1965(昭和40)年から2013(平成25)年までの日本人の食生活を調べると、カロリーは変わらない、もしくはわずかに減っていますが、脂肪の摂取量は3倍になっています。その分、炭水化物の摂取量が減っています。つまり、ごはん(米)を食べなくなった。
昔はあまり肉を食べなかった
油のことを調べていると、日本人の食生活の変化について知りたくなってきました。高度成長期に育ってきた私は、何となくはわかります。私は50代半ば。子供の頃を思い出すと、夕食がカレーだと大喜び。肉が出ると嬉しかったものです。
実際、食事に肉が出る頻度は低かったです。家で食べるラーメンはインスタントラーメン。カップ麺がよく食べられるようになったのは、昭和50年代になって少したってからだったように思います。今みたいにオリーブオイルを使ってパスタを作るような習慣はありませんでした。ソーセージといえば魚肉ソーセージが一般的で、給食にも出ていました。
現在と昔を比べると、明らかにおかずが贅沢になりました。肉でも魚でも好きなように食べられます。ただ、その分、食事の内容が変化したのは確かです。
この記事では、統計を探して、日本人の食事の変化について調べてみました。
日本人は米を食べなくなった
農水省の食料自給率に関する統計に消費の推移という表がでていました。その中から一部切り出してみました。
明らかに米の消費が減っています。半分になっています。ちなみに、昔は、パンを食べるようになったから米を食べなくなったといわれたものです。もとの表には小麦の消費量もでていますが、昔も今もあまり変わりません。
昭和40年度 | 50年度 | 60年度 | 平成20年度 | 21年度 | 22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | |
米 | 111.7 | 88.0 | 74.6 | 58.8 | 58.3 | 59.5 | 57.8 | 56.3 | 56.9 |
肉類 | 9.2 | 17.9 | 22.9 | 28.5 | 28.5 | 29.1 | 29.6 | 30.0 | 30.1 |
魚介類 | 28.1 | 34.9 | 35.3 | 31.4 | 30.0 | 29.4 | 28.5 | 28.9 | 27.4 |
油脂類 | 6.3 | 10.9 | 14.0 | 13.8 | 13.1 | 13.5 | 13.5 | 13.6 | 13.6 |
単位がキログラムなのと、1年間のデータになるので数字を見てもピンと来ません。年号を西暦に直して、数字を365(日)で割って、1日あたり消費するグラム表示にしましょう。年度なので本来は4月1日から翌年3月31日までが正確な期間になりますが、それほど厳密さは必要ではないので、例えば1965年ということにしました。また、グラム数の小数点以下は切り捨てました。
1965年 | 1975年 | 1985年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | |
米 | 306 | 241 | 204 | 161 | 159 | 163 | 158 | 154 | 155 |
肉類 | 25 | 49 | 62 | 78 | 78 | 79 | 81 | 82 | 82 |
魚介類 | 76 | 95 | 96 | 86 | 82 | 80 | 78 | 79 | 75 |
油脂類 | 17 | 29 | 38 | 37 | 35 | 36 | 36 | 37 | 37 |
この表を見てどう思われますか?ざっと50年くらいの変化です。
お米は半分になり、肉類は3倍強、魚介類は現状維持、油脂類は2倍です。私の記憶では、だいたい1985年くらいに今の油をたくさん使う食生活のようなものが出来上がったように思っていましたが、だいたいその通りだったようです。
しかし、気になったのは、肉や魚をこんなに毎日食べているかなと思いました。肉を食べる日は魚は食べないと思います。昼に焼魚定食を食べて夜は自宅でトンカツを食べることはありますが、毎日それほどきっちり肉や魚を食べているわけではないし、特にある年齢以上になると、昼は軽く蕎麦やうどんにしておこうと考えます。
