油の構造を知ろう

油は脂肪と同じものです。油には基本的な構造があります。グリセリンと3本の脂肪酸がエステル結合したものです。脂肪酸は酸性ですが、グリセリンと結合してできた脂肪は中性です。また、グリセリンは実際は立体的であり結合に特徴があります。

バター

油には基本的な形があります。まずそれを理解しましょう。

油の構造はグリセリンと脂肪酸のエステル

油と脂肪は同じものです。また油脂は、油と脂肪の総称です。

詳しくは少し前に書いた、油と脂と脂肪ってどうちがうか分かりますか?をお読みください。

ウイキペディアで脂肪について調べると、このように書いてあります。

油脂(ゆし)とは脂肪酸とグリセリンとのエステルで普通はトリグリセリドの形態を取るもの。(出典

油を簡単に図示するとこのような構造になっています。

脂肪酸

グリセリン

グリセリンは、3価のアルコールです。アルコールとはいっても、お酒を意味するアルコールではありません。飲んでも酔いません。

グリセリンは、化学ではグリセロール (glycerol)と呼ぶ方が正式なようです。しかし、よく聞くグリセリンで行きましょう。

化学においてのアルコール(alcohol)とは、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基 (-OH) で置き換えた物質の総称である。(出典

グリセリンは、下図を見ていただければお分かりになる通り、ヒドロキシ基 (-OH)を3つ持つ3価のアルコールです。グリセリンの構造式はこのようになります。

一方、普段飲むお酒のアルコールは、エタノール(エチルアルコール)です。ヒドロキシ基(-OH)が1個しかありません。

エタノール

脂肪酸は油(脂肪)を構成する部品

脂肪酸は、炭化水素の端にカルボキシ基(−COOH)がついたものです。

上の油の図を見ればお分かりになると思いますが、脂肪酸は脂肪(油)を構成する部品のようなものです。

脂肪と脂肪酸を同じものだと思っている方もいるようですが、図にあるように別ものです。実は私も最初の頃、脂肪と脂肪酸が同じものだと思っていました・・・。

脂肪酸の例として、炭素数16の脂肪酸はパルミチン酸、炭素数18の脂肪酸はステアリン酸の構造式を書いておきます。

パルミチン酸とステアリン酸

のこぎりの歯のようなギザギザは何だ?と思われるでしょう?

炭素(C)に水素(H)が結合したものがつながっているので、それを省略して書いているのです。

脂肪酸と脂肪酸のギザギザについて、脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があるでじっくり説明しています。

ちなみに私が初めて脂肪酸のギザギザ構造式を見た時、意味が分からず調べ方も分からず、解決するまで1ヵ月くらいかかってしまいました。文系の方は知らないのが当たり前です。

エステルとは

エステルはアルコールのヒドロキシル基(-OH)と脂肪酸のカルボキシ基(-COOH)が反応し、水(H2O)を分離して結合してできるものです。

エステルを調べるとこのように書かれていました。

エステル (ester) は、有機酸または無機酸のオキソ酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシル基を含む化合物との縮合反応で得られる化合物である。

単にエステルと呼ぶときはカルボン酸とアルコールから成るカルボン酸エステル (carboxylate ester) を指すことが多く、カルボン酸エステルの特性基 (R−COO−R’) をエステル結合 (ester bond) と呼ぶ事が多い。(出典

油の場合、エステルというのは、脂肪酸のカルボキシ基(−COOH)のH(水素)とグリセリンの(-OH)基が反応して、水(H2O)ができて外れます。(縮合)

この反応のことをいいます。図を見た方が早いですね。さあ、反応図を見てみましょう。

Rってなんだ?

上の図では、脂肪酸のカルボキシ基(−COOH)以外をRとして省略した書き方をしています。しかし、きっとRって何だ?とこだわる方もいらっしゃると思います。

アルキル基はアルカンから水素を1個抜いたものという記事で説明しました。この場合、Rはアルキル基のことです。

アルキル基はアルカンから水素を1個抜いたもの
飽和炭化水素であるアルカンから水素1個を抜いたものがアルキル基です。構造式の一般形の中で「R」と書かれています。この記事は、アルカンの命名法に関連付けて補足するために書いています。アルカンってなんだ?という方は、まずそちらからお読みいただけ

Rは、R1、R2、R3とわざわざ区別できるよう数字がふってあるように、同じものである必要はありません。

つまり、グリセリンにエステルとして結合する3本の脂肪酸は、それぞれ別の脂肪酸でよいのです。

これが基本なのですが、もう少し具体的に書いたものを見たいですね。

油の構造式を実際に書いてみる

では、具体的に油脂の反応を載せましょう。他の記事でも使っていますがココアの油脂、ココアバターの反応です。グリセリンにそれぞれ炭素数と二重結合の数が違う脂肪酸が3本結合します。

オレイン酸は、まだ説明していませんが、オリーブ油の主成分となる脂肪酸です。パルミチン酸とステアリン酸に比べて形が少し歪んでいます。オレイン酸の炭素数は18です。

ココアバターの組成

ココアバターの組成

破線で囲んだ-OHと-Hは結合して水H2Oになり離れます。図中の線の太さの違いや微妙な形の崩れは許してください。うまく作図できなかっただけです。

ココアバターの組成

ココアバターの組成

グリセリンの3つの(-OH)基に対して、3つとも脂肪酸がエステル反応して水を出しながら結合しました。

グリセリンと脂肪酸がエステル反応したものを、グリセリドといいます。グリセリドには種類があります。

グリセリンの3つの(-OH)基に対して、脂肪酸が1つ反応したものは、モノ・グリセリド。
グリセリンの3つの(-OH)基に対して、脂肪酸が2つ反応したものは、・グリセリド。
グリセリンの3つの(-OH)基に対して、脂肪酸が3つ反応したものは、トリ・グリセリド。

油はトリグリセリドです。

脂肪酸は酸性だが脂肪(油)は中性

カルボキシ基(−COOH)は、H+(プロトン)を離して酸性になります。お酢が酸性なのは小学校の家庭科でも習ったと思います。お酢の主成分、酢酸の示性式は、CH3COOHです。

電離

ところが、脂肪酸のカルボキシ基(−COOH)のHは、グリセリンの(-OH)基と反応して、水になったので中性になりました。それで中性脂肪と呼ばれています。

健康診断の中性脂肪

健康診断のシートに書かれている中性脂肪はトリグリセリド、すなわちTGのことでした。血液を流れる脂肪(油)を測定しているのです。

NOTE

油は、グリセリンに脂肪酸が3本エステル結合したものです。

油について理解するとき、脂肪、脂肪酸など似たようなことばが出てきます。私は以前、脂肪と脂肪酸は同じものだと思っていました。

オメガ3、α-リノレン酸の油なんて聞くと、そういう油があるのかと思ってしまいます。α-リノレン酸だけが入っている油があるんだと思っていました。もちろん、そんな油はありません。

まず油の構造を理解すると、脂肪酸は脂肪を構成するものだと分かるので、脂肪と脂肪酸を間違わなくなります。

構造式を見ると、いやな気分になる方も多いと思います。私もそうでした。しかし、しばらくすると慣れて、便利なものだと思うようになります。

慣れると油(脂肪)の構造は、とても簡単だと思うようになります。コレステロールは環構造の脂質なので、もっと面倒くさいです。しかし、こちらもだんだん慣れるようになります。

その他のことは、油について最初に知っておきたいことをお読み下さい。

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