脂肪もブドウ糖も燃焼させるときは途中から同じ物質になる

脂肪もブドウ糖もエネルギー源として使われます。運動するときはブドウ糖が優先して使われますが、もちろん脂肪も使われています。

体の中にためておける糖はグリコーゲンとして貯蔵できますが、だいたい300グラム程度。それに対して脂肪は、体重計に乗ったときに体脂肪率を測れば体重の20%程度ありますから、60キロの人ならだいたい10キロ程度は体についています。

このように脂肪は体の中にたくさん貯蔵されているので、燃料として長持ちしますが、実際に燃やすときにもブドウ糖よりも脂肪酸の方が長持ちします。ブドウ糖も脂肪も「燃やす」といういい方をしますが、結果として実際に火をつけて燃やしたのと同じ反応になります。どちらも、酸素と結合して、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になります。

もちろん、体の中で火をつけるわけではありません。脂肪もブドウ糖も細胞の中のミトコンドリアに入って酸化され、最終的に、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になります。その時の反応はTCA回路で行われます。

ところで、ブドウ糖と脂肪はTCA回路に入る前まで、別々なルートでやってきます。そしてTCA回路の入口でアセチルCoAになります。

この記事では、ブドウ糖からアセチルCoAまで、脂肪からアセチルCoAまでのルートを説明します。

ブドウ糖の分解

ブドウ糖は、ピルビン酸に分解されますが、この過程を解糖系といいます。

ブドウ糖の分子式はC6H12O6です。炭素数は6です。このサイトでは脂肪について書いているので、ブドウ糖の構造式は書きません。一方、ピルビン酸の分子式はC3H4O3と炭素数が半分の3個になります。ピルビン酸の構造式はこのようになります。

ピルビン酸

ピルビン酸

炭素数6が炭素数3になるので、ブドウ糖1分子からピルビン酸2分子が作られることになります。

ピルビン酸はミトコンドリアの中に入り、アセチルCoAとなります。ピルビン酸と補酵素A(CoA)の反応は、下図の通りです。ピルビン酸はカルボキシル基(-COOH)が、水素(H)を離して、(-COO⁻)になっています。青い点線で囲まれた部分が-COOですが、これが外れます。これを酸化的脱炭酸反応といいます。

補酵素A(CoA)については、赤点線内の複雑な構造式は「こういうものか」と無視して結構です。たいていのサイトでは、結合するときの一番端に来るS(硫黄)を出して、-S-CoAなどと簡易的に書かれています。

私がなぜわざわざCoAの構造式を書くのかというと、感覚的なことです。

こんな大きな分子である補酵素A(CoA)が連れて行くのは、アセチル基(CH3CO-)という炭素が2個に水素3個酸素1個からできた、とても小さいものなのです。

ちなみに補酵素Aはアセチル基の運搬役みたいなもので、補酵素A自体は、何の変化もしません。化学に詳しい人にとっては常識なことなのかもしれませんが、私にとっては初めて知るようなことなので、補酵素Aを省略せずに書いています。補酵素Aからは水素(H)が離れます。

ピルビン酸とCoA

ピルビン酸とCoA

これが結合して、アセチルCoAになります。ピルビン酸からアセチルCoAになるとき、上図青点線部分のCOOが消えていますが、これはCO2(二酸化炭素)になって離れます。酸化的脱炭酸反応といわれます。

アセチルCoA

アセチルCoA

アセチル基は、酢酸からヒドロキシ基(-OH)を取り除いたもの。構造式は CH3CO− と表されます。炭素数は2です。炭素数は、一つ減らして2個。

ブドウ糖からの炭素数を数えると、ブドウ糖1分子からピルビン酸2分子、そしてピルビン酸2分子からアセチルCoAが2分子できます。

これがTCA回路に入ります。

脂肪の分解

脂肪の分解は、酵素リパーゼによってモノグリセリドと脂肪酸に分けられます。この脂肪酸は、血液中に大量にあるタンパク質のアルブミンに結合して、血流に乗って体中を巡ることになります。(この辺が分からない方は、油の構造が分かると血液検査の中性脂肪がわかるよをご参照ください)

主として肝臓にそれらの脂肪酸は取り込まれて代謝を受けることになります。

脂肪酸が分解されてアセチルCoAになる過程は、次のようになります。

アルブミンによって運ばれてきた脂肪酸は、肝臓細胞の細胞質ゾルの中に入ってきます。細胞質ゾルとは、細胞内の部分の呼称で、細胞質からミトコンドリアなど細胞内小器官を除いた部分のことです。

脂肪酸は、酵素の働きによってコエンザイムAを脂肪酸のカルボキシル基と反応させて、アシルCoAと呼ばれる物質になります。

実際に脂肪酸を使って図示します。

普段使っている油に入っている脂肪酸はこんなのだよで脂肪酸をいくつか図示して紹介しました。例えば、パルミチン酸(C16:0 炭素数16:炭素の二重結合0)はこのような構造式でした。

パルミチン酸

パルミチン酸

それが、補酵素A(CoA)と結合します。パルミチン酸の向きを左右変えました。

パルミチン酸と補酵素A

パルミチン酸と補酵素A

結合したものがアシルCoAとなります。

アシルCoA

アシルCoA

アシルというのは、脂肪酸のようにカルボキシル基(-COOH)をもつものからカルボキシル基のOHを除いた残りの部分のことをいいます。

アシルCoAは、ミトコンドリア内に入りますが、まだまだ長い炭化水素鎖を持っています。

ここからアシルCoAのβ炭素から水素がとれ酸素がつく、「酸化」を行っているのでβ酸化と呼ばれる反応によって、アセチルCoAが切り離されます。ちょうど下図の青い点線の部分から補酵素Aと一緒に切り離されます。青い点線の中は、CH2COですが、その隣の炭素(β位の炭素)から水素をもらって、CH3CO-というアセチル基になります。

のこされたβ位の炭素には酸素がつきます。

β酸化される

β酸化される

切り離されたアセチルCoAは下図のようになります。

アセチルCoA

アセチルCoA

二つの炭素を失って短くなったアシルCoAは、再び同じ過程を繰り返します。短くなったアシルCoAには、また補酵素Aがつきます。

短くなったパルミチン酸

短くなったパルミチン酸

アセチルCoAを切り離しながら、アシルCoAは炭素二つずつ短くなり、またアセチルCoAを切り離します。

脂肪酸は、通常偶数個の炭素からできているので、β酸化を繰り返すことで、最後に炭素数4個になったアシルCoAから2個のアセチルCoAができて、反応が終了します。

パルミチン酸は炭素数が16ですから、炭素を2個ずつ外してアセチルCoAにしてもパルミチン酸1分子から8分子のアセチルCoAができます。ブドウ糖1分子からはアセチルCoAは2分子しかできませんから、脂肪酸は燃料としてはなかなか持ちがよいのです。

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