亜麻の種子には毒がある?

生の亜麻の実にはシアン化合物としてリナマリンが含まれていますが、搾油前の加熱でほとんど壊れてしまいます。そして亜麻仁油の中には含まれません。輸入品の亜麻の実はシアン化合物の濃度が10ppmを超えないように管理されています。

亜麻仁

亜麻仁油は、亜麻の実を搾った油です。

何年か前だったか、亜麻仁油は問題ないが、亜麻の実には毒があるんだなんて聞いたことがありました。ネットで調べてみたら案外調べにくかったのでまとめておきます。

結論は、先に書いておきますが、気にするほどのことではないということです。

リナマリンが含まれている

まず発見したのは、厚生省(当時)の2000(平成12)年3月31日の文書、シアン化合物を含有する亜麻の実の取扱いについてです。

パンの材料として輸入した亜麻の実が問題になったようです。

シアンを検出した亜麻の実の取扱

問 標記の輸入食品は、亜麻の実に安定化と防腐を目的としてビタミンB6、ビタミンEを加え、これを焼いたものであり、輸入者の経営する店舗にて製パン用原料として用いられ、約四%の割合で当該品を混合しパン生地を作り、パンを製造するものである。

当該品について、シアンの検査を指導したところ、シアンイオンとして一三五ppm(ピリジン・ピラゾロン法による。)検出したが、当該品は天然にシアン配糖体を含有することから、食品衛生法第四条但書の規定による人の健康を損なうがないと認められる場合に該当するか否か疑義が生じた。

当該品については、その使用方法により食品としてのシアン含有量は減少する。また、直接消費者に販売されるものではないことから、亜麻の実からのシアン摂取量のコントロールが可能であると思慮する。

よって、前記製法により製造業者においてパンを製造することを条件に、当該品の販売等を認めても差し支えないと思慮する。

(成田空港検疫所食品監視課)(中略)

(参考)

1 亜麻の実については、シアン化合物として、シアン配糖体であるリナマリンが含まれていることが知られている。

こうした、天然に有毒な又は有害な物質が含まれる食品については、その程度又は処理により一般に人の健康を害う虞がないと認められる場合、食品衛生法第4条の規定に違反しない食品であるとされている。(後略)

「虞」は「おそれ」と読みます。

リナマリンはこのような構造式です。(C三N)部分がシアンです。六角形はグルコース(ブドウ糖)です。

リナマリン

加熱することでほとんど破壊される

亜麻仁油を搾る時は、搾油しやすいように数十度まで加熱されますが、それでほとんど壊れてしまうようです。

リナマリンについて、農研機構のサイトにあった記事、アマにこのように書かれていました。

アマの種子にはリナマリン(linamarin)という青酸配糖体が含まれています。

アマの種子から油を採った粕(アマニ粕)は飼料として利用されていますが、青酸配糖体は採油過程の加熱でほとんど破壊されるので、アマニ粕中の含量は低いといわれています。

10ppmを超えないようにする

さらに、2018(平成30)年6月14日の厚労省の文書、シアン化合物を含有する食品の取扱いについてではこのように書かれています。

1.天然にシアン化合物を含有することが知られている以下の食品及びその加工品について、自主検査の実施等により、シアン化合物の濃度が10ppmを超えないように適切に管理するよう製造・販売業者を指導すること。

なお、10ppmを超えてシアン化合物が検出された場合は、原則として、食品衛生法第6条第2号に該当するものとして措置すること。

<自主検査の対象食品>

亜麻の実、杏子の種子、梅の種子、ビターアーモンド、キャッサバ、キャッサバの葉、びわの種子

2.原料から10ppmを超えてシアン化合物が検出された場合であっても、調理・加工等により、最終製品においてシアン化合物の含有量が10ppmを下回る場合は、食品衛生法第6条第2号に該当しないものとして取り扱うこと。

3.葉や種子の破砕片をティーバッグに入れた食品で、お湯等で抽出して飲むものについては、ティーバッグの内容物から10ppmを超えてシアン化合物が検出された場合でも、抽出液で10ppm超えていない場合は、直ちに食品衛生法第6条第2号に該当するものとはしないこと。

亜麻の実の他、杏子、梅、ビターアーモンド、びわの種は毒があるとよく知られています。

上の文章中、2.と3.を読むと10ppmという数字は、基準としてかなり厳しい数字、つまり、体には安全な数字だとわかります。

食品衛生法第6条第2号

さらに、食品衛生法第6条第2号を調べてみました。一言でいえば、販売してはならないということです。

第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

二 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。(出典

亜麻仁油は心配ない

さらに、各検疫所あての平成29年11月6日の文書シアン化合物を含有する食品の取扱いについてを読むと、油は心配ないことがわかります。念のためラインマーカーで引いておきました。

搾油用原料として輸入され、国内において油に加工されるなど、最終製品中にシアン化合物が検出されないことが明らかな場合にあっては、1の検査を要しないものとすること。

ドイツでは1人年間1kg消費

また、日本アマニ協会のサイトにあった、アマニ Q&Aに回答が掲載されていました。これを読むと、心配がないことがわかります。

17.アマニにはシアン(青酸物)が入っているが大丈夫なのですか?

一部の植物は生体防御のために(動物に食べられないように)中毒成分を分泌する場合があり、アマニはシアン(青酸物)を含んでいます。

シアン(青酸物)は生梅、タケノコ、ピスタチオやアーモンドなどのナッツ類、タロイモ(キャッサバ)にも含まれています。

欧米ではアマニは食経験が長く、シリアルやパンに添加して日常的に食べられていますが、シアン(青酸物)による腹痛等の中毒の報告はありません。ドイツでは1人年間1kgも消費しています。(日本人のゴマ消費量とほぼ同じ量です。)

アマニを輸入する際にはシアン(青酸物)含有量を測定し、毎回厚生労働省に報告しています。

アマニの輸入にあたり、厚生労働省および出先機関の東京検疫所に資料提出、輸入可否について指導を仰ぎ、食品としての輸入に問題がないことを確認しています。従って日本国内で流通しているアマニについては安全性が確認されており問題ありません。

NOTE

普段、種の毒についてあまり考えることがありません。子供の頃から知っているのは、青梅くらいでした。しかし、気をつけていると、種には結構毒があることがわかります。

これから発芽しようとしているのに、根こそぎ食べられては絶滅してしまいますから、自衛手段を持っているのでしょう。

アーモンドのシアンのことは、エドガー・ケイシーの本を読んで知りました。アーモンドについては、アーモンドの効果は肌がきれいになることと抗老化への期待かなという記事を書いています。

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