植物油に水素を付けていくとマーガリンになる?なんで?
そもそも、油のことを詳しく知りたいと思ったきっかけは、植物油に水素を付けていくとマーガリンになるという話でした。感覚的に全く理解できませんでした。なぜ油に水素なんだ?
当時、転職した会社は通販事業も行っており、いまやどこでも買えるようになりましたが、オメガ3の高級な亜麻仁油を販売していました。
「脂肪酸というものに水素添加するとマーガリンができる?」
意味がわからないので、隣の席の同僚に聞いてみましたが、どうやらきちんとわかっていない様子・・・。
今の時代はみんながスマホで検索するような時代です。こういうことではお客さんに許してもらえなくなるのではないかと思います。しかし、昔の通販会社(もちろん会社によると思いますが)にはそれほど情報が集まっていませんでした。そして、みんな販売することに忙しかったのです。
油は肥満の原因になるのでなるべく摂らないようにしようと思っていました。
49歳まで買う油の銘柄を考えたことなどありませんでした。ただ、食べものにはそれなりに気をつかっていました。油は肥満の原因になるのでなるべく減らすように考えていました。
何かのきっかけがあり(すみません覚えていない・・・)、サラダ油よりは体によさそうだからとしばらくごま油を使っていました。しかし、1990年頃のバブル時代以降、オリーブ油がとても安くなりました。ごま油より安くなったので、以来、オリーブ油を使って来ました。
ところが、転職した会社で上で紹介したマーガリンの話の他にこんな話を聞きました。
「サラダ油が体に悪い」
「リノール酸がよくない」
「マーガリンにはトランス脂肪酸が多い」
私が油のことに興味を持ったのは、こんな話を聞いてからです。なぜ油に問題になることがあるのか知りたいと思いました。
何しろ、私が物心ついてから、油といえばサラダ油でした。そして、子供の頃から見ていたサラダ油のCMでリノール酸はよいものだと思っていました。マーガリンはバターと比べておいしくはなかったけど、コレステロールがからだにたまらないからよいのだと思っていました。
そうしたら、全部ひっくり返され「ダメだ!」といわれるのです。
おそらく35歳くらいまでは油といえばサラダ油100%使用の生活でした。今さらダメだといわれても仕方がありません。
ちなみに、その時の私は、脂肪と脂肪酸の区別すらできませんでした。同じものだろうと思っていました。
詳しい本が一番わかりやすいとわかるまで
油について最初に買って来た本は、料理研究家丸元淑夫さんの図解 豊かさの栄養学〈2〉健康の鍵・脂肪は正しくとろう (新潮文庫)です。
私は文系なので、できるだけ化学式に関係がないところで理解したいと思っていました。この本はアメリカの栄養学の知識をもとに書かれていました。丸元淑夫さんは、無水調理ができるビタクラフトという鍋をすすめていた方です。
しかし、本を読み進めていくと油のとり過ぎはガンになるというアメリカの記事が紹介されていて、私にとってはさらに「?」が増えました。
その後、短命の食事 長命の食事 (ワニブックスPLUS新書)が発売され、早速、買って読みました。
この本では、リノール酸が皮膚炎と関係していることを知りました。
その後、油の正しい選び方・摂り方―最新 油脂と健康の科学 (健康双書)を買いました。
この本は奥山治美先生と日本脂質栄養学会の先生方の論文の抜粋と要約みたいな本でした。理解するのがむずかしかったです。食用油としてオメガ3のα-リノレン酸をすすめる本です。
さらに食用油脂は油脂専門の出版社、幸書房から出版されている油についての概説本です。専門書ですが、論文を集めた本ではないので読みやすくとても参考になりました。
この本には脂肪酸の名前がたくさん出て来て、いよいよ化学が無視できなくなりました。
化学式を無視しようとしたのは無駄な抵抗だった
ある日観念して、ブックOFFに高校生が使う化学の参考書を買いに行きました。理解しやすい化学Ⅰ・Ⅱ 新課程版(文英堂 2004)を見つけました。
トランス脂肪酸を理解するだけなら、これだけで済みました。そして、脂肪酸の構造が炭素数の違いで長さに違いがあるものの、単純な構造なんだと理解できるようになりました。
しかし、その後、リノール酸とり過ぎがなぜよくないのかということと、コレステロールが気になるようになりました。もともと油のことだけを書こうと思っていたのですが、油の消化吸収を調べていくと、体の中に入ってくるときも体内を循環するときも、油はコレステロールと一緒に移動するのです。
しかし、コレステロールは構造式が環構造なので見ただけで「めんどくさい」、嫌になりました。
コレステロールについて知るため生化学の本を
