油の性質を決める脂肪酸について構造式を書きながら比べてみた

この記事では、油の性質を決める脂肪酸、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の種類と性質について、それぞれいくつか構造式を書いて眺めながら考えてみることにしましょう。

オリーブオイル

油の構造は決まっている

油の構造が分かると血液検査の中性脂肪がわかるよ」で書きましたが、油の構造は、グリセリンと脂肪酸がエステル反応したもので、構造式で書くと、こんな風になります。

上の図の「-OCOR」で表されているのが、油脂の中の脂肪酸の部分です。エステルの形になっていますので、正確に脂肪酸とはいえませんが、それは後で説明します。

ついでに図も描いたので、載せておきましょう。これも載せておくと分かりやすいでしょう。

脂肪酸

私たちが普段料理に使う油は、上図のようにグリセリンに3つの脂肪酸がエステル反応した、中性脂肪、トリグリセリド(TG)のことを考えればよいです。

中性脂肪は動物の体内脂肪組織に蓄えられる脂肪や、食品中の油脂、植物油(種子)などを構成する脂質の8から9割を占めるが、その中ではトリアシルグリセロールが圧倒的に多く、特に動物の脂肪組織では95%を超える。(出典

料理に使う油は、サラダ油、ゴマ油、紅花油、オリーブオイル、えごま油、亜麻仁油・・・などたくさんあります。何を原料にするかによって原料由来のものが一部入って来ますが、食用油を分析すれば、成分のほとんどが油です。

油の構造は、上図のようにグリセリンと3本の脂肪酸からできていると考えればよいです。この中でいろいろな種類があるのは、脂肪酸で、脂肪酸が油の性質を決めています。

脂肪酸が、油の性質を決める

脂肪と脂肪酸、ことばは似ていますが、違いを確認しておきます。脂肪をつくる材料の一つが脂肪酸です。脂肪と脂肪酸は別なものなので、間違わないようにしましょう。脂肪酸の話題が多くなると、油と区別ができなくなる人がいます。

では、脂肪酸について説明しましょう。

脂肪酸は、炭化水素の端にカルボキシル基(-COOH)がついたものです。すごく簡単です。もし、あなたが少し詳しく油のことを知りたいと思ったり、仕事で油の知識が必要になったら、化学式は無視しない方が早く理解できるようになります。

なぜかというと、脂肪酸の性質は、炭素(C)数、つまり脂肪酸の長さと、炭素(C)の二重結合の数で性質が決まるからです。

脂肪酸には、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸があります。

それでは分かりやすい飽和脂肪酸から説明していきましょう。

飽和脂肪酸とは

飽和脂肪酸の一例として、ステアリン酸を紹介しましょう。ステアリン酸は、炭素数(C)18です。下図に3つタイプの違う構造式が書かれていますが、すべて同じステアリン酸を表しています。

一番下の画を見てください。炭素(C)を数えていくと18あります。炭素(C)は4本結合するための腕を持っています。隣の炭素(C)と結合するために2本、水素(H)と結合するために2本使えます。
炭化水素の端の1本は、カルボキシル基(-COOH)と結合します。

ステアリン酸

ステアリン酸

ステアリン酸

炭素(C)の腕が、すべて他のものと結合するために使われている脂肪酸を飽和脂肪酸といいます。

脂肪酸の書き方は、上図の一番下のが省略なしの書き方ですが、これはめったに見ません。一番よく見るのは、一番上の省略された書き方をしている構造式です。何も書かれていないところはすべて炭素(C)と水素(H)で埋まっています。

パルミチン酸

食用油で登場する脂肪酸は、炭素数18の脂肪酸が多いですが、炭素数16のパルミチン酸もよく出て来ます。見るとお分かりの通り、炭素数が2個減っただけです。

パルミチン酸

パルミチン酸

不飽和脂肪酸とは

次に説明する不飽和脂肪酸は、炭素同士の結合の中に、1カ所以上、炭素の二重結合があります。

オレイン酸

まずは、オリーブオイルの主成分である脂肪酸、オレイン酸を見てみましょう。ステアリン酸と同じ炭素数18の脂肪酸ですが、炭素の二重結合が1個あります。

オレイン酸

オレイン酸

飽和脂肪酸は、形がまっすぐだったのに、オレイン酸は曲がっています。二重結合の部分だけ、炭素と水素を省略しないで書くとこうなります。

二重結合

二重結合

他の炭素は結合するための腕を4本持っていて、それぞれが別のものと結合していましたが、炭素の二重結合の部分では、炭素同士の結合に2本の腕を使っているので、それぞれの炭素は水素とは1個ずつしか結合していません。

