イラストレイテッド ハーパー・生化学について

2017年の春にイラストレイテッド ハーパー・生化学原書29版を買ってそれ以来使っています。きっかけは、アセチルCoAからコレステロールが合成される図を見たからです。

最新版は2016年刊行の30版です。出版社に敬意を表して先に最新版を表示します。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書30版

3年ごとに改訂されています。

この本を知ったのは、図書館でした。きっかけはコレステロールです。

ある日、コレステロールについて知りたいと思った

私はこのブログで油についての記事を書いていまずが、以前は油とコレステロールは似たようなものなのだろうと思っていました。

あるとき、脂肪は運動して(燃焼させて)減らすことができるけれど、コレステロールも同じなのかなと思って、ちょっとだけ調べてみました。

ところがコレステロールの構造式を見ると、こんな嫌な形をしているのです。はるか昔、高校で化学Ⅰまでしか学んでいない私は、環構造を見ると、いやぁーな気持ちになります。

かろうじてベンゼンが六角形だったことは覚えていましたが、4個の環からできているものを見ても理解不能でした。

いまはわかるようになりましたが、この環が炭素(C)と水素(H)だけからできていることも知らなかったので、見た瞬間に拒否反応しか起こりませんでした。

コレステロール

この時までに、油(脂肪)は、グリセロール(化粧品などに使われるグリセリン)に脂肪酸が3本結合したものだと学習していました。構造としては単純なものなので理解しやすいです。

しかし、コレステロールは環が4つもあります。油とはまったく違う構造です。一体どうやって分解されるのだろう?と思いました。

ネットで調べても、こんな素人くさい質問に答えてくれるような記事はありませんでした。

それで、図書館に行って、片っ端から関係がありそうな本の索引を開いて「コレステロール」に該当するページを見ていきました。その時に、ひっくり返した本の中の1冊が1993年発行の「ハーパー生化学原著第23版」でした。

ハーパー生化学にも残念ながらコレステロールの分解(代謝)について書かれてはいませんでした。しかし、そこで見つけたのは、アセチルCoAからコレステロールが合成される経路でした。

コレステロールは糖からも脂肪酸からもつくられるんだ

アセチルCoAは、ブドウ糖が解糖系で分解され、ミトコンドリアのTCA回路(クエン酸回路)に入る時の物質です。

びっくりしました。

私はその時まで、コレステロールは「肉の脂身にあるもの」だとばかり思っていたのです。アセチルCoAからコレステロールができるということは、糖からもコレステロールがつくられることになります。

また、脂肪酸がβ酸化といって、炭素数2個ずつ切られて分解されるのですが、この時できるのも、アセチルCoAです。

油(脂肪)は分解されると、グリセロールと脂肪酸になります。脂肪からもコレステロールがつくられることになります。

なんだ、コレステロールはたいていの食べものからできるじゃないか。

それがこの時の発見です。

さらに、このアセチルCoA。補酵素A(HS-CoA)は単なる運搬役で何も変化しません。運搬されるのは炭素数2の酢酸です。お酢じゃないかと思いました。

アセチルCoAとは酢酸のことかという記事にまとめてあります。

これは私にとってかなり衝撃的な発見で、物事、なるべく深いところから知った方がいいなと思うようになりました。

ちなみに、そもそものコレステロールの分解についてですが。

今は、少し知恵がついたので、コレステロールは分解されるとアセチルCoAになるという記事を少し前に書いています。

図が多く読みやすい

「イラストレイテッド」なので、このように図が多く、読みやすいのが特徴です。

文字だけで説明されても、専門知識がありませんので、わからないことが多いですが、図があるおかげでなんとなくわかります。

ハーパー生化学

専門書は、読むのに数学や物理の知識が必要だと困難度がとんでもなく上がります。

しかし、この本は高校生の生物と化学の知識が多少あれば、時間をかけるとなんとかかんとか読んでいける本です。丁寧に理解させようとしてくれる内容なのです。

1939年から3年ごとに改訂されている

アメリカの医学生向けの教科書らしいです。

「翻訳にあたって」には、このように書かれていました。

”ハーパー・生化学”として一般に親しまれている本書は,”Review of Physiological Chemistry”という書名で1939年に初版が刊行された.

本書の特徴は,豊富な図を用いて簡潔に生化学,分子生物学をまとめた教科書であること,また,とくに医学や病気との関係を重視していることである.

生化学の教科書でこれだけ長期間にわたり使い続けられてきた類書はほかに例を見ない.

この分野の進歩は著しく速いので,たいていの教科書は2,3年経つと内容の改訂が必要となるが,これをたえず行うことはたいへんな作業である.

本書の場合は,ほぼ3年に1回の割合で改訂が行われている.

アメリカの教育方法はすごいなと思いました。

1つ前の版なら安く買える

イラストレイテッド ハーパー・生化学は、原書30版が2016年発行で一番新しいものです。現役の医学生やバイオ系の学生は最新のものが必要だと思いますが、私のように趣味で読むには、1つ前の29版でも十二分に間に合います。

アマゾンを利用すると、29版の古本は、最新版の半額以下で買えます。私と同じように興味のある方は、これを利用しない手はないと思います。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版です。

昔だと古本屋で探すことになりますが、理系専門の古本屋は少なく、神保町でも1軒しか知りません。

また、おそらくアマゾンが古本を取り扱うようになる前には、こんな値段で買うことは不可能だっただろうなと思います。とてもありがたいことです。

NOTE

私がこのブログを書き始めた頃は、最初は、一般的な油を解説している本を読みました。次に、栄養士になるための栄養学の参考書を買ってきて読んでいました。

ただ、読みながら疑問に思うことがあってもたいてい解決できません。

それで、今は一番詳しい本を探して読むことを心がけています。自分が思う素人くさい疑問を解決してくれるのは、専門的な教科書だと思うようになりました。

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