カイロミクロンは中性脂肪(TG)を配る

前記事、食べたコレステロールはそのまま体の中に入ってくるぞでは、コレステロールが消化酵素で分解されることなく、胆汁酸がつくるミセルの中に中性脂肪と一緒に入り込み、小腸粘膜細胞に吸収されるところまで説明しました。

食べたコレステロールはそのまま体の中に入ってくるぞ
食べ物に含まれるコレステロールは、小腸からそのまま体の中に入ってきます。ご存知でしたか?運動すれば、脂肪やコレステロールなど余分なものが燃え...

その続きです。

この記事では、小腸粘膜細胞に入ったコレステロールと中性脂肪が、ミセルからリボタンパクに乗り換えて、カイロミクロンとなり、そこから中性脂肪を各組織に配り、最後に肝臓に吸収されるまでのことを書きます。

ミセルは小腸粘膜細胞内で分解される

小腸粘膜細胞にミセルが入ると、ミセルは一度分解されます。モノグリセリドと脂肪酸はトリグリセリド(中性脂肪)に戻り、コレステロールと脂肪酸が結合し、コレステロールエステルができます。

脂肪酸の変化

コレステロールエステル

コレステロールエステルの一例を図で書きました。

コレステロールと炭素数18の飽和脂肪酸、ステアリン酸のエステルです。青い腺で囲った赤字部分がエステル結合しています。

コレステロールエステル

コレステロールエステル

中性脂肪は普通の油と同じです。水と混ざらない。

さらにコレステロールエステルは、脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)とコレステロールの水酸基(-OH)がエステル結合するので、これも水と混ざらないのです。

リポタンパクができる

このままでは移動できないので、水溶性のリポタンパクの構造ができて、未完成のカイロミクロンができます。トリグリセリドやコレステロールエステルはその中に入って移動するようになります。

リポタンパクは下図のような構造になっています。

リポタンパク質

リポタンパク質

トリグリセリドとコレステロールエステルを芯にして、その表面を一層のリン脂質とコレステロールからなる被膜でおおい、そこに水と油の両方に親和性のあるタンパク質(アポタンパク)がついた形を基本とします。

リポタンパクの構造にあるアポタンパクって何でしょう?

アポタンパクとは何か?

細かいことまで知る必要がなければアポタンパクは、「そういうものがあるのか」と流してしまえばよいのですが、コレステロールの受け渡しを知るためには、アポタンパクについても少し知っておいた方がよいと思いました。

アポタンパクは、細胞がリポタンパクを取り込む時の、細胞表面のレセプター(受容体)への標的となっています。細胞に取り込んでくれ!と旗を立てているようなものです。

また、アポタンパクは、リポタンパクを代謝する時に使われる酵素のスイッチを押す役割もしています。

この先、カイロミクロンの説明から読んでいくと、少しずつ分かってくると思います。

さて、未完成のカイロミクロンの話に戻りましょう。

小腸粘膜細胞から、未完成のカイロミクロンは小腸粘膜のリンパ管へ入ります。リポタンパクはサイズが大きいので、毛細血管でなくリンパ管を流れて行きます。そして、リンパ管の本流である胸管を経て、左鎖骨下静脈から血管の中に入ります。

リンパ管から血管の中に入ったリポタンパクは、カイロミクロンと呼ばれます。

確認のために書いておきますが、リポタンパクの中にあるトリグリセリド(中性脂肪)やコレステロール、コレステロールエステルは、食べ物由来のものです。

カイロミクロン(Chylomicron)

カイロミクロンの最も重要な役割は、各組織(脂肪細胞、心筋、骨格筋など)へトリグリセリド(中性脂肪)を運ぶことにあります。

図は、ハーパー生化学原書23版と星薬科大学のサイトの中にあった脂質異常症をもとに描きました。

カイロミクロンの代謝

たとえば、脂肪細胞を例にとって、説明しましょう。先ほどの脂質異常症によります。

  • リンパ管から血管の中に入った未完成のカイロミクロンは、HDL(いわゆる善玉コレステロール)からApo EとApo C-Ⅱ(図ではC-2と表記)というアポタンパクを受け取り、カイロミクロンとなります。

HDLはまだ説明しませんが、カイロミクロンに関係があるんだなと思っていてください。

  • カイロミクロンのApo C-IIによって、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL: lipoprotein lipase)が活性化され、トリグリセリド(中性脂肪)は、脂肪酸とグリセリンへ分解されます。
  • 脂肪酸は遊離脂肪酸として脂肪細胞内でグリセリンと再結合し、トリグリセリド(中性脂肪)となって貯蔵されます。

トリグリセリドがそのまま脂肪組織に移動するわけではないのです。

  • 脂肪細胞へ取り込まれない脂肪酸はアルブミンと結合し、血液中を循環した後に各組織へ運ばれる。

脂肪酸は、細胞膜のリン脂質などの材料になるほか、脂肪酸はミトコンドリアで短く切られてエネルギー源にもなります。脂肪は脂肪細胞に蓄えられますが、必要な時に血液中に放出されます。その時に脂肪酸を運搬するのがアルブミンです。

血清アルブミンを読むと、構造と働きがよく分かると思います。

  • また、残ったグリセリンは肝臓へ運ばれます。
  • カイロミクロン中の90%以上のトリセリド(中性脂肪)は分解されます。
  • Apo C-IIとApo AはHDLへ戻り、残ったものは、カイロミクロンレムナントとなります。レムナントとは、残渣を意味します。トリグリセリドが脂肪細胞へ輸送された残りかすという意味です。
  • カイロミクロンレムナントに残ったApo Eと肝細胞上のリポタンパク質受容体が結合し、カイロミクロンレムナントが肝細胞に取り込まれます。

まとめ

食べ物から入って来た脂質(油とコレステロール)は、小腸粘膜細胞からリンパを通り、左鎖骨下静脈から血管の中に入ってから全身を回ります。

トリグリセリド(中性脂肪)は、カイロミクロン中にある90%以上が分解されます。食べ物の油の大部分が分解されて配られるのです。

しかし、コレステロールについては、カイロミクロンでは、組織に配られるわけではなくそのまま肝臓に運ばれていくようです。

コレステロールも細胞膜の材料になっているので、すぐに配られるのかと思ったのですが、どうもそうではないようです。

昔、勤めていた会社の同僚が、毎日昼に牛丼ばかり食べていたら、やせているのに血液検査でコレステロールが引っかかっていたことを思い出しました。

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