えごまはゴマではなくシソ科の植物です。縄文時代から使われていて、自生地や栽培している土地には、地名に「荏」が入っているそうです。都内でも何ヶ所もあります。
えごまは、ゴマではない
亜麻仁油は、なんとなく油絵の具と関係があったような記憶がありましたが、えごま油は全く知らなかったので、ごまの一種だと思っていました。しかし、2年前からえごま油を自分で買うようになりましたから大した変わりようです。
私は亜麻仁油よりえごま油の方がくせがなくて好きです。
「荏」という漢字は地名になっている
ところで、えごまを漢字にすると、荏胡麻と書きます。この「荏」という漢字、見たことはありませんか?私はよく多摩川沿いのサイクリングロードを羽田に向かって走っていますが、キャノン本社の近くに、日体荏原高校の野球部のグラウンドがあるのです。バックネットに日体荏原高校と入っているのですぐに思い出しました。また、東急大井町線には荏原駅があり、東急池上線には荏原中延駅があります。また、東急田園都市線の江田駅があるのは、横浜市青葉区荏田町です。
どうやらこの「荏」という漢字、荏胡麻が自生していたり栽培していたところにつけられるようです。
シソ科の植物
えごまはシソ科の植物で、ゴマとは違います。(ゴマはゴマ科)シソの葉っぱがそうであるように、えごまの葉っぱも香りがあり、刺身のつまにも使われるとか。つい先日、いつも買い物に行っている市場で、えごまの葉っぱを売っていたのですが、つい買いそびれてしまいました。今度見かけたら買ってみます。
えごま油は、日本では、なたね油よりも歴史が古いそうです。えごま油は乾性油。空気中の酸素で酸化され固まります。しかし、なたね油は不乾性油なので固まりません。油としてどちらが使いやすいかといえばなたねです。しかし、乾性油はその特性ゆえ、防水性を持たせる塗料として油紙、番傘などに用いられてきました。なるほどねえ。
後年、子孫が健康によいからとまさか競い合って買うような油になるとは、ご先祖さまは誰も思っていなかったでしょう。えごまの漢字が地名になっているくらいだから、江戸時代あたりから栽培されていたのかなと思いました。東京の街並みは江戸時代の影響がかなり大きいですから。
縄文時代には、すでにえごまがあった
ところが、「エゴマ―つくり方・生かし方」という本を読むと、えごまは遺跡から発見され、縄文時代前期にはすでに日本に存在していたことが明らかになっているそうです。もちろん、食べものとしてです。また、縄文時代にはすでに漆器があり、漆器のつや出しのために漆にえごま油を混ぜる習慣がすでにあったそうです。搾油もされていたのです。玉川学園のサイトにも紹介されていました。
しかし、日本人が米を食べ始めるより前にえごまがあったとは。考えてもみませんでした。
えごま油は、平安時代から灯油(ともしびあぶら)として使われるようになりました。明かりの油です。以後、江戸時代にそれがなたね油に変わるまで使われました。食用としてはゴマやピーナッツに押されて生産が激減しました。
当時のなたねは、暖地の稲の裏作として盛んに生産されたようです。また、寒冷地用の品種も導入されて寒い地方でも作られるようになりました。なぜ、えごまはなたねに駆逐されたのか?こういう時の理由は本当に単純です。なたねを作った方が値段がよかったからに決まっています。
えごま栽培はやさしいらしい
えごまは主に、東北地方をはじめとする寒冷地、山あいの寒冷地で栽培されてきました。融点が-11℃と低いω3(オメガ3)のαリノレン酸が50%も占めているわけが分かりますね。そうでないと気温が低くなったら脂肪が固まってしまいます。
魚も一緒でした。水温の低い所に生息する魚の脂肪は、ω3(オメガ3)の脂肪酸が多いのです。もちろん、それはえさになる藻や微生物がω3(オメガ3)の脂肪酸を生産しているからでした。
私はえごまを育てたことはありませんが、シソの強さは知っています。学生時代、下宿の庭に大家さんが堆肥を作るために生ゴミをためていました。しばらくすると、そこにシソが育って来て、短い間にかなりな勢いで繁茂しました。
同じシソ科のえごまも、耐寒性と耐湿性があるそうです。ちょっとプランターで育ててみようかという気になります。暇人主婦の家庭菜園という素晴らしいブログにはえごま栽培の記事が出ていました。
えごまを栽培する農家さんが増えて、えごま油が買いやすくなるといいなと思います。荏原なんて地名は、えごまだらけだったんでしょうね。えごま油は酸化されやすくて時間が経つと魚くさくなります。酸化防止のためにビタミンCとビタミンEは添加する必要があると思いますが、もともとはくせがなくて、ちょっとコクがあって使いやすい油だと思います。
あなたもプランターでちょっと作ってみますか?シソ感覚で刺身のつまになるでしょう。種は普通に手に入ります。
参考文献:「エゴマ~つくり方・生かし方~」(古澤典夫監修 日本エゴマの会編 創森社 2000)
NOTE
えごまが縄文時代から使われていて、「荏」は、荏胡麻が自生していたり栽培していたところに地名として使われています。結構ありますよ。
えごまはシソ科の植物です。たまに八百屋さんにえごまの葉っぱが並んでいることがありますが、確かにシソの葉っぱに似ています。
最近は、えごま人気のため、国産のえごま油が販売されるようになりました。