オメガ3の脂肪酸とオメガ6の脂肪酸はなぜ必須脂肪酸なのか

動物は、脂肪酸をカルボキシ基(-COOH)から数えて9番目の炭素までは二重結合にすることはできますが、それよりも先の炭素を二重結合にすることはできません。そのため、それより先に二重結合があるオメガ6やオメガ3の脂肪酸は食べものから摂らなくてはならないのです。

α-リノレン酸

この記事は、飽和脂肪酸は9番目の炭素から不飽和化されるの続きです。もし、よろしければ、先に読んでいただくと分かりやすいと思います。

オメガ9のオレイン酸は、炭素数18の飽和脂肪酸であるステアリン酸が不飽和化されることによってつくられます。オレイン酸は体内でつくられることはよく知られていますが、どのようにつくられるのかご存知ですか?

なぜオメガ3とオメガ6の脂肪酸は体の中でつくることができないのか?まず、体内で脂肪酸を合成する仕組みを知りましょう。

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体内で脂肪酸を合成する

生きていくためのエネルギーをつくるために、糖も、脂肪も、タンパク質もエネルギー源となることができます。

ミトコンドリアのクエン酸回路(TCA回路)に入るために、それぞれ、アセチルCoAという物質まで分解されます。

アセチルCoAとは、体の中にある酢酸のことです。炭素数は2個。このことは、アセチルCoAとは酢酸のことかに詳しく書きました。

この記事では、アセチルCoAは、酢酸を補酵素Aが運搬していく形であり、アセチルCoAの本質は、酢酸であることについて書きます。私と同じように...

アセチルCoA

パルミチン酸をつくる

ところが、アセチルCoAは脂肪酸を合成するときの材料にもなります。単純にいうと、炭素数2個のアセチルCoAをつなげていって炭化水素鎖をつくります。

最終的に炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸をつくります。詳しい話は、ブドウ糖を脂肪酸に変えるに書きました。

光合成は、植物が二酸化炭素と水からブドウ糖を作る仕組みでした。ブドウ糖はエネルギーとしてTCA回路に入って燃やされるのが原則です。 し...

パルミチン酸を材料にして、さらに炭素をつなげたり、二重結合をつくって別の脂肪酸をつくります。

ステアリン酸からオレイン酸になる

パルミチン酸は、炭素を2個加えられて、炭素数18のステアリン酸になり、さらにΔ9位を二重結合にされて、オレイン酸になりました。飽和脂肪酸に最初に入る二重結合は、ほぼ全てΔ9位でした。

Δ9デサチュラーゼという酵素が働きます。Δ9位は下図でご確認ください。オメガ(ω)端の反対側、カルボキシ基(-COOH)から数え始めます。

ステアリン酸

ステアリン酸

体の中で脂肪酸を合成する場合はこのような仕組みが働きます。

しかし、体の中には食べもの由来の脂肪酸が入ってきます。もちろん、それもそのまま使われることもあり、長さや二重結合を変換される場合があります。

オメガ3とオメガ6の位置の炭素に二重結合をつくることができない

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版にはこのように書かれていました。

動物の体内で,さらに二重結合が導入されるときはすでに存在している二重結合(たとえばω9,ω6,ω3)とカルボキシ基の間に入り,それぞれω9族,ω6族,ω3族とよばれる3つの系列の脂肪酸を生ずる.

新たにできる炭素の二重結合は、オメガ3、オメガ6、オメガ9それぞれの位置よりもカルボキシ基側に入ると書かれています。

もう少し後ろにもっと親切な解説がありました。

動物は脂肪酸のΔ9位より先に二重結合をつくることができない

ほとんどの動物は,Δ4,Δ5,Δ6,およびΔ9位に二重結合を導入することができる.しかしながら,Δ9位を越えて二重結合を導入することはできない.

このように説明されると分かります。「Δ9位を越えて二重結合を導入することはできない」ということは、オメガ3やオメガ6の位置に二重結合をつくる酵素を持っていないということです。

オメガ3とオメガ6の脂肪酸が必須脂肪酸として、食べものから必ず摂らなければならないというのはこれが理由です。

多価不飽和脂肪酸オメガ9、オメガ6、オメガ3の生合成経路

この本には、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸からスタートしてどのようなものがつくられるのか図が載せられていました。

リノール酸については、以前、リノール酸はアラキドン酸に変換されるという記事で、ドコサペンタエン酸(22:5)までの反応について書きました。

この記事では、リノール酸がアラキドン酸に変換され、さらにドコサペンタエン酸に変換されるまでを順番に説明します。エイコサノイドは炭素数20の脂...

さらに、α-オレイン酸についても、以前、α-リノレン酸からEPA、DHAに変換するまで5つの反応があるという記事で、ドコサヘキサエン酸(22:5)まで変化する記事を書きました。

少し前にリノール酸はアラキドン酸に変換されるでリノール酸からアラキドン酸まで変換されていく順番を書きました。 今度はオメガ3の脂肪酸に...

そこで、ここでは、オレイン酸がどのように変化するかを書いておきましょう。

生合成経路

エロンガーゼ、デサチュラーゼは酵素です。エロンガーゼは長さを伸ばす酵素で、デサチュラーゼは、炭素の二重結合をつくる酵素です。

  • エロンガーゼは、脂肪酸のカルボキシ基(-COOH)側から炭素を2個つけて脂肪酸の長さを伸ばします。
  • Δ6デサチュラーゼは、カルボキシ基(-COOH)から数えて6番目の炭素に二重結合を作ります。
  • Δ5デサチュラーゼは、カルボキシ基(-COOH)から数えて6番目の炭素に二重結合を作ります。
  • Δ4デサチュラーゼは、カルボキシ基(-COOH)から数えて6番目の炭素に二重結合を作ります。

オレイン酸の変化

オレイン酸は2方向に変化します。上の図と照らし合わせて見てください。

一方は、エロンガーゼによって2個ずつ炭素数を増やしていくだけの反応です。もう一方は、二重結合を作ることと2個炭素数を増やすことを交互に行っています。

図中、黄色のラインマーカーを引いたミード酸は、必須脂肪酸が欠乏すると作られます。ウイキペディアにはミード酸について次のように書かれていました。

ヒトや他の哺乳類は必須脂肪酸(EFA)を必要とする。EFA、特にアラキドン酸が欠乏すると、身体はオレイン酸の不飽和化と伸長によってミード酸を作る。そのため、ミード酸はEFA欠乏のインジケーターとなる。

オレイン酸の変化

まとめ

体内で炭素数2個のアセチルCoAから脂肪酸をつくることができます。炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸まで長さを伸ばし、そこから炭素を2個つなげるエロンガーゼと二重結合を作るデサチュラーゼを組み合わせて、いろいろな脂肪酸を作ります。

また、食べものから入ってきた脂肪酸も同じ酵素によって変化させます。

しかし、動物は、カルボキシ基(-COOH)から数えて9番目の炭素を二重結合にすることはできますが、それよりも先の炭素を二重結合にすることはできません。

同じことをオメガ端から考えると、オメガ9の脂肪酸はつくることができますが、オメガ3、オメガ6の脂肪酸はつくることができません。

そのため、必須脂肪酸として、食べものから摂る必要があるのです。

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