脂肪酸の化学構造式を見た方が油のことをずっと理解できる

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油のことを調べ始めた当初、化学式が時々出てくるのが嫌いでした。ウイキペディアの記事なら毎回出て来ます。それで、なるべく化学式の出てこない本を探して読んでいたのですが、ある時、化学構造式を見ながら読んだらすっきり理解することができ、それからは少し無理して化学構造式も見るようにしています。

もし、あなたが文系で、化学の知識に乏しくても、油のことを詳しく知りたいと思う方なら少しガマンして化学構造式を見ることをおすすめします。

私も文系でした。昔の共通一次世代なので、理科は生物Ⅰと化学Ⅰを選択しました。年齢は50歳をとっくに過ぎており、30年以上前に受験科目の生物Ⅰと化学Ⅰを少し勉強して以来、全くその手の本は読んでいませんでした。

しかし、そんな私でもしばらくガマンしていると脂肪酸の構造式に慣れて、その意味もだんだん分かってきます。油の構造は決して複雑ではありません。

この記事では、油について深く知ろうとした時に必ずぶつかる化学構造式をとその構造式が教えてくれる意味について書きます。

そもそもはマーガリンの話でした

私が以前勤めていた会社で、ちょっとした短い文章を書くことになりました。話題は油についてだったのですが、その時読んだ資料がトランス脂肪酸についての話でした。

『マーガリンやショートニングを作るには、油に水素添加するのだが、それが体によくないらしい。』

一文でいうとこんな内容の話をまとめる作業でした。ところが、油に水素添加するという意味がさっぱり分からなくて、書きながら全く理解できませんでした。

あなたは分かりますか?

それで依頼してきた人に尋ねてみたらその人も分かっていなかったのです。こういう仕事、私は嫌いです。

はるか昔に学んだ知識で、油も糖も炭素(C)、酸素(O)、水素(H)だけでできていることは知っていました。そして、その構成ならまず毒にはならないだろうということぐらいは分かります。

しかし、油に水素(H)をつけることができること、それがマーガリンになること。しかも、それが体によくないとは一体どういうことだろう?

その時に感じた疑問が油の話を調べていくことになった一番大きなきっかけです。

脂肪酸の構造式を見ただけで嫌になる

脂肪酸には種類がいろいろありますが、最初にこのような脂肪酸の構造式を見た時に、これが全部C(炭素数)18のステアリン酸だとは思えませんでした。

私が高校で習ったのは一番下の形です。それがこの3つの書き方のうち、たいてい一番上の形で書いてあります。

一番上は、炭素(C)水素(H)が同じようにつながっているので、全部省略して書いてあるのです。私が習った構造式の書き方は三番目なので、元素記号を省略してある書き方が何を意味しているのか全く分かりませんでした。もし、のこぎり歯状のところが炭化水素だと説明されても、炭素(C)は結合する腕が4本あるので、あとの2本はどうなっているのだろう?と思います。ネットで検索しようと思っても、どうやって検索すればよいのか分からず困りました。

二番目は、かなり親切で、炭素(C)と水素(H)は全部書いてありますが、炭素の結合する腕は書いてありません。しかし、CH2をよく見れば、H-C-Hの略なんだなと理解することができます。

三番目は、昔習った通りです。これなら一切の省略がないので分かります。

並べて書いてもらって、違いを説明してもらえれば分かるのですが、この3パターンの構造式がステアリン酸であると分かるまで私は1ヶ月くらいかかりました。

ステアリン酸

ステアリン酸

脂肪酸の構造式を見て分かること

脂肪酸の構造式に慣れてくると、脂肪酸の基本は、炭化水素鎖とカルボキシル基(-COOH)でできていると分かります。そしてカルボキシル基は電離して水素(H+)を離して-COOになるから脂肪「酸」なんだなと分かってきます。

脂肪酸は、自分で書いてみるとほとんど同じ構造です。違うのは長さです。長さが違うと融点が違うことが分かりました。感覚的に分かると思います。長い方が融点が高いのです。たとえばステアリン酸の融点は69.3℃。常温で固体です。

