魚にEPAやDHAが多いがこれらは魚にとっても必須脂肪酸だった

魚に特別EPAやDHAが多いのは、自分で合成しているのかと思っていましたが、ラビリンチュラ類という微生物がつくりそれをエサにしているからだとわかりました。必須脂肪酸は魚にとっても必須脂肪酸でした。そればかりか、脊椎動物にとって必須脂肪酸なのです。体にたまる脂肪は食べたものに影響されています。

まぐろ

魚にEPAとDHAが多いのは魚が自分で合成しているのかと思った

青魚にはオメガ3の脂肪酸EPAやDHAが多いことがよく知られています。そのおかげでここ数年サバ缶が大人気になり、品薄になり、値段がすごく上がりました。

また、魚由来のサプリメントでDHAとかEPAというのが20年くらい前からあります。DHAは頭がよくなるとかぼけない成分といわれ、EPAは血液をサラサラにする成分という広告を見かけます。

普段食べているもので魚以外にEPAやDHAを豊富に含んでいるものはありません。あまり疑問に思わなければ、魚がEPAやDHAを自分で合成して脂肪に蓄えているんだろうと思うのが「フツー」です。

私もそう思っていました。

魚は微生物がつくったDHAを食べて体に溜め込んでいた

ところが、ウイキペディアの魚介類の脂肪酸を改めて読むと、こんな風に書かれていました。

魚介類には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω-3脂肪酸である高度不飽和脂肪酸が多く含まれる。

魚介類に含まれるDHAの多くは、ラビリンチュラ類の1属である シゾキトリウム(Schizochytrium)属などのような海産の微生物によって生産されたものが、食物連鎖の過程で魚の体内に濃縮されたものである。

あれっ、これは食べ物として、EPAやDHAを摂っているということではないか?

必須脂肪酸は魚にとっても「必須脂肪酸」であった

もう少し調べてみると、魚類における必須脂肪酸要求の多様性(化学と生物 Vol.29, No.9)という論文が出て来ました。

冒頭にこのように書かれています。n-3系列とはオメガ3のことです。オメガ3は、魚類にとって必須脂肪酸です。

魚類においてn-3系列酸の必須性を確定的にしたのはCastellらで,ニジマスを用いて必須脂肪酸(EFA)の欠乏症とリノレン酸(LNA)の要求量を1972年にまとめて発表した.

この年はNicolaidesとWoodallがマスノスケ稚魚のEFA欠乏症について報告したちょうど10年後に当たる.

これで魚が必須脂肪酸をエサから摂っていることがわかりました。

それどころか、脊椎動物にとって「必須」脂肪酸である

さらに、水産動物の長鎖多価不飽和脂肪酸生合成酵素の多様性とその利用を読むと、脊椎動物にとって、必須脂肪酸が「必須脂肪酸」であることがわかります。

文中の記号を下のように読みかえて読んでみて下さい。

LA:リノール酸
ALA:α-リノレン酸
ωx 不飽和化酵素:脂肪酸のオメガ端からx番目の炭素を二重結合にする酵素

一般に,ほぼ全ての生物がパルミチン酸やステアリン酸といった二重結合を持たない飽和脂肪酸(Saturated Fatty Acid, SFA)を体内でまず生合成し,そこに最初の二重結合を導入することで,例えばステアリン酸からはオレイン酸といった一価不飽和脂肪酸(Mono Unsaturated Fatty Acid, MUFA)を生合成することが可能である。

ここから先の経路が大きく分けて動物と植物で異なると言われており,植物ではこの後さらに ωx 不飽和化酵素によってオレイン酸に二重結合を導入し LA やALA を生合成可能であるのに対し,ほとんどの動物はこの ωx 不飽和化酵素を保持しないが故に,LA やALA を体内で生合成することができないと言われている。

この論文では、(引用しませんが)無脊椎動物の一部が植物と同じようにωx 不飽和化酵素を持っていることを明らかにしていていました。

脊椎動物にとって必須脂肪酸は必須脂肪酸です。

食べたエサによって体にたまる脂肪の脂肪酸が変わる

脂肪は消化されて、脂肪酸とモノグリセリド(グリセリンに脂肪酸が1本ついたもの)に分解されますが、体の中でまた脂肪に戻ります。

つまり、魚がEPAやDHAを含む脂肪を持つ微生物やその微生物を食べた小魚をエサとして食べると、魚の体内で、EPAやDHAを含んだ脂肪として蓄えられるのです。

魚と食肉の脂肪酸を比較してみる

魚と食肉に含まれる必須脂肪酸を比較すれば、食べるエサによって違いができることがわかります。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)を見て、鶏肉、豚肉、牛肉に含まれる必須脂肪酸を調べてみました。魚と比較してみましょう。

食品(生)100g中の主な脂肪酸mg
名前 18:2
リノール酸
 18:3
α-リノレン酸
20:4
アラキドン酸
20:5
エイコサ
ペンタエン酸
(EPA)
22:6
ドコサ
ヘキサエン酸
(DHA)
マアジ 24 13 47 81 440
マイワシ 140 94 160 260 1300
クロマグロ(脂身) 340 200 180 320 3200
若鶏肉むね皮つき生 850 76 35 5 16
若鶏肉もも皮つき生 1600 73 79 1 7
豚かたロース脂身つき生 1800 83 63 0 11
豚ばら脂身つき生 3000 160 75 0 0
和牛肉かたロース脂身
つき生
920 45 23 0 0
乳用牛肉ばら脂身つき生 850 33 36 0 0
日本食品標準成分表2015年版(七訂)による

魚にはたくさん含まれているEPAやDHAが、鶏肉や、豚肉、牛肉には全く入っていないというのがよく分かります。そして、食肉にはリノール酸が多い。

家畜のエサは穀物が多い

テレビで家畜を飼育するところを時々見ます。与えられている飼料はもちろん、計算されて設計されていますが、トウモロコシや大豆やぬかなど穀物が多いです。

穀物にはリノール酸が多く含まれているのでそれが食肉の脂肪酸組成に反映されています。

蓄えられた脂肪は、食べ物(エサ)に影響されています。

NOTE

魚のEPAやDHAは魚が自分で合成しているものだとばかり思っていました。

しかし、調べてみると、もともとは微生物が作っているものでした。魚は、微生物や自分より小さい小魚を食べてEPAやDHAを体の中にため込んでいるのです。

そし、必須脂肪酸は魚にとっても必須脂肪酸であることを知り、少々驚きました。さらに、必須脂肪酸は脊椎動物にとって必須脂肪酸であることもわかりました。

つまり、自分の体についている脂肪は、食べものの影響を受けているのです。ためしに畜肉の脂肪について脂肪酸を調べてみると、リノール酸がとても多い。これは、与えるエサに穀物が多いからです。

うーん、しかし、EPAやDHAが魚にとって必須脂肪酸だったとは!知らなかった。

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