それで、食料需給表にある平成26年度食料需給表(概算)をよく読んでみたら、最後にこのように書かれていました。
「本表により算出された食料の供給数量及び栄養量は、消費者等に到達した食料のそれであって、国民によって実際に摂取された食料の数量及び栄養量ではないことに留意されたい。」
消費者等に到達した食料ですから、実際に食べられたものよりずっと多いですね。それでも需要が無いものは供給されませんから、傾向としては間違っていないと思います。
しかし、肉類、魚介類に限らず、食品では成分を分別して脂肪を油脂類に計上しているわけではないので、実際に毎日食べている脂肪分はもっと多いと思います。
バブルの頃に輸入食品が安くなり、それから現在の円安になるまで、輸入食品はだいたい安い水準の価格で推移したように思います。(最近はもちろん少しずつ値上がりしています)
それで、いろいろな種類のパスタやオリーブオイルが身近なものになりました。また、牛肉も輸入物ならかなり安く買えました。もちろん、それ以外の肉も輸入品ならかなり安かったです。ワインも国産なら安くても1000円とか1500円だったものが、一気に数百円で買えるようになりました。
安くなった輸入食品によっておかずが豪華になり、そのためお米が食べられなくなったということだと思います。
日本人の食事カロリーの変化
食事の内容が変化すると、カロリーはどうなのだろうと思います。いろいろ探していたら、臨床医のための膵性脂肪便の知識―栄養障害・消化吸収不良改善のためにという本に日本人のカロリー、脂肪摂取量の経年変化がでていました。
日本人のカロリー、脂肪摂取量の経年変化 | ||
年 | カロリー(kcal/日) | 脂肪(g/日) |
1955 | 2104 | 20.3 |
1965 | 2184 | 35.9 |
1975 | 2226 | 55.1 |
1980 | 2119 | 55.5 |
1985 | 2088 | 56.8 |
1990 | 2026 | 57.0 |
1991 | 2053 | 57.9 |
1992 | 2054 | 58.3 |
この表を見ると、摂取カロリーはやや減って、脂肪の量は約3倍になっています。私は1985年頃に食生活ががらっと変わったような印象を持っていましたが、脂肪がぐんと増えたのは、1975年、昭和50年だったのですね。
昭和50年といわれてもピンと来ないので、ウイキペディアで調べてみたら、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」「スモーキン・ブギ」がヒットした年だとか。そうか!リーゼントにして作業用のつなぎを着たお兄さん達がたくさん歩いていた頃かと思い出しました。
カロリー数が減っているのは、日本が少子高齢化に向かっていることも関係していると思います。若者よりもお年寄りが増えれば、全体として摂取カロリーは減るでしょう。もう一つは特に1990年代以降、健康維持に関心がもたれるようになり、食べる量をセーブするのが当たり前になりました。
しかし、それでも脂肪が3倍になっています。脂肪は1グラム9kcalありますから、1992年で525kcalを占めています。約25%。この表は1992年で止まっていますが、その前の消費量の推移の表を見ると、油脂類の供給は横ばい、肉類の供給は増えていますから、現在の脂肪の比率は、1992年の25%よりも増えているのは間違いないと思います。
脂肪の量が増えて、総カロリー数が変わらないか漸減なら、米の量が減るのは当然ですね。
しかし、昔に比べて脂肪の摂取量が3倍になっているなら、脂肪についてもっと知っておいた方がよいなと思いました。
NOTE
子供の頃から、いくつぐらいまでだったか、「たくさん食べるのがエライ」という価値観があったような気がします。たくさん食べるのはお米です。
たくさん食べられる子供は元気で健康な証拠。(これは有効な考えの一つだと思います)
「たくさん食べなさい」とよくいわれたものです。そういえば、高校の頃はドカベン(大きい弁当箱)が流行りました。
今、知り合う若い人は少食な人が多く、食べているところを見ると、そんな量でよく足りるなと大きなお世話で思うことがあるのですが、案外カロリーは摂っていたんだなと少し安心しました。