ヨウ素価とは何か

ヨウ素価は、油の品質管理のために使われます。炭素の二重結合にヨウ素が結合するので、不飽和脂肪酸をもつ油が酸化が進んでいないか知ることができます。対象となる油100グラムと反応するヨウ素のグラム数で表します。

サラダ油ってなんだろう?で書きましたが、食用植物油脂には食用植物油脂の日本農林規格(主なJAS規格値)があります。表の中に、ヨウ素価というのがありました。この記事では、ヨウ素価について説明します。

ヨウ素価(ようそか)は、対象となる物質100グラムと反応するハロゲンの量を、ヨウ素のグラム数に換算して表します。

ハロゲンというのは、元素周期律表を見ていただいて、右から2列目を見てください。17族の、F(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、I(ヨウ素)などのことをいいます。

周期律表

油脂を構成する脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がありますが、不飽和脂肪酸には炭素の二重結合があります。この二重結合(C=C結合)は反応性が高く、空気によって酸化されやすい性質があります。

ヨウ素は炭素の二重結合と結合しやすい

ヨウ素は炭素の二重結合C=C結合に容易に付加反応するため、油脂と混合して消費される量を調べれば、その油脂に含まれる炭素の二重結合C=C結合のおよその割合を知ることができます。

ヨウ素価は化学的な構造や組成のわからない混合物であっても簡単に求められるため、化学品の評価手法として工業的によく用いられており、なかでも油脂はヨウ素価の値によって乾性油・半乾性油・不乾性油に分類されます。油が固まるのは、酸素との反応によります。

乾性油は空気中で完全に固まる油であり、ヨウ素価は130以上。亜麻仁油・桐油・けし油・しそ油・くるみ油・えごま油・紅花油・ひまわり油など。

半乾性油は、空気中で反応して流動性は低下するが、完全には固まらない。ヨウ素価は130から100程度。コーン油・綿実油・ごま油・大豆油など。

不乾性油は空気中で固まらない油。ヨウ素価は100以下。オリーブ油・アーモンド油・ピーナツ油・やし油・椿油・菜種油など。

ヨウ素価をためしに計算してみる

今、理想状態を考えて、リノール酸だけの油脂があるとしましょう。リノール酸だけを含む油脂の化学式は (C17H31COO)3C3H5 と書かれます。リノール酸が3本、それがグリセリンとエステルになっています。油脂の構造式は、油の構造が分かると血液検査の中性脂肪がわかるよを見て下さい。

脂肪酸が全てリノール酸である油を考える

リノール酸の構造式は、下図のようになります。炭素(C)が18個、水素(H)が32個、酸素(O)が2個から構成されています。グリセリンとエステル反応するときは、図の一番上にある-OHからHが離れてグリセリンの-OHと結合して水になり、Hを離した3本のリノール酸は、グリセリンのCH2もしくはCHと結合します。

分かりにくかったら、油の性質を決める脂肪酸について調べてみたも見てください。

rinol3

次に、リノール酸が3本ついた油の構造式を書きます。形がうまく整えられなかったのですが、許してください。こちらは、脂肪酸のCとHを省略した書き方です。

リノール酸3本の油

リノール酸3本からなる油

この油の分子量を求める

さて、上図、リノール酸3本からなる油の(C17H31COO)3C3H5 の分子量を計算していきます。
(カッコ)の中は、炭素Cが18個、水素Hが31個、酸素Oが2個ですから、
12×18+1×31+16×2=279
これが3本ありますから、
279×3=837

さらに炭素Cが3個、水素Hが5個ありますから、
12×3+1×5=41

これを合計して、
837+41=878

分子量は878です。

リノール酸には炭素の二重結合が2個ある

リノール酸には図を見ていただければお分かりのように、1本あたり炭素Cの二重結合が2個あるので、この油脂には6個の炭素Cの二重結合があることになります。

ヨウ素は1分子はI(ヨウ素)原子2個からなる二原子分子であり、通常I2で表されます。ヨウ素の原子量は127なので、分子量は254になります。

脂肪酸に炭素Cの二重結合が1個あるとヨウ素I2が1分子結合するので、この油脂には6分子のヨウ素が結合します。

さらに、ヨウ素価は、油脂100gに結合するヨウ素のグラム数を表すので、100/878倍しなければなりません。

これを計算すると以下のようになります。
6×254×100/878=174

このように計算してくると、ヨウ素価は炭素の二重結合が多いほど大きくなることが分かります。

ヨウ素価が大きいと不飽和脂肪酸が多い

実際の油脂はいろいろな脂肪酸で構成されていて、しかもその形もモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドの混合物で、おまけに不純物も入っていますからこんな単純計算では出せません。

逆に、ヨウ素を加えて、どの程度結合したかを測定すれば、油脂の中に含まれている不飽和脂肪酸の割合を推定できます。

ヨウ素価は、炭素Cの二重結合がどの程度あるのか推定するために測定しています。その数字が高いほど不飽和脂肪酸が多いことがわかります。

NOTE

食用植物油脂の日本農林規格(主なJAS規格値)の表にあるヨウ素価が載せられている部分を上から3番目まで切り出してみました。

油脂名 よう素価
精製サフラワー油(ハイリノール) 136~148
精製サフラワー油(ハイオレイック) 80~100
精製サフラワー油(混合品) 80~148

ハイリノールは、リノール酸(炭素の二重結合が2個)が多いタイプの油です。ハイオレイックは、オレイン酸(炭素の二重結合が1個)が多い油です。混合品は、それらを混ぜたものです。

並べてみると、意味がわかります。だいたいこのぐらいの数値なら品質がよいものだということです。

例えば、精製サフラワー油(ハイリノール)で、表に出ている数値よりずっと少ない場合は、酸化が進んだ油で、炭素の二重結合が少なくなっているとわかります。

油にはいろいろな種類があり、測定しているとそれぞれ特有の数値が求められます。それよりも下回っていないか品質管理に役立てることができます。

油の加工について他の記事は、油の加工についてをご覧下さい。

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