パーム油は世界一生産されている油であった

パーム油は世界一生産量の多い油です。洗剤の原料になるのかと思ったら、90%が食用で使われています。脂肪酸組成は、約40%がパルミチン酸(C16:0)、35%をオレイン酸(C18:1)が占めます。パルミチン酸を始め飽和脂肪酸が多いのが特徴です。

パーム

少し前にココナッツオイルはヤシ油について調べれば分かるよでココナッツオイルのことを調べました。その時にココナッツオイルとは、ヤシ油のことで、パーム油は、同じヤシ科の植物とはいっても別な種類のアブラヤシからとれる油だと知りました。しかも、パーム油は世界一の生産量なのです。

ヤシ油の生産量とどのくらい違っているのかというと、パーム油の生産量はヤシ油の10倍以上生産されています。世界一の生産量とは無視できません。この記事ではパーム油について調べてみました。

収穫量が多いアブラヤシ

この記事のトップに貼った画像は、アブラヤシの果房です。果実が房のようになるので果房と呼ばれています。アブラヤシの油は、この果実から得られます。果実は、3~5㎝の卵型で、1000個以上が集まって、重さ6~20㎏程度の果房をつくります。

油は、果実の果肉に含まれていて、含油率は45~50%もあります。

アブラヤシの果実は通年収穫することができます。大豆は毎年種をまいて収穫しますが、アブラヤシなら木が生長すれば実がなってくるので、アブラヤシの生産性はとても高いです。生産量世界第三位のなたねは含油率が高いのですが、1haの面積から収穫されたなたねを搾った油は800kg弱に過ぎません。これに対し、収穫面積1ha当たりのパーム油生産量は3.7トンにもなります。(出典)

種類別に生産量の多い順に並べてみました。

主な植物油の生産量(単位:千トン)(出典)
油種 2013/14(年度)
パーム油 59,360
大豆油 44,439
なたね油 27,029
ひまわり油 16,169
綿実油 4,859
落花生油 4,087
オリーブ油 3,416
とうもろこし油 3,148
やし油 3070

パーム油と大豆油がだんとつに多く、なたね油、ひまわり油までがそこそこの生産量で、後はがくっと落ちます。パーム油の生産は、インドネシアが最大の生産国で、第二位がマレーシアです。この2国で全体の85%を占めています。

パーム油の特徴

パーム油の脂肪酸組成は下図の通りです。同じヤシ科のヤシ油や、アブラヤシの果実の種を搾ったパーム核油とは組成がかなり違います。

100gあたりの栄養成分
食品成分 パーム油 パーム核油 やし油
8:0カブリル酸 0mg 3900mg 7600mg
10:0カブリン酸 0mg 3400mg 5600mg
12:0ラウリン酸 420mg 45000mg 43000mg
14:0ミリスチン酸 1100mg 14000mg 16000mg
16:0パルミチン酸 41000mg 7600mg 8500mg
18:0ステアリン酸 4100mg 2200mg 2600mg
18:1オレイン酸 36000mg 14000mg 6500mg
18:2n-6リノール酸 9000mg 2400mg 1500mg
18:3n-3α-リノレン酸 190mg 0mg 0mg
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用

パーム油の脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸からなります。このうち、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸は飽和脂肪酸です。オレイン酸は、1価の不飽和脂肪酸で、リノール酸は、2価の不飽和脂肪酸で必須脂肪酸です。

炭素数だけ書いておきます。ミリスチン酸(C:14)、パルミチン酸(C:16)、ステアリン酸(C:18)、オレイン酸(C:18)、リノール酸(C:18)です。

オレイン酸が多い

パーム油の主要脂肪酸は、パルミチン酸とオレイン酸です。この2種類の脂肪酸で80%以上になります。これは酸化や加熱に対する安定性が高い性質を示します。このため、トランス脂肪酸が問題になっている現代では、特にアメリカで水素添加の植物油に代わってパーム油の利用が進んでいます。パーム油にもリノール酸が含まれていますが、わずか10%程度です。

パーム油は、室温では半固体状です。飽和脂肪酸のパルミチン酸と1価不飽和脂肪酸のオレイン酸が主要成分なので、特定の温度で分別すると、液状油と固体油に分けることができます。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を比べると、油の融点からダイエットを考えるで書きましたが、炭素の二重結合がある不飽和脂肪酸の方が形がいびつで、壊れやすく、つまり融点が低いのです。

液体油にはオレイン酸が多く、固体油にはパルミチン酸が多く含まれることになります。その性質から液体油はパーム・オレイン、固体油は、パーム・ステアリンと慣用的に呼ばれているそうです。パーム・パルミチンじゃなくてパーム・ステアリンです。

パーム油の用途の90%は食用

この記事を書く前は、パーム油は大部分は石けんや化学工業に使われる材料になるのだろうと思っていましたが、なんと世界一の生産量となるパーム油の約90%は食用になるそうです。

残り10%が石けんその他になるのだとか。ちなみに、大量に生産される油ですから価格が安いです。それが使われる理由にもなります。

パーム油の固形のもの、パームステアリンは、動物性油脂と違って比較的低い温度で溶けやすいという特徴があります。口に入れるとなめらかに溶けるため、マーガリン、ラクトアイス、チョコレートの添加油脂やホイップクリームに使われます。この用途は、ヤシ油、パーム核油と同じですね。

最近、スーパーでカレールウを買って来てひっくり返したら、材料名にパーム油が出ていました。安価なことと、飽和脂肪酸が多いから酸化されにくいこと、そしてトランス脂肪酸の問題がほとんどないということで使われているのかもしれません。

液体状のもの、パームオレインは、酸化や熱への安定性が高いという特徴を生かし、インスタントラーメンや揚げ菓子用に使われたり、他の植物油とフライ用の油に使われています。

NOTE

今はナッツが高くなりましたが、10年くらい前安価だったのでよく買っていました。私はエドガーケイシーの本をよく読んでいたので、生アーモンドをよく買っていました。当時、アメ横や合羽橋の問屋さんに行くと、1kgで1500円程度で買えました。

ピーナッツはもっと安かったですが、バターピーナッツは、「バター」と書かれているのに、裏をひっくり返すと「パーム油」と書かれていました。

バターピーナッツ自体、とても安かったので、パーム油は安い油なのだろうと思っていました。本物のバターは高いですから。

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

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