亜麻仁油の酸化を抑える保存方法

亜麻仁油の保存性を高めるには、まず、冷蔵庫で保存することです。さらに、少しごま油を足すのが効果的なようです。重量比10%足すとよいようです。焙煎ごま油の方が抗酸化力は強いですが、くせのない太白ごま油を足せば風味に影響はないと思います。

亜麻仁油

亜麻仁油を冷蔵庫に長期間入れっぱなしにすると魚くさくなる

私が初めて使ったオメガ3の油は、亜麻仁油でした。少し独特の苦みがありましたが、しばらく使っていました。その後、同じオメガ3のえごま油を使った時、味にクセがなかったので、それからえごま油を使うようになりました。

α-リノレン酸が主成分の油はアシが早いです。亜麻仁油を使っているときに1回、えごま油で1回、冷蔵庫の中に入れっぱなしで何ヶ月か忘れていたことがあります。両方とも魚くさくなっていました。

亜麻仁油は酸化されやすい油で、開封したら早く使ってしまうのが基本です。しかし、少しでも酸化のスピードを遅らせることができるとよいですね。

この記事ではそれを紹介しましょう。

亜麻仁油の温度による保存性の変化

あまに油の保存性と食品への利用を読みました。この論文は、酸化されやすい亜麻仁油の保存性を上げるためにいくつかの実験をしています。

亜麻仁油の保存温度を4℃、20℃、50℃と3種類設定して、4℃と20℃では8週間、50℃では4週間保存しました。

同じ条件で酸化防止剤を添加する

さらに、酸化防止剤を添加して同じ設定温度で保存します。

酸化防止剤として、ごま油、ブチルヒドロキシトルエン、dl-α-トコフェロールが用意されました。ごま油は、焙煎した色と香りがついたものです。

酸化防止剤でごま油?って思いましたか。ごま油が酸化されにくい理由は、以前、記事を書いています。油の中で最強の抗酸化性を持ちます。

ごま油が酸化しにくい理由とは
ごま油の酸化されにくい性質は、もともとごまに含まれているリグナンの一つ、セサモリンによります。太白ゴマ油の場合は、セサミノールに変化し、焙煎ゴマ油の場合は、セサモールに変化します。ただ、セサモールは、時間の経過とともに減少するので、セサモールだけではないと考えられています。焙煎ゴマ油の方が酸化されにくいからです。

論文中、ブチルヒドロキシトルエンとありますが、ジブチルヒドロキシトルエンではないかと思います。文中BHTとも言い換えられているので、ジブチルヒドロキシトルエンとして話を進めます。

酸化防止剤のジブチルヒドロキシトルエンはBHTとも書かれます。1954年にアメリカ食品医薬品局 (FDA) によって食品添加物・保存料としての使用が認可されたとありますが、発癌性の疑いなどから、現在では食品に添加されることはほとんどなくなったようです。ただ、化粧品やボディーシャンプーには一部使われている商品があるようです。

α-トコフェロールはビタミンEのことです。ビタミンEにはいくつかタイプがありますが、α-トコフェロールは体内で抗酸化力を発揮するビタミンEです。dl-α-トコフェロールは人工的に合成されたものです。

亜麻仁油は4℃以下で保存する

亜麻仁油の保存温度を4℃、20℃、50℃と3種類設定してありましたが、その酸化の度合いは、温度が高いほど大きくなります。これは、酸化防止剤を添加しない場合、添加した場合であっても同様でした。4℃保存の場合が、8週経過後も最も酸化の度合いが低く保たれました。

冷蔵庫で保存する

この温度は冷蔵庫の温度です。日立のサイトにあった冷蔵庫の庫内の温度はどのくらいですか?をご覧下さい。

冷蔵庫に入れておけば、8週間は大丈夫と考えてよいみたいです。ただし、この実験は容器を密閉してありました。通常のビンなら毎日のように開閉され、中身が減ると空気が増えていきます。保存条件としてはこの実験より厳しいと思います。

20℃保存ではごま油が酸化を抑える

また、酸化防止剤を添加した場合について、ごま油については、重量比2%、5%、10%の場合が実験されました。

BHTとdl-α-トコフェロールについては、それぞれ重量比0.01%添加されました。

4℃保存の場合はあまに油のみでもあまり酸化は進みませんでしたが、ごま油を添加することによって、酸化はあまに油だけの場合に比較してさらにわずかに抑制されました。

20℃保存の場合も、ごま油の添加が酸化を抑え、8週間後の結果も酸化が抑えられていました。また、ごま油の添加濃度が高いほどその抗酸化効果は高い結果が得られました。

一方、ごま油以外の2種類の酸化防止剤を添加した場合には、酸化防止効果はみられませんでした。

50℃保存の場合は、ごま油や酸化防止剤の添加効果はみられませんでした。

4℃、あるいは20℃での保存においては、ごま油の添加による抗酸化効果が得られましたが、50℃保存では、今回用いた濃度のごま油や抗酸化剤の添加では、あまに油の酸化を抑えることができませんでした。

これらの結果から、あまに油は4℃程度に保つ低温保存では8週問ほとんど変化せず、20℃に保存する場合も、 ごま油を2~10%添加すると8週間はその変化をかなり抑えることが可能であることが分かりました。

亜麻仁油でマヨネーズをつくる

この論文が書かれたのは、2001年です。その頃は、今ほど亜麻仁油はポピュラーではなく、多分、私も丸元淑生さんの本で亜麻仁油のことを読んだかもしれませんが、全く興味がなく記憶にも残っていません。

この論文の著者は、亜麻仁油が酸化されやすくにおいにややクセがあるので、酸化させずにおいしく食べるためにマヨネーズにしようと考えられたようです。

今は亜麻仁油を直接野菜にかける方が多いと思います。少し時代が経つと受け入れられ方がずいぶん違いますね。

著者は、亜麻仁油にゴマ油を添加して保存性を高め、それを低温で保存するマヨネーズを作り、そのマヨネーズの保存性を調べました。

ゴマ油の添加率は、重量比2%と5%で調製されました。もちろん、亜麻仁油だけでもつくられました。それぞれは4℃で8週間保存されました。

その結果は、油の保存実験と同様、亜麻仁油の場合だけでもそれほど酸化されず、ゴマ油を添加した場合は、さらに酸化が抑制され、ゴマ油2%添加と5%添加では、5%添加の方が、より酸化されない結果になりました。

NOTE

亜麻仁油の保存性を高めるには、まず、冷蔵庫で保存すること。論文では8週間は大丈夫と書かれていましたが、使いかけでビンの中に空間があいていると影響はあると思っていた方がよいです。

さらに、少しごま油を足すのが効果的なようです。論文では重量比10%足していました。

ごま油には焙煎したものと、太白ごま油のような焙煎していないクセのないタイプもあります。もちろん、焙煎したごま油の方が抗酸化力が強いですが、太白ごま油を入れると、抗酸化力は多少落ちるものの、ほとんどわからないか、かえって亜麻仁油の苦みが目立たなくなるかもしれません。

この他のオメガ3の酸化についての記事は、オメガ3の酸化についてをお読み下さい。

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