脂肪をとり過ぎると、ガンにかかりやすくなり、脂肪酸の中ではリノール酸に発ガン、増殖、転移を促進する働きがあるそうです。はっきり書かれていて驚きました。
油をとり過ぎるとガンになるという話、何となく聞いたことがあるような気がしますが、都市伝説(?)みたいなものだと思ってました。
しかし、癌と脂質栄養という短くまとめられた論文を読んで、唸ってしまいました。読ませていただいてとても重要だと思ったことを書いておきます。
高脂肪食が乳癌と大腸癌の発生を促進する
昔に比べると油の摂取量が増えています。ちょっと気になります。
すでに1942年には高脂肪食が乳癌の発生を促進することが動物実験で示され、大腸癌においても高脂肪食の発癌増強作用が1974年に報告され、それ以降も同様の結果が多く報告されている。
糖質制限している方は、エネルギー源として油の摂取に積極的だと思います。少し掘り下げて調べてみたいです。
それにしても、1942年とはずいぶん昔から問題になっていたんだなと思います。その当時の日本は、まだまだ脂肪の摂取量は少ないですから関係がなかったでしょう。
リノール酸が癌の発生を促進、増殖や転移も促進する
この論文でもっとも重要なところです。
リノール酸を多く含む植物油(コーン油、ヒマワリ油など)は飽和脂肪酸を多く含むココナツ油などと比べ、実験動物において乳癌や大腸癌の発癌を促進することは、乳癌ではすでに 1971年に、また大腸癌では 1976 年に判明していた。
しかしながら、これら食品として使用されている油脂には各種の脂肪酸が含まれており、どの脂肪酸が植物油の発癌増強作用の本態なのかについては明らかではなかった。
我々は高純度のリノール酸と飽和脂肪酸であるステアリン酸を用いて、大腸発癌への影響について詳細に検討を行い、リノール酸の大腸発癌増強作用とその機序の一端を明らかにした。その後の研究によってリノール酸は癌の発生を促進するのみならず、癌の増殖や転移までも促進することが明らかとなっている。
リノール酸とはっきり書かれています。リノール酸が発癌を促し、増殖や転移も促進すると。これは別記事にしますが、リノール酸の発癌実験の論文を探します。
何がいけないのだろう?と思います。
そして、反対にオメガ3の脂肪酸はとてもよい効果があるのです。
EPAとDHAは発癌と増殖や転移を抑制する
はっきり言い切っています。研究結果に確証があるのだと思います。
1986 年にReddy と Maruyama は n-3 系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚油を用い、実験的大腸発癌に対する抑制作用を初めて報告した。我々は高純度の EPA を用いてラットでの実験的大腸癌の発癌をEPA が抑制することを 1988 年に報告するとともに、乳癌の発癌抑制についても報告した。
我々はその後の研究によって、n-3系脂質であるα-リノレン酸、EPA ならびに DHA は発癌を抑制するのみならず癌の増殖や転移までも抑制することが明らかにしてきた。
n-3系は、オメガ3と同じ意味です。
オメガ6のリノール酸がよくない。反対にオメガ3の脂肪酸はよい。わかりやすい図式ですが、他の脂肪酸はどうなのでしょう?
飽和脂肪酸は癌の発生を促進しない
飽和脂肪酸は悪玉コレステロール(LDL)の数値を上げるなどと嫌われていますが、発癌には関係がないそうです。
ヤシ油などに多く含まれている飽和脂肪酸の餌中の含有量を増すと、高カロリー食としての影響を受けて実験的には乳癌や大腸癌の発生を増強するが、飽和脂肪酸自体には癌の発生を促進する作用が無いことが動物実験で示されている。
残りは、オリーブオイルのオレイン酸です。
一価不飽和脂肪酸は促進も抑制もしない
オリーブオイルは、リノール酸を多く含んでいないから、という意味で発癌を促進することはなく、しかし、抑制もしないそうです。
イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸地方では油脂(オリーブ油)を多く摂取しているにもかかわらず、乳癌の発生が低率であり、オリーブ油を多く使用する地中海料理が健康に良いとされ、注目されることとなった。
その後の実験的研究の結果、彼らが多く摂取しているオリーブ油は植物油だがリノール酸を多く含んでいないために癌の発生を促進しないのであり、オリーブ油自体には癌の発生に対する抑制作用は無いであろうとの結論となった。
この乳癌発生が低率である一因として、彼らが好んで飲む赤ワインに含まれている成分(resveratrol)が乳癌の発生を抑制している可能性が推察されている。
よくも悪くもないといわれると少々がっかりしますが、香りがよいですから楽しんで使えます。赤ワインのレスベラトロールについては、追求しません。
食事の脂質が増えてリノール酸が多いことが問題
以前、日本人は肉を食べて米を食べなくなったという記事で、日本人の食生活は、カロリーは増えていませんが、その分、米が減り、肉が増えて脂肪が増えた話を書きました。
自分が年をとってきているせいかもしれませんが、ガンの話を聞くことが増えたのは日常的に感じることです。特に、大腸ガン、乳ガンや肺ガンの話が増えたように感じます。
この論文によると欧米型のガン(大腸ガン、乳ガンならびに前立腺ガン)の発生には食事性因子が重要な影響を及ぼしていることが 動物実験や人での疫学的研究によって示されており、栄養が関与するガン(Nutrition related cancers)と呼ばれているそうです。もちろんその栄養とは脂質です。
この論文が伝えていることは2つあります。
- 脂質をとり過ぎているとガンにかかりやすくなる。
- リノール酸は発ガン、増殖、転移を促進する。
逆にいうと、脂質をとり過ぎない。そして、リノール酸をとらないようにすると、欧米型のガンにかかりにくくなるということになります。
NOTE
このブログを書き始めるまで、脂肪はC(炭素)H(水素)O(酸素)からできていて、炭水化物の仲間ぐらいにしか思っていませんでした。私は農業に興味があったので、肥料のうち、窒素(N)のやり過ぎが作物の病気の原因になることは知っていました。
そして、その窒素が入っているタンパク質は、アレルギーのもとになるアレルゲンになるので、タンパク質のとりすぎが一番よくないだろうと思っていました。
ところが、脂肪のとり過ぎはガンにかかりやすくなり、中でもリノール酸は、発ガンとガンの増殖、転移を促進すると書かれていて、ビックリしました。
リノール酸以外、たとえば、プロスタグランジンの話題で必ず出てくるアラキドン酸は問題がないのでしょうか?詳しく知りたいところです。
今はそれほどでもありませんが、少し前に炭水化物をとらないダイエット法が流行っていました。血糖値を上げる炭水化物をとらないかわりに、カロリー源として油はOKだったと思います。
極端にやり過ぎるのは気をつけた方がよいかもしれません。
このことについて、より詳しい文献を探してもう少し深く記事を書きたいと思います。
また、この他のリノール酸についての記事は、リノール酸についてをお読み下さい。