炭素を固定するカルビン回路 光合成暗反応

光合成の明反応によって、ATPとNADPH+H+というエネルギーがつくられました。次は光合成の暗反応で、空気中の二酸化炭素(CO2)が固定されます。途中できるグリセルアルデヒド3-リン酸から糖がつくられます。

動物の場合は、血液中をグルコース(ブドウ糖)が流れていきますが、植物の場合は、維管束を通して細胞間を流れるのはスクロース(ショ糖)です。

芽

カルビン回路

カルビン回路は、二酸化炭素(CO2)と明反応で産生されたATPとNADPH+H+を使ってブドウ糖を合成します。ブドウ糖の化学式はC6H12O6です。ブドウ糖を1分子合成するのにカルビン回路を6周しなければなりません。

カルビン回路は、大きく3つの過程から構成されています。

  1. 二酸化炭素(CO2)を固定する
  2. 還元と糖産生
  3. RuBP再生

このサイクルの産物は、グリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)という3炭糖リン酸であり、トリオースリン酸とも呼ばれます。

カルビン回路

カルビン回路

二酸化炭素(CO2)を固定する

1個の炭素からできている二酸化炭素(CO2)1分子を、受容体である5炭素化合物、リブロース1,5-ビスリン酸(RuBP)に付加します。何だか焼肉みたいな名前ですが、図を見てください。1番目と5番目の炭素にリン酸が2個(bis)ついているという意味です。

ちなみにこの反応に関わる酵素、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(ルビスコ)は、地球上で最も豊富に存在するタンパク質であり、植物の葉に存在するタンパク質の50%を占めるそうです。炭素を同化することが強く求められているということなのでしょう。

図では簡単な表示にしましたが、せっかくなので、構造式を書いて理解していきたいと思います。

リン酸の構造式

まずはリブロース1,5-ビスリン酸(RuBP)から。

図では両端にあるリン酸はPで表されていますが、リン酸の構造式も書きましょう。。リン酸は化学式はH3PO4です。構造式は、図のようになります。

リン酸

リン酸

さて、焼肉みたいなリブロースは、五炭糖で、5個の炭素からできた糖です。糖の定義などはまた改めます。

リブロース

リブロース

リブロース1,5-ビスリン酸(RuBP)は図の一番上と一番下の炭素にリン酸がついています。リン酸イオンはこんな構造式になります。Piと書くのは、この形です。

リン酸

リン酸イオン

リブロース1,5-ビスリン酸(RuBP)はこのような構造式です。-OHが外れて、-OPO32-がつきます。

RuBP

RuBP

リブロース1,5-ビスリン酸(RuBP)に二酸化炭素が反応すると、2分子の3-ホスホグリセリン酸(3PG)になります。

RuBPから3PG

RuBPから3PG

その結果、炭素数3の3-ホスホグリセリン酸(3PG)が12個できます。3-ホスホグリセリン酸の3-は3番目の炭素にリン酸が1個ついているという意味です。

図ではブドウ糖が1分子できることを想定しているので、6(RuBP)に6(CO2)が結合するように書いてあります。

還元と糖産生

3PGはATPによってリン酸化され、またNADPH+H+から電子をもらって、リン酸( Pi)を1個離します。電子をもらう反応なので、3PGが還元される反応です。

その反応で、G3P(グリセルアルデヒド3-リン酸)が生成されます。G3Pは炭素数3個の物質です。

リン酸( Pi)は、この場合は、PO43-が切り離され、水の中にあるH+がついてアルデヒド(-CHO)になると考えればよいと思います。

3PGからG3P

3PGからG3P

ここで、12個のG3Pのうち、1/6、2個がカルビン回路の産物になる糖を合成するために使われます。G3Pが2個抜けます。

RuBP再生

残った10個のG3Pは、CO2受容体RuBPに再生されます。G3Pは、複雑な反応を経てRuMP(リブロース1-リン酸)になり、ATPのリン酸が使われてこの化合物は、RuBPに変換されます。

単純に計算すると、G3Pは、炭素数3です。10個のG3Pすべての炭素数は30個。RuBPは炭素が5個からできていますから、RuBPは6個できます。

つまり、カルビン回路が1周する度に、1分子のCO2が固定され、1分子のCO2受容体RuBPが再生されるということになりますね。

カルビン回路から出たグリセルアルデヒド3-リン酸のゆくえ

図を見るとお分かりになるように、G3Pの1/6は糖を作るために使われます。その後、一部は多糖であるデンプンになり、葉緑体の中に貯蔵されます。残りは、細胞質ゾルで二糖類であるスクロース(ショ糖)に変換されます。

そして、葉から植物の他の器官に輸送され、そこで加水分解され、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)になります。

細胞の分子生物学 第4版にはショ糖になるまでの道筋が書かれていました。

炭素固定回路で葉緑体内にできるグリセルアルデヒド3-リン酸は三炭糖で,解糖系の中心となる中間体である。その大半は細胞質に運ばれ,解糖系の逆反応数段階を経てフルクトース6-リン酸とグルコース1-リン酸に変換される。

グルコース1-リン酸は次いで,糖ヌクレオチドであるUDPグルコースに変換され,これがフルクトース6-リン酸と結合してショ糖リン酸が合成される。これは二糖であるショ糖(スクロース)の1つ手前の前駆体である。

グルコースが動物の血液中を運搬されるように,植物では糖はおもにショ糖の形で維管束を通して細胞間を輸送され,植物体の各部が必要とする炭水化物を供給する。

グリセルアルデヒド3-リン酸からショ糖まで

KEGGのCarbon fixation in photosynthetic organisms(光合成生物における炭素固定)の経路から見ていきました。

グリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)は、ジヒドロアセトンリン酸に変化します。

ジヒドロキシアセトンリン酸

ここからは、Glycolysis / Gluconeogenesis(解糖/糖新生)にでている、解糖系の経路を逆行します。

グリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)とジヒドロアセトンリン酸からβ-D-フルクトース1,6-ビスリン酸ができます。

 

β-D-フルクトース1,6-ビスリン酸

さらに、β-D-フルクトース1,6-ビスリン酸から、β-D-フルクトース6-リン酸ができます。

β-D-フルクトース6-リン酸

次に、β-D-フルクトース6-リン酸からα-D-グルコース6-リン酸ができます。フルクトース(果糖)もグルコース(ブドウ糖)も炭素数6の糖です。

 

α-D-グルコース6-リン酸

次に、α-D-グルコース6-リン酸からD-グルコース1-リン酸ができます。リン酸の位置が変わっただけです。

ここからさらに、Starch and sucrose metabolism(デンプンとスクロースの代謝)を見ながら書きます。

D-グルコース1-リン酸からUTPを介してUDP-グルコースができます。UDPの形はATPに似ているなと思いました。あとで形を比較してみましょう。

UDP-グルコースは、果糖と反応してUDPを切り離しスクロース(ショ糖)になります。

NOTE

UTPとUDPは初めて知りました。ATPと構造が似ていると思います。ATPは五炭糖のリボースの右についているのがアデニンですが、上で紹介したUTPは、リボースの右についているのが、ウラシルです。

ATP

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