運ばれてきたアセチルCoAをまず、マロニルCoAという物質に変えます。

アセチルCoAからマロニルCoA

アセチルCoAからマロニルCoA

マロニルCoAからマロニルACPへ

さらに、アシルキャリアプロティンというタンパク質に結合させると同時にCoAをはずして、マロニルACP(ACPはacyl carrier protein)とします。このマロニルACPが脂肪酸を作っていく上で最も重要な物質になります。

マロニルACP

マロニルCoAからマロニルACP

アシルキャリアプロティンは、アシルキャリアタンパク質ともいわれ、ACPと略されます。分子量10,000の小型タンパク質です。補酵素A(CoA)の分子量は757程度なのでACPの方がはるかに大きいです。CoAと同じく-SH基を持ち、CoAと同じように自身は変化を受けずにアシル基を運ぶ役割を持ちます。キャリア(carrier)ですからね。そのまんまです。

アセチルCoAからアセチルACPへ

一方で、別のアセチルCoAにACPが結合し、CoAが外れてアセチルACPになります。

アセチルACP

アセチルCoAからアセチルACP

マロニルACPとアセチルACPからアセトアセチルACPへ

次に、マロニルACPとアセチルACPの間でACPとCO2が離れ合体し、アセトアセチルACPとなります。

アセトアセチルACP

マロニルACPとアセチルACPからアセトアセチルACP

アセトアセチルACPからブチリルACPへ

その後2段階の酵素反応によって、炭素についている余分な酸素を取り外すとともに、炭素のすべての結合部分に水素を結合させて、アシル基とします。

これによって、最初のアセチルACPが炭素数2個だったものが、マロニルACPからの炭素2個分が増えたことになり、炭素数が4個のブチリルACPになります。こんな構造式です。酸素(O)の二重結合が1ヶ所になり、ACP以外は、直鎖の飽和脂肪酸の構造式と変わりません。

ブチリルACP

ブチリルACP

こうしてできたブチリルACPに、再び他のアセチルCoAから合成されてきたマロニルACPが酵素によって反応して結合することができるのです。

同様の反応を繰り返すことによってマロニルACPからの炭素を2個ずつ増やしていって、次第に長い炭素鎖のアシルACPができてきます。炭素数が16の長さになると、端のアシルキャリアプロティンが切れて、カルボキシル基となり、パルミチン酸が完成することになります。

β酸化は脂肪酸から炭素数が2個ずつ減っていきましたが、こちらは炭素数が2個ずつ増えていきます。

パルミチン酸

パルミチン酸完成

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