植物油に入っている脂肪酸7つの構造式

毎日食事をつくるために使われるオリーブ油やごま油、亜麻仁油、えごま油などに含まれる脂肪酸の種類はそれほど多くありません。7個紹介します。ただし、グリセリンに結合する時のルールがあります。2位には不飽和脂肪酸が結合します。

サラダオイル

普段使っている食用油に含まれる脂肪酸の種類はそれほど多くない

いままでいろいろな油を紹介してきましたが、油を紹介するということは、油の性質を決める脂肪酸を紹介するようなものです。この記事では、これまで出て来た脂肪酸を炭素数の少ないものから順番に並べてみようと思います。食用油をずっとやっていますから、対象は植物油です。魚油に入っているEPADHAについては、リンク先を見てください。構造式も載せてあります。

なんと植物油を理解するために必要な脂肪酸は7個しかありません。もちろん他にも脂肪酸があるのですが、脂肪酸組成の割合ではほとんど0に近いので無視してもよいくらいです。

油はグリセリンと3本の脂肪酸でできています。

この記事を下まで読めば、油を理解するために必要な化学の知識が案外多くないことが分かると思います。

また、天然の油の脂肪酸配置は、ランダムなものではありません。飽和脂肪酸は、植物油ではほぼ例外なくグリセリンの1、3位に結合し、動物脂では、ラードのパルミチン酸のように2位に結合するものがあります。それも、後ろの方で図を作ってみましょう。

それぞれについているCの次の数字は、炭素数を表し、その次の数字は二重結合の数を表しています。

飽和脂肪酸

ラウリン酸C12:0

ラウリン酸。炭素数は12の脂肪酸。分子式はC12H24O2。示性式は CH3(CH2)10COOH。融点は44℃~46℃。抗菌活性を持つと考えられている。石けんやシャンプーに多く用いられています。

ラウリン酸

ラウリン酸

ミリスチン酸C14:0

ミリスチン酸は、分子式 C14H28O2、示性式 CH3(CH2)12COOH。融点は54℃。ナトリウム塩が石けんに使われる。ラウリン酸より水溶性が劣る弱点はあるものの、発泡力や泡の持続性がよく、肌への刺激も少ないとされています。

ミリスチン酸

ミリスチン酸

パルミチン酸C16:0

パルミチン酸は、分子式 C16H32O2、示性式 CH3(CH2)14COOH 。融点は62.9℃。ラード(豚脂)やヘット(牛脂)などに多く含まれます。パルミチン酸は、ステアリン酸と同じようにたいていの植物油に入っています。特に多いのは、パーム油です。

パルチミン酸

パルミチン酸

ステアリン酸C18:0

ステアリン酸は、動物の脂・植物の油で一番たくさん含まれる飽和脂肪酸です。分子式 C18H36O2。示性式 CH3(CH2)16COOH。融点は69.9℃。せっけん・ろうそくなどの原料になります。

ステアリン酸

ステアリン酸

ここまでが飽和脂肪酸でここから下は不飽和脂肪酸です。

不飽和脂肪酸

オレイン酸C18:1

オレイン酸は、オリーブオイルの主成分の脂肪酸です。分子式 C18H34O2、示性式 CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH で、COOHの反対側のメチル基(CH3)から9番目の炭素に二重結合がある一価の不飽和脂肪酸である。オレイン酸はシス型。同じ方向に折れ曲がっています。融点16.3℃。

オレイン酸

オレイン酸

リノール酸C18:2

リノール酸は炭素間の二重結合を2つもつ不飽和脂肪酸で、食物から摂る必要がある必須脂肪酸。炭素数18で、COOHの反対側のメチル基(CH3)から6番目と9番目の炭素に二重結合があります。分子式 C18H32O2、示性式 CH3(CH2)4(CH=CHCH2)2(CH2)6COOH。融点は-5℃。最近あまり評判がよくないです。

リノール酸

リノール酸

α-リノレン酸C18:3

α-リノレン酸は、炭素間の二重結合を3つもつ不飽和脂肪酸で、リノール酸と同じく食物から摂る必要がある必須脂肪酸です。炭素数18で、COOHの反対側のメチル基(CH3)から3番目と6番目9番目の炭素に二重結合があります。分子式 C18H30O2、示性式 CH3CH2(CH=CHCH2)3(CH2)6COOH。融点-11℃。

αリノレン酸

αリノレン酸

炭素の数が小さい飽和脂肪酸から並べて書いてきました。脂肪酸は、炭化水素の鎖と端についているカルボキシル基(-COOH)からできています。というか、それだけのことです。それが短いものから長いものまで。飽和脂肪酸はとても分かりやすいです。

しかし、形がいびつで複雑そうに見える不飽和脂肪酸だって、似たようなものです。炭素同士の二重結合の所から折れ曲がっているだけです。飽和脂肪酸と同じように炭化水素の鎖と端についているカルボキシル基(-COOH)からできています。

ためしに油の構造式を描いてみよう

さて、脂肪酸とグリセリンから脂肪ができるという話をずいぶん書いてきましたが、実際に図で書いたことはありませんでした。ChemSketchを使うことにだいぶ慣れて来たので、やってみましょう。ChemSketchはフリーソフトですが、なかなか高機能です。ドローイングソフトを使って構造式を描くより楽です。詳しくは構造式を描くならフリーソフトChemSketch(ケムスケッチ)を使おうをご覧下さい。

グリセリンに3つの脂肪酸が結合します。結合したものをトリグリセリド(TG 油のこと)といいます。血液検査で中性脂肪というのは血液の中にあるトリグリセリド(TG)を測定しています。

グリセリンと3つの脂肪酸の間に赤い点線の囲いがありますが、その部分をご覧下さい。-OHとHが結合して、H2O(水)になって離れてそれを抜かした部分が結合します。

グリセリンから離れていくOHは3つありますが、その場所を上から順に、1位、2位、3位と呼びます。2位に不飽和脂肪酸、この場合はオレイン酸が来るのは「決まり」だそうです。一方、パルミチン酸とステアリン酸といった飽和脂肪酸が1位と3位につくのも「決まり」だそうです。

例外はラード(豚脂)で、2位にパルミチン酸が結合するのが全体の70%を超えます。

この脂肪酸の組合わせは、ココアバターの中に存在するトリグリセリド(TG)では、最も多い形で全体の40%くらいを占めています。次に多いのは、1位ステアリン酸/2位オレイン酸/3位ステアリン酸が結合している形で、全体の30%程度あります。

ココアバターの組成

グリセリンと3つの脂肪酸が結合すると下のような形になります。

ココアバターの組成

線の太さが微妙に合っていませんが、なんとかできました。ココアバターはこれ以外にもトリグリセリド(TG)の形で8種類あります。その他にグリセリンと結合していない遊離脂肪酸もあるでしょう。それらをまとめてココアバターができていいます。

NOTE

脂肪(油)の構造式はあります。しかし、脂肪酸それぞれの構造式のように一つに決められません。脂肪は、グリセリンに3本の脂肪酸が結合してできますが、脂肪酸にいくつも種類があるからです。

グリセリンに結合する脂肪酸は、特に2位(真ん中)には基本的に不飽和脂肪酸が結合すると覚えておくとよいです。1位と3位は飽和脂肪酸になる。

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