もう一つ、脂肪酸には炭素(C)の二重結合をもつ脂肪酸があります。

たとえば、αリノレン酸。
αリノレン酸の炭素数はステアリン酸と同じ18です。しかし、構造式は形がずいぶん違います。

αリノレン酸

αリノレン酸

でも、よく見てください。曲がりくねったαリノレン酸の両端を持ってまっすぐに伸ばしてみれば、炭素の二重結合以外、ステアリン酸と違いはありません。

二重結合の部分は、H-C=C-Hと結合しています。それ以外の場所は、H2C-CH2と結合しています。こちらはステアリン酸と同じです。

大きく違うのは融点です。αリノレン酸の融点は、-11℃。ステアリン酸と融点の差は80℃もあります。何でこんなに差があるのでしょう?

構造式なら形を見ることができる

ステアリン酸とαリノレン酸は、それぞれ炭素数18の脂肪酸です。αリノレン酸は二重結合が3ヶ所あるのでステアリン酸に比べて水素が6個少ないだけです。水素は一番軽い原子ですから、多少数が違っていても影響が大きいとは思えません。

しかし、形を比べてみてください。

ステアリン酸は直線的なのに対し、αリノレン酸は形が「いびつ」です。いま2つの脂肪酸の模型を同じ強さの針金でつくったとします。

どちらもグニャグニャに曲げてほしいといわれたら、どちらが曲げやすいですか?

もちろん、αリノレン酸の方が形がそもそもおかしいですから曲げやすいです。この形のいびつさが、構造の強さに影響して、-11℃というとても低い融点に現れているのです。

つまり、αリノレン酸は壊れやすい。

形を見れば一発で分かりますね。このことが分かってから、構造式を必ず調べてみることにしました。

マーガリンの話はどうなる?

私が冒頭に書いたマーガリンの話は、今では解決済みです。

①マーガリンは、二重結合をもつ不飽和脂肪酸をもつ油を原料とします。
②脂肪酸の二重結合部分に水素を結合させます。
③水素が結合すると、不飽和脂肪酸はステアリン酸のような飽和脂肪酸になり、融点が上がります。
④脂肪酸のすべての二重結合に水素が結合しない場合、トランス型になる場合がある。
⑤トランス脂肪酸は、形が直線的に近くなり、融点が上がるのと、それ以外に生理的な影響を持つ。

簡単に書くと上記のようになります。

マーガリンは、本来常温で液体になる二重結合をもつ不飽和脂肪酸をもつ油からつくられています。マーガリンは冷蔵庫から出したばかりでもしばらく室温で放置してもバターより扱いやすいですが、それは油の脂肪酸をコントロールして、適度な割合の脂肪酸に水素添加して飽和脂肪酸にしてあるからです。

水素添加すると一定割合のトランス脂肪酸ができます。トランスとは水素がつく位置のことを指しています。すべての二重結合に水素がつけば、それは飽和脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、形が直線的になるので、融点が上がるのと、生理的な影響を持ちます。

化学構造式を描くならフリーソフトChemSketch(ケムスケッチ)を使おう

私は、フリーソフトのChemSketch(ケムスケッチ)を使って構造式を書いています。このソフトは英語なので、最初ちょっと使い方が分かりにくいです。しかし、解説本があります。

もう10年以上も前に出た本ですが、ChemSketchで書く簡単化学レポートを買ってきました。

まだ普通に入手可能です。この本にもCDがついていますが、本が出版されたのは2004年です。本についているCDを使わずに、上のリンクから最新版をダウンロードして、インストールし、基本的な使い方を本で読むのがよい方法です。

できた構造式は、pngやjpgに変換して保存することができるので、いろいろな文書にも使うことができます。ブドウ糖など最初からテンプレートでついているものもあります。

日本語化できるともっと使いやすくなると思いますが、しばらく使うと慣れて来てあれこれできるようになると思います。私のような文系で50過ぎたオヤジが使っているのですから、若い人ならもっと早く覚えられるでしょう。

ちょっとした画を描くのにも使えます。色も塗れます。

構造式はたいてい画像になっているので、勝手に人が描いたものを持ってきて使ってはいけません。フリーなものなら話は別です。私のも勝手に使わないようにしてくださいね。

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