そのため、飽和脂肪酸のように対称的なきれいに見える形にはなりません。

リノール酸

次に、炭素の二重結合が2個あるリノール酸を見てみましょう。リノール酸は、炭素数18のオメガ6の脂肪酸としてよく知られています。サラダ油、紅花油では脂肪酸の50%程度がリノール酸です。必須脂肪酸と呼ばれ、体の中で作られないので、食品からとる必要がある脂肪酸です。

リノール酸

リノール酸

二重結合が2個あると、二重結合の場所から同じ方向に曲がっているので、さらに形がいびつになって行きます。

もう一つ、二重結合が3個ある脂肪酸を紹介しましょう。

α-リノレン酸

もう一つ、今度は炭素の二重結合が3個ある脂肪酸です。α-リノレン酸は、炭素数18で二重結合を3個持ったオメガ3の脂肪酸としてよく知られています。えごま油、亜麻仁油、インカインチ油の脂肪酸として50%以上含まれています。今とても人気があります。こちらも必須脂肪酸で、必ず食品からとる必要があります。

αリノレン酸

α-リノレン酸

炭素の二重結合が3個になると、さらに曲がり方がきつくなり、だんだん輪に近づいて行きますね。

ここまで構造式を書いてきたのは、意味があります。飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸も炭素と水素の鎖のようなものにカルボキシル基(-COOH)がついた構造であることに変わりはありません。

しかし、炭素の二重結合ができると、そこから同じ方向に曲がり始めます。二重結合の数が1個よりも2個。2個よりも3個、数が増えるほど、全体の形がいびつになって来ます。

炭素の二重結合のところで同じ方向に曲がる形を、シス(cis)型といいます。天然の脂肪酸のほとんどすべてがシス型です。二重結合のところで反対方向に曲がる形は、トランス(trans)型といいます。これは、熱を加えたり人工的に脂肪酸に水素を添加するとできます。トランス脂肪酸は体によくないと問題になっています。

脂肪酸の形は融点と保存性に関係する

さて、形を見て、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を比べてどちらが壊れやすいと思いますか?
どう見ても不飽和脂肪酸の方が壊れやすいですね。

壊れやすさは、油の融点に関係します。 融点は、固体が液体になる温度です。

二重結合があると融点が下がる

たとえば、バターは飽和脂肪酸をたくさん含んでいます。常温で柔らかくなりますが、液体になって流れたりはしません。

もし、お家にオリーブオイルがあったら冷蔵庫に入れてみてください。常温では、液体ですが、冷蔵庫に入れると温度によりますが、白く固まってしまいます。

では、亜麻仁油、えごま油、インカインチ油はどうでしょう?これらは冷蔵庫に入れてもずっと液体のままです。リノール酸の多いサラダ油もずっとサラサラの状態のままです。炭素数が少なく二重結合が多いほど脂肪酸の融点が下がります。

二重結合があると酸化されやすい

次に、油の保存性についてはどうでしょう?

バターは、相当保ちますね。保存性がとてもよいです。飽和脂肪酸は炭素のすべての腕に水素が結合しているので、他のものと反応しにくいのです。油は酸化されますが、飽和脂肪酸は最も酸化されにくい脂肪酸です。

オリーブオイルは、しばらく置いておくと香りが飛んでだんだん苦みが増してきます。なるべく小さいびんを買うようにすすめられます。

二重結合が3個あるα-リノレン酸が主成分の亜麻仁油、えごま油は、開栓後冷蔵庫で保存しないとだめな油です。冷蔵庫の中に入れておいてもしばらく使うのを忘れていると、魚臭い特有のにおいがするようになってしまいます。オリーブオイルより変化が激しいです。

サラダ油は、やはりリノール酸が多いので酸化しやすいのですが、製造工程で精製されていて、やや酸化されにくい性質がありますが、リノール酸が酸化されやすいのは変わりがありません。

飽和脂肪酸は強く不飽和脂肪酸は弱いと覚えておいてください。

まとめ

食用油で考えなければいけない脂肪酸の種類は案外少なく、また、構造式も簡単です。炭化水素の鎖が長くなるか、二重結合があるかの違いだけです。

化学構造式を無視しないようにしていると、だんだん脂肪酸の法則性に気がついて来ます。

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