ココナッツオイルはオメガ3の油ではない

ココナッツオイル、オーガニックなものは人気があるようですが、オメガ3の油ではありません。ココナッツオイルの脂肪酸組成は90%以上が飽和脂肪酸で、オメガ3の脂肪酸は0(ゼロ)です。炭素数12の飽和脂肪酸、ラウリン酸が一番多い成分です。

ココナッツオイル

最近、あまり聞かなくなったけど、一時話題だったココナッツオイル。人気が出ると、「オメガ3の油ですか?」と聞かれます。ココナッツオイルには、残念ながら、オメガ3の脂肪酸は全く含まれていません。

ココナッツオイルは、やし油のことです。

ココナッツオイルの脂肪酸組成は90%以上が飽和脂肪酸

ココナッツオイル(やし油)の脂肪酸組成は、飽和脂肪酸が91%、一価不飽和脂肪酸が(オレイン酸)7%、n-6系多価不飽和脂肪酸(リノール酸)が2%です。

オメガ3の脂肪酸は0(ゼロ)

残念ながら、n-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3)は0gです。

脂肪酸組成の表を載せます。念のため食品分析表に項目として出てくる脂肪酸は全て載せました。

たとえば、「C4:0 酪酸」とありますが、これは、C(炭素)数4で、二重結合数0(ゼロ)の脂肪酸であるとご理解下さい。二重結合0の脂肪酸は、飽和脂肪酸です。

炭素数12の飽和脂肪酸ラウリン酸が一番多い

ココナッツオイルの一番の特徴は、炭素数12の飽和脂肪酸、ラウリン酸が、ココナッツオイル100グラムの中で、43グラムを占めることです。

たいていの食用油は、炭素数18の脂肪酸が多いのですが、ココナッツオイルは、いわゆる中鎖脂肪酸と呼ばれる、炭素数がやや少なく、長さが少し短い脂肪酸が全体の70%を占めています。

食品成分 やし油
脂肪酸総量 92.08g
飽和脂肪酸 83.96g
一価不飽和脂肪酸 6.59g
多価不飽和脂肪酸 1.53g
n-3系多価不飽和脂肪酸 0g
n-6系多価不飽和脂肪酸 1.53g
C4:0 酪酸 0mg
C6:0 ヘキサン酸 510mg
C7:0 ヘプタン酸 0mg
C8:0 オクタン酸 7600mg
C10:0 デカン酸 5600mg
C12:0 ラウリン酸 43000mg
C13:0 トリデカン酸 0mg
C14:0 ミリスチン酸 16000mg
C15:0 ペンタデカン酸 35mg
C15:0 ANTペンタデカン酸 0mg
C16:0 パルミチン酸 8500mg
C16:0 ISOパルミチン酸 0mg
C17:0 ヘプタデカン酸 0mg
C17:0 ANTヘプタデカン酸 0mg
C18:0 ステアリン酸 2600mg
C20:0 アラキジン酸 79mg
C22:0 ベヘン酸 0mg
C24:0 リグノセリン酸 0mg
C10:1 デセン酸 0mg
C14:1 ミリストレイン酸 0mg
C15:1 ペンタデセン酸 0mg
C16:1 パルミトレイン酸 0mg
C17:1 ヘプタデセン酸 0mg
C18:1 n-9オレイン酸 6500mg
C18:1 n-7シスバクセン酸 0mg
C20:1 イコセン酸 43mg
C22:1 ドコセン酸 0mg
C24:1 テトラコセン酸 0mg
C16:2 ヘキサデカジエン酸 0mg
C16:3 ヘキサデカトリエン酸 0mg
C16:4 ヘキサデカテトラエン酸 0mg
C18:2 n-6リノール酸 1500mg
C18:3 n-3α-リノレン酸 0mg
C18:3 n-6γ-リノレン酸 0mg
C18:4 n-3オクタデカテトラエン酸 0mg
C20:2 n-6イコサジエン酸 0mg
C20:3 n-6イコサトリエン酸 0mg
C20:4 n-3イコサテトラエン酸 0mg
C20:4 n-6アラキドン酸 0mg
C20:5 n-3イコサペンタエン酸 0mg
C21:5 n-3ヘンイコサペンタエン酸 0mg
C22:2 ドコサジエン酸 0mg
C22:4 n-6ドコサテトラエン酸 0mg
C22:5 n-3ドコサペンタエン酸 0mg
C22:5 n-6ドコサペンタエン酸 0mg
C22:6 n-3ドコサヘキサエン酸 0mg
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)
脂肪酸について「よくわからない」という方は、脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があるという記事に一度出張して戻ってきて下さい。むずかしくありませんから。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある
脂肪酸は、炭化水素鎖にカルボキシ基(-COOH)がついたものです。脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸は直線的に伸びる炭素に水素が必ず結合しています。一方、不飽和脂肪酸は炭素同士の二重結合を持ち、そこから形がいびつになっています。

