オメガ3についてこれから読んでいただく記事について概略を書きました。目次のタイトルだけでは記事のつながりがわからないかもしれないと思い、最初にこのページをつくりました。
まずこれを読んでいただければ、オメガ3について「ふむふむ」とわかっていただけるのではないかと思います。
オメガ3は脂肪酸のことである
オメガ3は油(脂肪)を構成する脂肪酸の種類の一つです。オメガ6の脂肪酸とともに必須脂肪酸といわれ、必ず食べ物から摂らなければならない脂肪酸です。知らないとなにかむずかしげに聞こえますが、オメガ3は、ある構造のことを指しています。
どんな構造なのか
「オメガ3」の意味は、脂肪酸のオメガ端から3番目に炭素同士の二重結合があるということです。オメガ端とは、カルボキシ基(-COOH)の反対側の端のことです。
脂肪酸の構造が分かれば簡単に理解できます。
オメガ3脂肪酸にはいくつか種類がありますが、α-リノレン酸、EPA、DHAを覚えておきましょう。
α-リノレン酸は体の中でEPA、DHAに変換される
植物油に含まれているオメガ3脂肪酸はα-リノレン酸です。α-リノレン酸は体の中で変換され、EPA、DHAに変わっていきます。具体的には、炭素数が増えて、炭素の二重結合が増えます。
α-リノレン酸は、オメガ6のリノール酸と同じ酵素によって変換されます。この記事を読んでいただくと、リノール酸とバランスを取るためにα-リノレン酸を摂る必要があるといわれることが理解できるようになります。
ところがその変換率は低い
α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される比率は15%程度だと思っていたのですが、実際に自分で調べていくと、よい条件下でもEPAに転換されるのが6%、DHAはせいぜい4%程度であることがわかりました。
もし、EPAやDHAが自分に必要だと思ったら、魚を食べるのが一番よい方法です。
魚にとってもEPAやDHAは必須脂肪酸である
魚(特に青魚)にはEPAとDHAが多く含まれています。私は最初、魚がEPAとDHAを自分で合成しているのだと思っていました。ところが、海水魚は、合成する能力がないのだそうです。(淡水魚は、コケなどからα-リノレン酸を摂り、自分で合成する)
魚に豊富に含まれるEPAやDHAは、食べているエサ由来でした。魚にとって、いや、脊椎動物にとってオメガ3(とオメガ6)の脂肪酸は、必須脂肪酸です。EPAやDHAは、ラビリンチュラ類という微生物が作ります。
オメガ3の油、種類は少ない
オメガ3の調理用油は、α-リノレン酸がたくさん含まれている油です。手に入る油は5種類あります。
オメガ3の油は5種類ある
よく知られているのは、えごま油と亜麻仁油です。それ以外にスーパーの棚に普通に並んでいる油にはどのくらいα-リノレン酸が含まれているのか調べました。ほぼ、ありません。
オメガ3の油の種類は少ないことがわかりました。
オメガ3の脂肪酸は1日どのくらい必要なのか?
必須脂肪酸は食べ物から必ずとらなければいけないものです。1日どのくらい必要なのか調べました。だいたい2gが目安でした。しかし、欠乏症を防ぐだけならごく少量でよいみたいです。
こういうことを知ると、何となく今の多く摂ればよいという考え方は間違っているように感じます。
なぜオメガ3の脂肪酸は体内で合成されず必須脂肪酸になるのか?
ところで、なぜオメガ3の脂肪酸は体内で合成されないのかわかりますか?
動物は、脂肪酸をカルボキシ基(-COOH)から数えて9番目の炭素までは二重結合にすることはできますが、それよりも先の炭素を二重結合にすることはできません。その酵素を持っていないのです。
オメガ3が必須脂肪酸になったのは1980年頃
私が子供の頃、テレビCMで「リノール酸」ということばを知りました。油やマーガリンのCMです。1970年代のことです。しかし、α-リノレン酸を知ったのは、つい最近です。
調べてみると、リノール酸が必須脂肪酸になったのは1930年頃でしたが、オメガ3の脂肪酸が必須脂肪酸になったのは、50年後、1980年頃のことです。
なぜ50年も差があるのか?歴史を紐解いてみました。
地名に入っている「荏」はえごま(荏胡麻)と関係がある
えごまのことを知った時、亜麻仁と同じように日本にはもともとない外来種かと思っていました。ところが、調べてみると、えごまは荏胡麻と書き、荏が地名に入っている土地では、昔、荏胡麻が作られていたと知りました。
しかも、荏胡麻は、縄文時代から使われていて、平安時代からは、明かり用の燈油として使われていたのだそうです。
亜麻の実は加熱しないと有毒
亜麻仁油をしぼる、亜麻の実には毒があると聞いたことがあり調べました。
生の亜麻の実にはシアン化合物としてリナマリンが含まれていますが、搾油前の加熱でほとんど壊れてしまいます。杏子の種子、梅の種子、ビターアーモンドにも含まれているタイプのものです。
食品の中にどのくらいオメガ3の脂肪酸があるか調べた
いろいろな食品の中にどのくらいオメガ3の脂肪酸が含まれているか。オメガ3に興味を持ったときにだれでもまず思うことです。
記事数が多くなったので、カテゴリーをさらに、農産物、水産物、畜産物、加工品に分けました。
オメガ3の酸化について
亜麻仁油の酸化を抑える保存方法、アマニ油マヨネーズからマヨネーズの酸化防止対策を知ること、オメガ3の油の加熱についてビタミンEとビタミンCを添加してあるものは加熱調理に耐えられること。
揚げ物をしていると「油酔い」する原因は、α-リノレン酸からできたアクロレイン。オメガ3の脂肪酸が先に酸化されることで細胞自体を守る話。そして、ちょっと変わっていますが、森や山の中に行った時に感じる青葉のにおいは、α-リノレン酸が酸化したアルデヒドのにおいです。
オメガ3の効果について
オメガ3の効果について以下の記事を書きました。
オメガ3はうつに効果がある。魚を食べていると生活習慣病が予防できる。オリーブ油とえごま油を混ぜると総コレステロールと中性脂肪を下げる効果がありそうだ。EPA・DHA、α-リノレン酸は優先的にエネルギーに変わる。脂肪を燃焼させるならオメガ3をとってオメガ6を制限して運動すること。えごま油と魚油を比べると魚油の方が太りにくい。魚油は体重・体脂肪を増加させない。DHAの効果について。EPAの効果について。
オメガ3の過剰摂取
EPAやDHAを1日10g以上摂取すると出血時間が延びます。もっとも酸化されやすいDHAは、神経や心筋細胞など、細胞を再生することができない「一生もの」の細胞に多く含まれ、過酸化脂質になりにくく、できた過酸化脂質は速やかに体外に排出される仕組みがあります。
NOTE
私がこれらの記事を書いて印象に残ったのは、魚にとってもオメガ3の脂肪酸は自分でつくることができない必須脂肪酸だということと、1930年にリノール酸が必須脂肪酸といわれたのに、α-リノレン酸が必須脂肪酸になるまでその後50年かかった話です。