中鎖脂肪酸とは

最近、ココナツオイルが人気らしく、輸入食材店では何種類も並んでいます。スーパーでもちらほら見かけるようになりました。そのためか、中鎖脂肪酸ということばをよく聞きます。

酢酸は短鎖脂肪酸。脂肪酸だったのですかでは短鎖脂肪酸について書きました。クサイにおいがあるのが特徴です。

中鎖脂肪酸は、短鎖脂肪酸より少し長く、炭素数が8~10個の脂肪酸です。どんな種類があって、どんな特徴があるのでしょう?

中鎖脂肪酸は2つ

中鎖脂肪酸に分類されているのは、カプリル酸、カプリン酸の2つです。2つとも飽和脂肪酸です。

カプリル酸

カプリル酸は、炭素数8の直鎖状脂肪酸で分子式はC8H16O2。融点は16.7℃。ココナッツや母乳に含まれる。不快な腐敗臭を持つ油状液体で、水にはほとんど溶けない。抗菌活性を持ち、カンジダ症の治療に使用されます。

カプリル酸

カプリル酸

カプリン酸

カプリン酸は、炭素数10の直鎖状脂肪酸で分子式はC10H20O2。融点は31℃。ココナッツオイルやバターに含まれます。

植物ではドクダミ、ナツミカンなどの葉の精油、クスノキ、アブラヤシなどの種子油に含まれます。何となくこちらも強いにおいと関係がありそうですね。

カプリン酸

カプリン酸

時間をかけてネットを散歩しましたが、それぞれの脂肪酸に固有な特徴らしきものは見つかりませんでした。

中鎖脂肪酸の特徴

中鎖脂肪酸は、一般には、油脂(トリグリセリドTG)の形で母乳、牛乳、乳製品の脂肪分に3~5%、ヤシ油、パーム核油などに7~14%含まれています。私が普段使っている一般的な穀物由来の食用油にはほとんど含まれていません。

通常、肉の脂肪や食用油は、消化の過程で脂肪酸とモノグリセリドに分解され、コレステロールと胆汁と一緒に丸く固まり、「ミセル」になって、小腸の中に入ります。血液の中で、脂肪酸とモノグリセリドはまた脂肪に戻ります。コレステロールも脂肪も水に溶けませんから、血液中をうまく流れて行くには、特別なリポタンパクという輸送手段が必要になります。詳しくは脂肪とコレステロールの関係についてを読んでみてください。

中鎖脂肪酸は小腸の中に入った後、リポタンパクの一つであるカイロミクロンを作らず、遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝されます。速やかにエネルギー源になるということは、体にたまりにくいということです。ココナッツオイルに人気が出た理由の一つはこれですね。

この速やかにエネルギーに変わる特徴を生かして、1960年代後半からは経腸栄養剤、治療食品などに用いられるようになりました。病後の方には、中鎖脂肪酸は消化に負担がかからずエネルギー源にできるのです。ためしに「MCT」と入れてネット検索すると、介護、健康食などがヒットしてきます。MCTとは、中鎖脂肪酸油(Medium Chain Triglyceride)の省略形です。

医療用途で販売されている中鎖脂肪酸を含む油(MCT)は無味無臭であり、融点が低く、酸化安定性に優れ、粘度が低い特徴を持つ安全な食品素材であるとされています。

アルツハイマー病と中鎖脂肪酸

もう一つ、中鎖脂肪酸は若年性アルツハイマー病の患者に中鎖脂肪酸(ココナッツオイル)を摂取させると、記憶力低下が抑制されるなどの変化があったと報告されています。(出典)これはネットで検索すると多数関連記事が出て来ます。実験は2008年に行われたので、最近の出来事です。

アルツハイマー病の症状は、認知障害(記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、空間認知機能や問題解決能力の障害など)が進行していくことです。重症になると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになります。

通常、脳はブドウ糖をエネルギーとしています。しかし、アルツハイマー病では、脳が糖を利用できなくなり、エネルギー不足から機能不全になってしまうことが分かっています。

また、もう一つ、脳は通常時はブドウ糖だけをエネルギー源としているのですが、糖分がなくなると脂肪酸からつくられるケトン体を利用することが明らかになってきました。

アルツハイマー病が、脳が糖を利用できない状態によって起こるとしたら、別なエネルギー源であるケトン体を利用することで、機能回復する可能性があると考えられています。

中鎖脂肪酸は、炭素の数が少ないだけで、他の飽和脂肪酸と何も構造は変わりません。長鎖脂肪酸からもケトンは作られます。しかし、炭化水素の鎖が短い分、長鎖脂肪酸に比べて短時間でケトン体を作りだすことができます。

中鎖脂肪酸の消化吸収の速度は長鎖脂肪酸の約4倍といわれています。医療用途で販売されているMCTはもともと病後の回復のためのエネルギー源として使われていたのですが、アルツハイマー病にも役に立つらしいことが分かってきたというのが新しい話です。

脂肪酸からケトン体への変化については、記事を改めて調べてみます。また、ココナッツオイルの脂肪酸組成についても別な記事で調べてみようと思います。

参考文献:「人のアブラはなぜ嫌われるか-脂質「コレステロール・中性脂肪など」の正しい科学-」
近藤和雄著 技術評論社

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