石油をつくる藻類ボトリオコッカスとオーランチオキトリウム

以前、魚の脂肪酸EPAやDHAは藻や微生物由来ですという記事を書きました。

魚の脂肪に、多価不飽和脂肪酸のEPAやDHAが豊富なのは、オメガ3のαリノレン酸を生産する藻や微生物を食べているからだという話でした。それで、少し藻について調べようと思いました。

ネットを散歩したら、すぐに藻と油の話は出て来ましたが、油は油でも石油をつくる話でした。しかも記事の数がたくさんあります。しばらく読んでいたらとても面白いので、この記事では、ボトリオコッカス(Botryococcus braunii)とオーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)について書いておきます。

ボトリオコッカスについて

緑藻類のボトリオコッカス ブラウニー(Botryococcus braunii)が石油成分を含んでいることはすでに 1800 年代にドイツで報告されていました。(出典)緑藻類とは、色素体が多量の葉緑素をもち、緑色となる藻類のことです。

ずっとボトリオコッカス ブラウニーが新たな石油資源として研究が本格化しなかったのは、時々オイルショックはあったものの、石油が枯渇せず、たやすく得られるものだったからです。

ボトリオコッカスは、湖沼に生息しています。もちろん、日本の湖沼にも生息しています。そして、多数の細胞が集まり、群体をつくっています。群体の内側には、古い細胞壁と半透明の「細胞外マトリックス」と呼ばれるものが蓄積しています。

ボトリオコッカスは、炭化水素の油を産生することで知られています。ボトリオコッカスが石油資源といわれるのは、石油の主成分が炭化水素だからです。炭化水素とは、炭素(C)と水素(H)だけでできた化合物で、一番単純なものはメタン(CH4)です。メタンは、燃やすと酸素(O2)2分子と化合して、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になります。燃やしても実にクリーンなこと。

CH4+2O2→CO2+2H2O

また、この場合の「油」とは、今まで書いてきた植物油の定義だった、「グリセリンと脂肪酸のエステル」(油の構造が分かると血液検査の中性脂肪がわかるよをご参照ください)ではなく、水と相分離する疎水性(混ざらない)の物質のことだと思ってください。

オイルは細胞外マトリックスに豊富に含有され、また細胞内に油滴の形で存在しています。代表的な炭化水素の1つに、ボトリオコッセン(botryococcene; C34H58)があります。炭素が34個もあるでかい構造ですね。

単細胞生物は、2倍、2倍、2倍・・・と増殖するので、細胞の個数が増えるスピードがとても速いです。よく知られている大腸菌は、2、30分毎に2倍になります。とても好きな福岡伸一先生のサイトスピードが大腸菌のすべてという記事がありました。

ところが、このボトリオコッカスは2倍になる時間が3日以上と、増殖が遅いそうです。その代わりに、炭化水素含有量は細胞乾燥重量の6割以上にも達します。(出典画像もあります)

バイオマス

最近は、地下資源の利用による空気中の二酸化炭素(CO2)増加を抑制するために、カーボンニュートラルという考えが支持されるようになっています。

たとえば、地下資源である石油を燃やすと、空気中の二酸化炭素(CO2)が増加します。一方、森林で間引きされた間伐材を燃やせば、もちろん二酸化炭素(CO2)は出ますが、これはもともと太陽光によって空気中の二酸化炭素が同化されて木になったものなので、炭素(C)の全体量は変わらないとする考え方です。

バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表していて、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」のことをいいます。上の例では、石油はバイオマスではなく、間伐材はバイオマスです。

そのバイオマスという考え方の中で、地下資源を使わない石油として最近注目されてきたのがボトリオコッカスのような藻類なのです。

オーランチオキトリウムについて

一方、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)は、ラビリンチュラ類に属する従属栄養藻類で、有機物によって増殖するのが特徴です。

ラビリンチュラ類は、細胞中にω6(オメガ6)ドコサペンタエン酸やω3(オメガ3)のドコサヘキサエン酸(DHA)などの多価不飽和脂肪酸を含むことが以前より知られていました。多価不飽和脂肪酸とは、炭素の2重結合を2つ以上もつ脂肪酸のことです。

従属栄養というのは、光合成をせず、有機物をエサとして吸収して増殖するという意味です。

光合成を必要としないので、光がなくても炭化水素オイルを生産します。

一般に、オーランチオキトリウムは増殖が速く、2倍になる時間が2時間を切る例もあるそうです。また、乾燥重量あたりの総脂質含量が7割を超す例もあります。

2010年、筑波大学教授の渡邉信らのグループよって、炭化水素(スクアレン)を産生し細胞内に溜め込む株が発見されました。スクアレンは別名スクワレン。分子式は、C30H50です。スクワレンというと深海サメの油で化粧品の材料になっているような気がしましたが、それはスクアランで、スクアレンにある6個の炭素の2重結合に水素添加したものでした。(出典

もちろん、筑波大学の渡邉研究室のサイトにも詳しい説明があります。

なるほど、日本で発見されたので記事が多いのです。日経新聞の記事にもなっていました。効率よく「石油」作る藻、筑波大発見(2010/12/15付)

渡邉先生の研究室では、藻類バイオマスエネルギーの実用化のために、下水処理プロセに藻類バイオマス生産を組み込んで研究が進められています。オーランチオキトリウムは有機物を取り込むので、有機物がたくさんある下水でまずオーランチオキトリウムを増殖させ、処理した下水で今度はボトリオコッカスを増殖させるという仕組みだそうです。

原料のコストはかからないし、石油は生産できるし、環境浄化にも役に立つとても素晴らしい研究だと思います。とても面白いと思いました。

新しいエネルギー藻類バイオマス

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