ANTペンタデカン酸とISOパルミチン酸の「ANT」と「ISO」とは?

脂肪酸の名前の前についている「ANT」と「ISO」は直鎖でない、分枝脂肪酸を意味しています。「ANT」は末端のメチル基の炭素から数えて3番目の炭素にメチル基を持ち、「ISO」は、末端のメチル基の炭素から数えて2番目の炭素にメチル基を持ちます。

ココナッツオイルの脂肪酸組成の表を上からざっと見ると、「ANT」と「ISO」が目につきました。これは何だろう?

ANTは「anteiso-」アンテイソ

ANTは「anteiso-」(アンテイソ)のことで、末端のメチル基の炭素原子から数えて3番目の炭素原子にメチル基を持ちます。

文科省の脂肪酸に説明がありました。

乳類の脂肪酸には分枝脂肪酸として、末端のメチル基の炭素原子から数えて2番目の炭素原子にメチル基を持つイソ酸と、3番目の炭素原子にメチル基を持つアンテイソ酸が認められる。(中略)

乳類の脂肪酸には分枝脂肪酸であるイソ酸とアンテイソ酸が認められている。(本成分表ではそれぞれ「iso」、「ant」と表示した。)

早速、ANTペンタデカン酸とペンタデカン酸を並べて書いてみましょう。2つとも飽和脂肪酸なので、二重結合はありません。

ANTペンタデカン酸は、カルボキシ基(-COOH)の反対側の末端の炭素から3番目の炭素に枝がついてメチル基(CH3)が付いています。

ANTペンタデカン酸

ISOはイソ

ISOは、末端のメチル基の炭素原子から数えて2番目の炭素原子にメチル基を持ちます。

次に、ISOパルミチン酸とパルミチン酸を並べて書きましょう。

ISOパルミチン酸は、カルボキシ基(-COOH)の反対側の末端の炭素から2番目の炭素に枝がついてメチル基(CH3)が付いています。

イソパルミチン酸

NOTE

ここ数年、からだによい油はなんとなく「オメガ3」だと刷り込まれていますが、ココナッツオイルは、脂肪酸の90%以上が飽和脂肪酸の油です。また、オメガ3の脂肪酸は0(ゼロ)なので、オメガ3の油がほしいと思っている方は、別な油を選んで下さい。

オーガニックかどうかの違いは、脂肪酸には関係ありません。ココナッツからとれる油にはこのような性質があると思って下さい。

ココナッツオイルについて、もっと詳しく知りたい方は、ココナッツオイルはヤシ油について調べれば分かるよをご覧下さい。

ココナッツオイルはヤシ油について調べれば分かるよ
ココナッツオイルは、ヤシ油のことです。炭素数12の飽和脂肪酸ラウリン酸が主成分です。次に多いのは炭素数14の飽和脂肪酸ミリスチン酸です。酸化しにくく保存性はよいと思いますが、コレステロール値を気にしている人は、少し注意が必要かもしれません。...

また、飽和脂肪酸がコレステロールを上げるのはなぜ?という記事を書いた時に知ったのですが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸にコレステロール値を上げる作用があるそうなので、若い人はともかく、ある程度の年齢の方は、そういう性質があると知っておいた方がよいかもしれません。

飽和脂肪酸がコレステロールを上げるのはなぜ?
飽和脂肪酸のうち、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸にコレステロール値を上げる作用があり、特にラウリン酸とミリスチン酸はそれが大きいです。原因は、肝臓でのLDL受容体活性が抑制されるから。ステアリン酸は速やかにオレイン酸に転換されるので影響はほとんどないそうです。

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

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