けん化価とは何か

けん化価は、1gの油をけん化するのに必要な水酸化カリウムのmg数のことです。求められた数字から、油の平均分子量を知ることができます。JAS規格では、植物油それぞれのけん化価の範囲が指定されています。その範囲から外れると、混ざりものがあるとわかります。

せっけん

けん化は石けんをつくる反応

けん化とは、単純にいうと、油とアルカリを反応させて石けんを作る反応のことです。

まず、その前にグリセリンと脂肪酸で油ができる反応を説明します。グリセリンと脂肪酸の反応は下図の通りです。図中Rは脂肪酸の炭化水素部分を表しています。脂肪酸の端にはカルボキシル基(-COOH)がついていて、そこでグリセリンと結合します。

次に、油とアルカリが反応して、グリセリンと石けんができる反応を説明します。今度は油からグリセリンができます。そして、油についていた3本の脂肪酸にアルカリがついて石けんができます。

soap

けん価は1gの油をけん化するのに必要な水酸化カリウムのmg数

けん化価とは1 g の油をけん化するのに必要な水酸化カリウムのmg(ミリグラム)数のことをいいます。

油を構成するのはグリセリンと脂肪酸です。脂肪酸には、いくつも種類があり、炭素の数が変わります。すると分子量が変わりますから、けん化価も変化します。

油の分子量を計算する

分子量について説明しましょう。下図は、飽和脂肪酸であるステアリン酸です。分子量を計算するには、それぞれの原子量を、C(炭素)=12、H(水素)=1、O(酸素)=16として計算します。元素の原子量を知るにはこちらの周期律表が見やすくてよいです。

パルチミン酸

ステアリン酸は、C(炭素)が18個、H(水素)が36個、O(酸素)が2個からできています。これを計算します。

12×18+1×36+16×2=284

これが1モルという単位になります。ステアリン酸の分子量1モルは284グラムです。

いま、油がグリセリンと3本のステアリン酸からできているとしましょう。今度は油の分子量を計算してみます。この記事の一番上の図にある油と書かれているものを計算していきます。「R」に相当するのは、ステアリン酸です。ステアリン酸の左端にあるカルボキシル基(-COOH)からH(水素)が1個抜けているのが特徴です。

この油は、ステアリン酸からH(水素)が1個抜けたものが3本と、CH2、CH、CH2からできています。それぞれを足して行きます。ステアリン酸からH(水素)が1個抜けたものは284-1=283です。CH2は、12+2=14。CH=13。これを全部加えます。

283×3+14×2+13=890

この油の分子量は、1モル890グラムになります。

水酸化カリウムの式量を求める

さて、1モルの油をけん化して石けんを作るには、2番目の図を見てください。3本の脂肪酸をグリセリンから切り離して3つの単位の石けんを作るには、3つの単位の水酸化カリウムが必要になります。これもモルで考えます。

1モルの油に対して3モルの水酸化カリウムが反応すると、3モルの石けんができます。式量を求めるために必要な原子量は、K(カリウム)=39、H(水素)=1、O(酸素)=16として計算します。

式量についての説明は、コトバンクの式量を見てください。

3×(39+1+16)=168

先に求めた油890グラムの反応に必要な3モルの水酸化カリウムは168グラムになります。

もし、この油が全て水酸化カリウムと完全に反応したとすると、

168/890×1000=188.76・・・

けん化価は、約188になります。これは不純物が何もない理想状態でのけん化価です。実際は、不純物や遊離脂肪酸(油の形をとらないただの脂肪酸)も存在します。

けん化価を求める

不純物が多ければ脂肪酸は少なくなり、水酸化カリウムの必要量は少なくなりますからけん化価は小さくなります。また、反対に遊離脂肪酸が余分に入っていると、石けんが理想状態より余分にできますから、けん化価は大きくなります。

上に書いたように最初から油の分子量が分かっていれば、理想状態と比較して不純物や遊離脂肪酸がどの程度含まれているか判断できると思います。

油の平均分子量がわかる

しかし、油は自然物で、まったく同じ組成のものからだけできているとは考えられません。グリセリンについている脂肪酸の種類がいろいろあるからです。それで、このように表します。

168/M(油の平均分子量)×1000=a

実際には、現在ある油に水酸化カリウムを反応させて、そのけん化価(a)を出します。それが出れば、油の平均分子量Mは、一次方程式を解けば出て来ます。

実際にけん化価を求める時は、油を水酸化カリウムのエタノール溶液でけん化し、けん化に要した水酸化カリウム量を求めます。(出典

そのため、上の式のaが最初に求められます。

つまり、けん化価が求められることによって、油の平均分子量を知ることができるのです。

けん化価が大きいと油の平均分子量が小さくなる

油を構成する脂肪酸が短いもの(炭素数が小さい)なら油の平均分子量は小さくなり、a(けん化価)が大きくなります。反対に脂肪酸が長い(炭素数が多い)なら油の平均分子量は大きくなり、a(けん化価)は小さくなります。

通常は炭素数が18のものが多いです。普通の油のけん化価は、私が出した計算結果のように190前後になりますが、やし油、パーム核油のように分子量の小さい脂肪酸を含むものは240~250と高く、反対に菜種油、ひまし油、肝油など分子量が大きい脂肪酸を含むものは170~180と低くなるということです。(出典

実際の数字を見てみましょう。

食用植物油脂の日本農林規格(主なJAS規格値)にはけん化価が載せられています。

少し抜き出してみましょう。精製やし油だけがけん化価が高いです。

油脂名 けん化価
精製サフラワー油(ハイリノール) 186~194
精製ひまわり油(ハイオレイック) 182~194
ごま油 184~193
精製ごま油 184~193
精製やし油 248~264

ココナッツオイルはヤシ油について調べれば分かるよという記事で、やし油の脂肪酸組成を調べています。一番多い脂肪酸は炭素数12のラウリン酸、次が、炭素数14のミリスチン酸です。

一方、サフラワー油(紅花)もひまわり油もごま油も炭素数18の脂肪酸が多く、リノール酸が多い油です。こちらのけん化価はほとんど変わりません。

やし油は炭素数12のラウリン酸と炭素数14のミリスチン酸が主要な脂肪酸なので、油の平均分子量が少し小さくなります。

けん化価が大きいと、平均分子量が小さいことを示すよい例です。

NOTE

けん化価を求めることは、原則的に、油の平均分子量を求めることになります。しかし、たとえば、大豆、菜種など原料がはっきりしている油を測定する場合は、すでに平均的な数値がでていますから、それと比較することで、けん化価を求めた油の品質を判断できると思います。

けん化価の数字が大きくずれる時は、混ざりものがあるということです。

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