オメガ3の脂肪酸は、成人男女とも1日2g程度摂れば目安量を満たします。えごま油なら4g、体積で表すと約4.4mlです。小さじ1杯でお釣りが来ます。まぐろの刺身なら100g食べると十分です。オメガ3の脂肪酸には特有の働きがあり、欠乏すると皮膚炎や成長障害が起こります。しかし、欠乏症を防ぐ量はとても少ないです。
1日にどのくらい摂ればよいか
成人男性は、2.0~2.4g/日、成人女性は、1.6~2.0g/日摂っていれば不足することはありません。
オメガ3の脂肪酸は必須脂肪酸で、必ず摂らなければいけません。日本人の食事摂取基準(2015年版)では、目安量が決められていました。
オメガ3脂肪酸が欠乏すると皮膚炎や成長障害が起こることが分かっていますが、オメガ3の脂肪酸のうちどの脂肪酸が作用するのか分からないために目安量となっているようです。
目安量とは
目安量はこのような定義です。
十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安量」(adequate intake:AI)を設定した。
一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。(出典)
では、栄養の話でよく出てくる推定平均必要量と推奨量にはどのような意味があるのでしょう。
- 推定平均必要量・・・摂取不足の回避を目的として、半数の人が必要量を満たす量である。
- 推奨量・・・推定平均必要量を補助し、ほとんどの人が充足している量である。
1日にどのくらい摂っていた方がよいのか見てみましょう。
成人男性は、2.0~2.4g/日、成人女性は、1.6~2.0g/日摂っていれば不足しないということです。
このグラム数は、油そのものではありません。食用油はオメガ3脂肪酸そのものではないからです。
性 別 | 男 性 | 女 性 |
年齢等 | 目安量 | 目安量 |
0~5(月) | 0.9 | 0.9 |
6~11(月) | 0.8 | 0.8 |
1~2(歳) | 0.7 | 0.8 |
3~5(歳) | 1.3 | 1.1 |
6~7(歳) | 1.4 | 1.3 |
8~9(歳) | 1.7 | 1.4 |
10~11(歳) | 1.7 | 1.5 |
12~14(歳) | 2.1 | 1.8 |
15~17(歳) | 2.3 | 1.7 |
18~29(歳) | 2.0 | 1.6 |
30~49(歳) | 2.1 | 1.6 |
50~69(歳) | 2.4 | 2.0 |
70 以上(歳) | 2.2 | 1.9 |
妊 婦 | 1.8 | |
授乳婦 | 1.8 |
実際のオメガ3の油はどのくらい摂ればよいか
2.0gのオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)を摂るために、えごま油を4.0g、体積で表すなら約4.4ml必要になります。小さじ1杯が5mlです。
オメガ3の脂肪酸を摂るといっても油は全てがオメガ3の脂肪酸ではありません。DHAやEPAは魚に含まれていますが、魚油は売っていませんので、切り身で考えます。
食用油の場合
普段、調理に使うオメガ3脂肪酸の多い油は、植物油です。オメガ3の油は5種類あるを見ていただくと、油の種類とオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸の比率を見ていただけます。
だいたい、油の重量の50%がα-リノレン酸です。
また、油は水に比べて比重が小さいので、同じグラム数なら油の方が体積が大きくなります。油の比重は、食用植物油脂の日本農林規格で知ることができます。
だいたい、比重は、0.9です。
いま、2.0gのオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)を摂るために、えごま油をどのくらい摂ればよいか、これらをもとに計算してみましょう。
重量なら2倍
もし、キッチンはかりをお持ちなら、2.0gの2倍、4.0gのえごま油を摂ればよいです。えごま油4.0gの50%がα-リノレン酸です。
体積なら10/9倍
体積の場合は比重(0.9)を考慮して計算する必要があります。
4.0gのえごま油は、比重が0.9ですから体積は10/9倍する必要があります。
4.0×10/9=4.44・・・約4.4mlスプーンに入れて摂ればよいことになります。
魚の場合
魚の場合は身を食べるので細かく計算はできません。以前、魚をたべるとどのくらいDHAとEPAがとれるかなという記事を書いて、100gあたりに含まれるDHAとEPAの量を調べました。
簡単に書くと、マグロの刺身を100g食べると、オメガ3の脂肪酸は十分に摂れます。
生100グラム | EPA(mg) | DHA(mg) |
クロマグロ | 320 | 3200 |
ミナミマグロ | 320 | 2700 |
オメガ3脂肪酸の欠乏症を解消する量
調べているうちに見つけたn-3系多価不飽和脂肪酸の生理的有効性と栄養学的側面からみた安全性評価では、「2.n-3系脂肪酸の必須脂肪酸(EFA)としての最小必要量」に、α-リノレン酸と、EPAとDHAの1日の必要量が分けて書かれていました。
最小必要量は、α-リノレン酸は1g / 日、EPAとDHAは合わせて400mg / 日と考えておく
EPAとDHAを合わせた量よりも、α-リノレン酸の方が多かったのが意外でした。
EFAとしてのn-3系脂肪酸の1日当たりの最小必要量は,ヒトでの欠乏症の治癒,すなわち,欠乏に起因する,主として神経症状及び皮膚病変の治癒から計算されているが,大人と子どもで異なる。(中略)
大人では,α-リノレン酸として1g/日程度,長鎖のn-3系脂肪酸として400mg/日程度となる。なお,第六次改定日本人の栄養所要量では,α-リノレン酸は摂取エネルギー量の0.5~1.0%,長鎖n-3系脂肪酸では,菜食主義者もいることから最小必要量は決められないとしている。
NATO Advanced Research Workshopでの推奨量は,乳児ではDHAを11mg/kg/日,大人ではα-リノレン酸は800~1,100mg/日,EPA+DHAでは300~400mg/日とされている。
EFAとは必須脂肪酸(Essential Fatty Acid)のことです。先に書いた日本人の食事摂取基準(2015年版)の目安量と比較すると、目安量の方が、ゆるやかにやや多めの基準に書かれています。
私はα-リノレン酸よりもEPAやDHAの方が多く必要なのかと思っていたのですが、α-リノレン酸の方が多く必要でした。
そして、魚をよく食べる日本人は、EPAやDHAが欠乏することはないだろうなということもわかりました。
NOTE
オメガ3の脂肪酸1日の目安量は、成人男性は、2.0~2.4g/日、成人女性は、1.6~2.0g/日です。「オメガ3の油が必要だ」といわれる割に、必要量はそれほど多くない感じがします。
特に、オメガ3欠乏症を解消するための量はとても少ない。EPAとDHAは合わせて400mg /日程度ですから、サバ缶が大人気で、売り切れて値上げされたことを考えると、日本人にこれらの脂肪酸が不足することはまず考えられません。
逆に摂りすぎのことを考えた方がよさそうです。
ここ10年くらいの油の話題について、オメガ6リノール酸の摂りすぎがもともとの問題であるなら、毎日摂る油の量を意識して減らすことがまず必要かなと思いました。