皮膚の常在菌による皮脂の分解とノネナール

皮脂の60%はトリグリセリド、つまり、油です。これは血液由来なので、きっと食べたものに影響されるでしょう。さて、分泌された油は、皮膚に棲む常在菌によって分解されるのと、酸素や紫外線によって過酸化されます。

皮膚の常在菌は、トリグリセリドをどんな脂肪酸に分解するのでしょう?前に短鎖脂肪酸はくさいという記事を書きました。短鎖脂肪酸はにおいのもとです。

そして脂肪酸は過酸化されると、2-ノネナールなど加齢臭のもとになっていました。

この記事では、脂肪酸が分解されて、どんな変化をするか調べてみました。

皮膚の常在菌

皮膚の常在菌について、以下のものが主に知られています。皮膚常在菌は、皮膚表層には好気性菌が、毛包や脂腺には嫌気性菌が棲んでいます。

黄色ブドウ球菌
表皮ブドウ球菌
ミクロコッカス属
アクネ桿菌
マラセチア菌

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus

黄色ブドウ球菌は人体の皮膚表面、毛孔に存在する。特に鼻腔内に存在する常在菌です。

耐塩性であり10%食塩濃度下でも増殖可能なので、ヒトが汗をかいても平気です。

毒性があります。食べ物の中で増殖するときにエンテロトキシンという毒素をつくり、この毒素を食品と一緒に食べることにより、人に危害をおよぼします。菌自体は熱に弱いが、この毒素は100℃30分の加熱でも分解されません。食中毒の原因菌になるのです。(出典

抗生物質の耐性菌としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が院内感染でよく知られています。黄色ブドウ球菌が皮脂を

表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis

主として鼻腔や表皮に常在する。通常は非病原性であり、他の病原菌から表皮を守るバリアーや、表皮を健康に保つ役目を果たしている菌ですが、体内に侵入すると病原性を発することがあります。

表皮ブドウ球菌とアクネ菌は酵素リパーゼによって皮脂の脂肪を分解して弱酸性の脂肪酸を分離し、その遊離脂肪酸が他の菌に対しての抗菌バリアの役割をします。(出典

皮膚表面が弱酸性といわれますが、脂肪酸由来の酸性だったのですね。表皮ブドウ球菌が活発に働いていると、アルカリ性を好む黄色ブドウ球菌は、たくさん増えることができません。

足の臭いは、短鎖脂肪酸であるイソ吉草酸によるものですが、その発生には、表皮ブドウ球菌が大きく関与しているそうです。(出典

ミクロコッカス属(Micrococcus spp.

ミクロコッカス属は、表皮ブドウ球菌と同じ部位に生息し、分離頻度は表皮ブドウ球菌よりかなり少ない。一般的には病原性はほとんどないとみなされています。(出典

アクネ菌(Propionibacterium acnes

アクネ桿菌は、皮脂を分解してプロピオン酸と呼ばれる脂肪酸とグリセリンを作ります。この脂肪酸は皮脂膜を形成して、病原菌などの侵入や紫外線から皮膚を保護しています。しかし、過剰に増殖すると化膿性皮膚炎症(ニキビ)をおこします。この菌はニキビの原因となる菌としてよく知られていますね。

プロピオン酸とは、炭素数3の短鎖脂肪酸です。不快な臭気を有するとあります。ニキビをつぶすとくさいのはこれですか。

プロピオン酸

プロピオン酸

マラセチア菌(Malassezia

マラセチア菌は、環境には存在せず、ヒトや動物の皮膚に常在する担子菌系の酵母で、増殖に脂質を要求することから、皮脂の多い部位に定着しやすいとされています。(出典)皮脂が多いと、脂漏性皮膚炎やフケの原因になります。

どうやら、表皮ブドウ球菌とアクネ菌のタッグで皮膚は守られているようです。脂肪を分解すると、脂肪酸とグリセリンになりますが、どんな脂肪酸が皮膚にはあるのでしょう。

皮膚の脂肪酸

皮脂はどんな脂肪酸組成なのでしょう?皮脂の脂肪は、血液由来。つまり食べものに影響されているのだと思います。なかなかそれらしい文献が見つかりませんでしたが、名古屋女子大学のサイトにあった食餌脂肪の皮膚排泄脂肪におよぼす影響 : I.コーンオイル食の汗,皮脂および血清脂肪酸におよぼす影響を参考にさせていただきました。

この実験は、強制的に発汗するように実施されており、汗をすぐに拭き取って分析していました。その結果、C16:0パルミチン酸、C18:1オレイン酸、C18:0ステアリン酸の順に多いことが分かりました。次に話題にするC16:1であるパルミトレイン酸がごくごくわずかしか検出されていないのは、この実験の被験者が女子大学生だったからだと思います。

当初、私は、食べものによって皮膚に出てくる脂肪酸が変化するだろうと思っていたのですが、検出される脂肪酸の種類の順番は、個人差がなく、一般的な傾向のようです。

ただ、この実験のテーマであるコーンオイルをとるようにすると、脇の下にあるアポクリン腺からだけコーンオイル由来のリノール酸が多く検出されていました。アポクリン腺は食べたものの影響を受けるのかもしれません。

パルミトレイン酸から2-ノネナールができる

別な論文、加齢臭発生機序に基づく対処商品の開発を読むと、2-ノネナールがどのようにできるか分かってきました。

もともとの物質は、C16:1のパルミトレイン酸です。パルミトレイン酸は、炭素数16でオメガ7位に二重結合を持つ一価の不飽和脂肪酸です。パルミトレイン酸は、加齢とともに増える脂肪酸だそうです。

パルミトレイン酸

パルミトレイン酸

パルミトレイン酸が、過酸化されると、2-ノネナールになります。過酸化の原因になるのは、皮脂の成分であるスクアレンが紫外線などで過酸化され、スクアレンモノヒドロペルオキシドになり、それによってパルミトレイン酸が過酸化され、2-ノネナールになっていくようです。

過酸化の道のりを説明できないのですが、反応式はありました。

パルミトレイン酸から2-ノネナール

パルミトレイン酸から2-ノネナール

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