リノール酸が問題だと書く前に書いておきたいこと

リノール酸は昔は健康に役立つものでしたが、摂りすぎで今は悪者になっています。その原因は、大豆を始めトウモロコシなど穀物が家畜の餌として大量生産されるようになり、副産物の油が安価に入手できるようになったことではないかと思います。

日本人にとって大豆は大切なタンパク源の一つです。大豆が悪いわけではありません。油を使い過ぎるのが悪いと思います。

大豆

リノール酸は昔とても体によいものだった

今はリノール酸には分が悪い時代です。これから私もリノール酸について書いていこうと思いますが、これまでいろいろな本を読んだりサイトを見たりして感じたことを書いておきたいと思います。

私は50代半ばですが、リノール酸にはよいイメージしかありません。ずっとよいものだと思ってきました。バターとマーガリンを比べるとバターの方がずっと美味しいのですが、マーガリンも慣れれば悪くなかったです。今はトーストをほとんど食べないのでバターもマーガリンも使いません。

サラダ油にも悪いイメージはありません。においや変な風味がなく使いやすくて健康によい油だと思ってずっと使ってきました。

マーガリンやサラダ油にリノール酸が入っているのは、少なくとも私の年代の人たちには「常識」です。

食用油の選択肢が増えたのは1990年代

オリーブオイルなんてしゃれたものを使い始めたのは、1990年以降です。それまでは、油はサラダ油かごま油しか(多分)選択肢がありませんでした。紅花油はやや高級品であったような記憶があります。

円高の影響で輸入食料品がとても安くなった

1990年~1995年頃は、日本はバブル経済崩壊後の時代になりますが、それでも「円」は強く、1994年には、1ドル=100円を突破しました。

どんなことがあったか覚えています。輸入ドイツビールが1缶100円になりました。発泡酒やリキュール類でない、本物のビールですよ。それが缶ジュースと同じ値段でした。

スパゲティがパスタと呼ばれるようになり、当時ちょっとしたブランドだったブイトーニのスパゲティの乾麺は、あっという間に輸入食料品店で買える500g100円くらいの乾麺に駆逐されてしまいました。この頃、輸入食料品店も増えました。

記録を見ると1995年4月19日には、瞬間的に79円25銭を記録したとあります。

この頃からオリーブオイルが当たり前に安く買えるようになりました。オリーブオイルも体によい油ですが、そんなことより、オリーブオイルを引いてニンニクを焼いた味や香りがとてもよかったのです。

安い輸入肉も入ってきましたから、私の食生活もその影響で肉を食べることが多くなったように思います。

食肉の脂肪酸組成はリノール酸が多い

以前、オメガ6リノール酸が多い油と食品ランキングという記事を書きました。調べていると、食肉の脂肪酸組成にリノール酸が多いのがわかりました。肉を食べているとそこそこリノール酸を摂ることになります。

必須脂肪酸のリノール酸は人だけが必要としているわけでなく、すべての家畜に同じように必要です。必須脂肪酸は、体内でつくることができず、食べ物からとらなければいけないので「必須」なのです。

餌にリノール酸が多い

うっかりすると不足してしまうかもしれない必須脂肪酸ですが、食肉の脂肪酸組成でリノール酸が多いのはなぜなのでしょう?

それは、脂肪の消化に原因があります。脂肪は消化酵素リパーゼで分解されても、脂肪酸とモノグリセリドまでしか分解されません。この話は油の構造が分かると血液検査の中性脂肪がわかるよで書きました。

脂肪は、脂肪酸とモノグリセリドに分解された後、体の中に入ってまた脂肪に戻されます。もちろん、燃料としてエネルギーをつくるために燃やされる脂肪もありますが、エネルギーを貯蔵するのも脂肪の役目です。

食肉にリノール酸が多いのは、食べたえさにリノール酸が多く、それがそのまま体脂肪として蓄えられていたのです。

では、なぜえさにリノール酸が多いのでしょうか?

大豆は醤油味噌より家畜の飼料

なぜ含油率が低い大豆から油を搾るのかを書くまで、大豆を栽培しているのは、大豆油を搾るのが主で、大豆粕を家畜のえさにするのがそのおまけだと思っていました。ところが、実際は逆で、家畜の飼育のためにえさとして良質なタンパク源である大豆が必要だったのです。大豆油は副産物です。

食肉にリノール酸が多いのは、大豆粕をえさとして与えられているからではないかと思います。

大豆は日本人にとって、醤油、味噌、豆腐、納豆、など調味料の原料でもあり、タンパク源でもあります。私も小学生の頃、担任の先生に何度も「大豆は畑の肉」と聞かされました。

私は納豆が好きなので、自宅で毎週つくっています。大豆は、日本人にとって貴重なタンパク源でも、世界には、畜産のために必要とされています。

しかも、大豆は栽培するときに根に根粒菌が寄って来て窒素同化をしてくれます。肥料の三要素は、窒素、リン酸、カリですが、その中の窒素を自分で調達してくれるのです。ちなみに窒素は収穫量に一番影響します。

大豆の生産量が増えて大豆油が安価になった

大豆の生産量が増えれば、大豆油の生産量も増えます。そして、生産量が増えれば価格が下がります。使いやすく、においも特徴となる味もなく精製された大豆油は、安価に入手できますから、家庭で使われるサラダ油以外に、飲食店でも食品工場でも使われてきたでしょう。

しかも、リノール酸が豊富だというのは少し前の時代ならとても喜ばれたのです。

しかし、本当は、昔と食生活が変化して肉を昔より食べるようになったこと。油を使った食べものが増えて、それらに安価な大豆油が原料として使われている場合が多いこと。それが原因でリノール酸をたくさんとるようになって、リノール酸とり過ぎによる問題が起きているように思います。

私ももちろん、自分の食生活をリノール酸とり過ぎにならないようにしようと思っています。

しかし、一方で、現在、大豆大生産国になったブラジルに、最初に国策として大豆生産技術を持っていったのは日本だったということは忘れないようにしようと思います。大豆は大切な食品です。

NOTE

必須脂肪酸について調べていると、欠乏症を避けるためには、オメガ6もオメガ3もそれほど量を必要としないことがわかります。

今の時代は、オメガ6のリノール酸摂りすぎが問題になり、拮抗する働きを持つオメガ3のα-リノレン酸を摂るようにいわれます。オメガ3の油をサプリメントのように考える人もいます。

しかし、もともとは、家畜の餌として穀物を大量生産するようになり、副産物のリノール酸をたっぷり含んだ油が、安く手に入るようになったことが、リノール酸とり過ぎのそもそものきっかけかもしれません。大豆油やコーン油はその典型かもしれませんね。

脂肪が好きなのは本能なのだろうか?で書きましたが、油はそれ自体、においも味もほとんどないのに食べものに特別な魅力を与えるのです。日本人なら、野菜の煮物と天ぷらを比べるとわかりやすいです。

料理やお菓子などの食品に、豊富に安価な油を使えるようになったことが毎日食べる食品に占める脂肪の割合を増やし、それがリノール酸とり過ぎになったのではないでしょうか?

そうすると、一番考えなければいけないのは、毎日食べるものから油を意識して減らすことだと思います。

また、この他のリノール酸についての記事は、リノール酸についてをお読み下さい。

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