ところが、動脈硬化の話を調べている時に、血管の中にたまったプラークは運動しても減らないという話を読んで、プラークのもとになっている(らしい)コレステロールは分解しないのだろうか?と疑問に思うようになりました。
それで、コレステロールは分解されないのかどうか調べ始めると、まったくわからないのです。きっとこんなことは素人くさい疑問なのでしょう。書店で立ち読みしてもそんなことが載っている本が見つからないので、図書館に行って、関係がありそうな棚の本を1冊ずつパラパラと見ていきました。
具体的には索引から「コレステロール」を探して該当ページを読んでいったのです。
残念ながらコレステロールが分解される記事は発見できませんでしたが、コレステロールが合成される記事が見つかりました。
それが、ハーパー・生化学原書23版(丸善出版 1993)でした。大型の翻訳本で医学生の教科書らしいのですが、図が多く読みやすい。これは手に入れた方がよいなと思って、2013年に発行されたイラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版(丸善出版 2013)の古本を買いました。
この本は3年ごとに新しくなるので、1つ前の版なら驚くほど安く買えます。
そしてこの本を読むと、油とコレステロールが腸から吸収され、肝臓を経由して体内を運搬されていく仕組みがよく分かりました。
また、考えたこともなかった、砂糖がコレステロールに変化することも理解できるようになりました。
さらに、リノール酸から炭素数2個増えた炭素数20のアラキドン酸がプロスタグランジン始め、プロスタノイドに変換される過程も書かれていました。リノール酸をとり過ぎていると炎症の反応が強くなるのです。
バイオ系学生必携本らしいTHE CELL
さらに、別な理由で細胞の分子生物学第4版(ニュートンプレス 2004)の古本をとても安く買いました。一番新しい版なら24000円です。バイオ系の学生なら最新版が必要だと思いますが、私のような趣味の人は古い版でも十分間に合います。
この本も大型本で、いったい何キロあるんだろうというくらい重いです。しかし、図が多く、翻訳もこなれていてすごく読みやすい。この本を読んでいる中学生もいるそうです。根気は必要ですが確かに読めるだろうなと思います。この本はバイオ系の学生の必携本なのだそうです。
細胞膜を構成するリン脂質には脂肪酸が2本あるのですが、それを固定しているのがコレステロールだと知ることができました。
やはり必要な有機化学の本
そして、どうしても必要になってくる有機化学。
私は5教科7科目の共通一次世代で、生物Ⅰと化学Ⅰは勉強しましたのでちょっとだけ化学は覚えていますが、有機化学はまったくの範囲外です。
ネットで探して評判も検索して有機化学 (ベーシック薬学教科書シリーズ 5)(化学同人 2008)の古本を購入しました。評判通りとても読みやすい本です。趣味でなければ新しい本を買うのがよいです。
これらの本に助けてもらいながら、記事を書くようになりました。
ことわざにもあります。「急がばまわれ」
是非、改めて調べてみて下さい
私の書いた記事は、できるだけ正確に間違いがないように努めていますが、読んでくださる方が自分で確かめられるように、必ず出典を明らかにしています。
本や論文のタイトルとリンク先を明示してあります。
私の記事を読んで、面白そうだなと思ったら、是非、もとの本や論文を読んでみてください。
また、私のような専門教育を受けていない書き手は、自分の解釈を本来書くべきではないかもしれません。そのため、文献に出て来た話と、私の意見や考えをできるだけそれとわかるように意識的に分けて書くようにしています。
いま、ネットには数多くの不確かな記事が存在するため、肩書きがない人の記事は検索順位が上がらないような仕組みになっているらしいです。しかし、そんなことは関係ありません。
長い時間をかけ、多くの人に研究されて整理された知識は「誰でも学べるもの」になっています。最初から専門家の人などいません。私は、農学部の食品関係の学科の学生になったつもりで学んでいます。
素人くさい疑問が次々浮かんできますが、その疑問は、きっと私だけでなく多くの人が同じように持つだろうと思って記事にしています。
昔、一緒に働いていた同僚と、油について興味があるすべての方に読んでいただければ幸いです。
私は以前、ライターさんに原稿を依頼する側でしたが、ある程度の知識を持ったライターさんには出会えませんでした。それで自分で調べて書くようになりました。
もし、通販会社の方で、油の書き手が必要でしたら、お声をおかけください。品質のよい商品を販売するなら、丁寧でうそのない説明が必要ではないかなと考えています。
どうぞよろしくお願いします。