油を使った加熱料理には酸化防止にショウガを入れよう

油を使って炒めたり長時間煮ると油は酸化していきます。しかし、ショウガを一緒に炒めたり、炒めてから煮ると酸化が抑えられます。調合サラダ油、サフラワー油(紅花油)、ゴマ油、オリーブ油を使う場合、それぞれ酸化が抑えられましたが、ゴマ油は、もともと抗酸化力が強いことに加え、ショウガと一緒にすることで、さらに力が強くなることがわかりました。

野菜炒め

ショウガをよく使いますか?

中華料理の炒め物にショウガがよく使われます。ショウガを入れると少し辛みがついて爽やかな香りもつきます。

うどんや冷や麦、素麺を食べるときにも薬味として欠かせません。カレーを作るときにもニンニクとセットで使います。

スパイスは油の酸化を抑えるではスパイスを添加した油の酸化について書きました。この中でショウガ(ジンジャー)は、0.5%添加するとラードの酸化を抑える効果がありましたが、てんぷら油やドレッシングに添加しても効果はありませんでした。

ショウガが酸化を抑える

ところが、水煮脂質の酸化に及ぼす調製条件の影響を読んでいたら、野菜炒めをつくる時は必ずショウガを入れようと思うようになりました。

私はカレーを作るときは、必ずショウガを入れています。もし、カレーを作るときに今までショウガを入れていなかったら入れるようにするとよいですよ。おいしくなるし、油の酸化を少し防いでくれます。

4種類の油を使い煮た場合、炒めて煮た場合の油の酸化を調べる

この論文で行われた実験は、野菜炒めのように炒めた料理とカレーやシチューのように炒めた後、煮る料理について油がどのくらい酸化したか調べられました。

使われた油は、

  • 調合サラダ油
  • サフラワー油(紅花油)
  • ゴマ油
  • オリーブ油

の4種類です。

ショウガを使用する/しない

さらにこれらにショウガを使用する/しないも実験されました。使用されたショウガは、市販の生(なま)のショウガです。

それぞれの油の脂肪酸組成がでていました。

 油脂の脂肪酸組成
脂肪酸 脂肪酸組成(%)
調合サラダ油 サフラワー油 ごま油 オリーブ油
C16:0
パルミチン酸
7.3 7.3 7.0 8.0
C18:0
ステアリン酸
2.3 2.5 4.2 2.2
C18:1
オレイン酸
44.3 13.0 39.2 74.0
C18:2
リノール酸
34.0 72.0 45.8 11.5
C18:3
リノレン酸
7.3 0.4 0.3 0.1
※水煮脂質の酸化に及ぼす調製条件の影響

サフラワー油は、今はハイオレック(オレイン酸の割合が大きい)タイプのものが主流ですが、このとき(2000年)は、リノール酸の割合が大きいものが使われていました。

実験は、これらの油に対して、

  1. 煮る
  2. 炒めて煮る
  3. 煮る+ショウガ
  4. 炒めて煮る+ショウガ

という4種類の作業をして、使われた油の酸化度合いが調べられました。

炒める、煮る方法は、このように行われました。

 油脂30gを直径26cmのテフロン加工フライパンに入れ,180℃まで熱し,水24g(ショウガ30gに含まれる水分量)を添加した脱脂綿(水添加綿)を加えて,3分妙めた後,4時間水煮したものを対照として,油脂に30gのショウガを加え,対照と同様に妙め後水煮し,1時間毎に定量を分取し,エーテル抽出を行い,得られた脂質を脂質酸化度測定用試料とした.

使用した油と同重量のショウガを加えています。

炒めると油は酸化されるが、意外にもオリーブ油が酸化されやすい

それぞれの油について実験結果がどのようになったと思いますか?ほぼ予想通りでしたが、少し意外なこともありました。

サフラワー油

サフラワー油は、予想通りの結果でした。

リノール酸が多いサフラワー油は、妙め直後から酸化を示すPOVが高く、水煮をする4時間のあいだもPOVが上昇して酸化していきました。しかし、ショウガを妙めた場合、POVの変化はゆるやかになり、水煮4時間でも、その値はサフラワー油だけの場合に比べて半分以下の値となっていました。

POVについては過酸化物価(Peroxide Value: POV)とはをご覧下さい。

調合サラダ油

調合サラダ油の場合、妙め直後のPOVはサフラワー油ほど高くはありません。水煮の4時間のあいだにPOVはだんだん上昇していきました。また、ショウガを妙めた場合、かなり効果的で、水煮の4時間のあいだ、炒め終わった直後のPOVからそれほど変化していませんでした。

ゴマ油

ゴマ油はすごいです。

揚げ物をするときはコーン油6ごま油4にすると油が酸化しにくいを書きましたが、ゴマの抗酸化作用はとても強いです。

ゴマ油は、45%リノール酸を含み、一見、脂肪酸組成では酸化されやすい油であるにも関わらず、妙め直後や、水煮におけるPOV変化をみると、オリーブ油も含めた4種類の油の中で最も低い値です。

特にショウガを妙めた場合、その傾向が顕著で、水煮だけ、炒める+水煮のいずれの場合も、ほとんどPOVが変化しません。ショウガの抗酸化性の影響が出ます。油の酸化安定性はとても高いです。

また、ゴマ油に含まれているセサミンは、リノール酸がアラキドン酸に変換されるのを阻害するので、単純にリノール酸の多い油だと考えない方がよいかもしれません。

セサミンはリノール酸がアラキドン酸に変化するのを阻害する
ごま油に含まれているセサミンは、リノール酸がアラキドン酸に変化するまでの反応のうち、一番最後、ジホモ-γ-リノレン酸がアラキドン酸に変化するのを阻害します。ごま油はリノール酸が多い油ですが、リノール酸の多さを少し割り引いて考えられると思います。

オリーブ油

意外だったのはオリーブ油の結果です。

オレイン酸が主成分であるオリーブ油は、酸化しにくいのが特徴だといわれています。しかし、妙め直後のPOVは高く、オリーブ油だけでは水煮の間でもPOVの上昇がみられました。もちろん、ショウガを加えるのが効果的だったのは他の油と変わりありません。

しかし、加熱料理にはオリーブオイルがすすめられているのですが、少し納得できない内容です。結果及び考察では、このように書かれています。

80℃まで熱したオリーブ 油の酸化はかなり進んでいることがわかる.オリーブ油 は,加熱における油の発煙点が他の油に比較して早く, このことが脂質酸化に関与していることも考えられる.

酸化されにくい油であるとはいえ,脂肪酸組成の上から 脂質酸化を評価することは一様ではないと思われる.

オリーブオイルの加熱については、もう少し調べてみようと思います。

NOTE

4種類の油について、水煮と炒め+水煮の場合も、ショウガが効果的でした。ちょっとしたことですが、毎日の食事のことです。油の加熱料理には、ショウガを一緒に使うとよいと思います。

ショウガの分量の目安は、油と同重量です。中華料理ならおいしくなりそうな量です。カレーにもショウガを入れると、辛さが引き立つ感じがします。

ショウガ自体、漢方薬にも入れられるほど効果があります。ショウガの効果は辛み成分に由来するという記事を書いたことがあります。

それにしてもゴマ油+ショウガの抗酸化力はすごいです。ダントツですね。

この他の油と調理についての記事は、油と調理についてをご覧下さい。

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