リノール酸とオレイン酸を比べてみました。いま、リノール酸は評判が悪くて、オレイン酸が豊富に入っているオリーブ油を使う人が多いです。炭素数18で、構造に大した違いはないのです。二重結合の数が一つ多いのがリノール酸です。
リノール酸とオレイン酸どっちがよい?
子どもの質問みたいですが、油について調べ始めた頃、よくこんなことを考えていました。
今は油を使うなら、リノール酸が多い油は避けて、オレイン酸が多い油を使った方がよいと思います。リノール酸はたとえばサラダ油に多く含まれ、オレイン酸はオリーブ油に多く含まれています。
いまはリノール酸をとり過ぎない方がよい時代
記事を書き始めた2015年はまだそれほどでもありませんでしたが、今はどこのお店に行ってもオメガ3の油、亜麻仁油やえごま油を買える時代です。
オメガ6のリノール酸のとり過ぎに気をつけて、それとバランスをとるオメガ3の油をとるのがよいといわれます。
リノール酸をとり過ぎると害がある
厚労省の日本人の食事摂取基準(2015年版)にも控え目ながらこのように書かれていました。
がんに関しては、最近のコホート研究や症例対照研究で、n-6 系脂肪酸摂取量と乳がん罹患に正の関連が認められている。
リノール酸は、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸よりも酸化されやすく、多量に摂取した場合(10% E 以上)のリスクは十分に解明されていない。
さらに、リノール酸は炎症を惹起するプロスタグランジンやロイコトリエンを生成するので、多量摂取時の安全性が危惧される。
リノール酸過剰摂取で認められた乳がん罹患や心筋梗塞罹患の増加は、リノール酸の酸化しやすさ、炎症作用が原因かもしれない。
n-6 系脂肪酸とは、オメガ6の脂肪酸だと読み換えてください。
文中、10% Eとは脂肪エネルギー比率のことです。総エネルギー(kcal)に対して脂肪のエネルギーが何パーセントあるかということです。
脂肪(油)と脂肪酸ではカロリーが違うと思いますが、調べてみると、この場合は、リノール酸でも概算で1gあたり9kcalだと考えて計算してよいようです。
たとえば、1日総カロリー2000kcalで生活している人の10% Eは200kcalです。200/9= 22.22・・・(g)です。
リノール酸が多い油は、リノール酸の含有量が50%程度ありますから、油の量としては、約44gで「とり過ぎかも」になるようです。
多量に摂ると、乳がんや心筋梗塞に関係し、炎症を引き起こすことが書かれています。
リノール酸は不足しない
リノール酸は、必須脂肪酸なので、必ず摂らなければならない脂肪酸なのですが、大豆を食べる日本人は、通常の食事で不足することはまず考えられません。
オメガ6リノール酸が多い油と食品ランキングで書きましたが、普段食べているものに、十二分に(あるいは過剰に)リノール酸が含まれています。自分で調べてみて、しみじみそう思いました。
リノール酸は、体の中で炭素数が2個増え、二重結合が1個増えてアラキドン酸になります。アラキドン酸が炎症を増やす物質の材料になります。
オレイン酸には害がない
オレイン酸は、体の中でも作られる脂肪酸です。
昼に食べる定食やお菓子その他、いろいろな食品に植物油が使われていますが、安価なリノール酸が多い油が使われていると思って間違いありません。
そのため、自分で料理するときに油を使うなら、オメガ3の油、亜麻仁油やえごま油がよいと思います。しかし、もし加熱調理をするなら、酸化しにくいオレイン酸が多く含まれる油がよいです。
オレイン酸が多い油は、オリーブ油、オレインリッチのひまわり油、椿油などがあります。
オレイン酸が多い油を使うメリットは、リノール酸とり過ぎによって起こる炎症などの害を受けないことが一番大きいと思います。
リノール酸とオレイン酸、ずいぶん違いがあるように感じますが、構造を比べてみるとわずかな違いしかありません。
リノール酸とオレイン酸の構造の違い
リノール酸とオレイン酸は、両方とも炭素数18の脂肪酸です。脂肪酸は、炭化水素の鎖にカルボキシ基(-COOH)がついたものです。
脂肪酸の構造式がよく分からない方は、脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があるを読んでみてください。
リノール酸もオレイン酸も構造はほとんど変わりがありません。炭素、水素、酸素からできています。化学式からそれぞれの数がわかります。リノール酸はオレイン酸よりも水素が2個少ないだけです。
オレイン酸:C18H34O2
構造の違いは、リノール酸には、炭素の二重結合が2個あり、一方、オレイン酸には、炭素の二重結合が1個あるところです。
リノール酸の構造式
リノール酸は、カルボキシ基(-COOH)と反対側の端(オメガ端)から6番目と9番目の炭素に二重結合があります。
形がいびつに曲がっているのは、二重結合部分を見ていただくと分かると思いますが、2ヶ所とも同じ方向に折れ曲がっているからです。それで、全体がやや丸くなっています。同じ方向に曲がるのをシス型といいます。
リノール酸の融点
リノール酸の融点は−5 °Cです。同じ長さの脂肪酸では、二重結合が多いほど融点が下がります。つまり常温で液体になります。
二重結合がない飽和脂肪酸は融点がとても高く、常温では固体です。この違いは、形からくる壊れやすさが関係しています。鉄棒を曲げることを考えてみてください。まっすぐのものは曲げにくいですが、いびつな形になっていたら弱い力でもグニャグニャにできます。
オレイン酸の構造式
オレイン酸は、カルボキシ基(-COOH)と反対側の端(オメガ端)から9番目の炭素に二重結合があります。こちらも二重結合のところで同じ方向に曲がっています。
オレイン酸の融点
オレイン酸の融点は、13.4 °Cです。リノール酸と比べると高いです。これは炭素の二重結合が1個なので、形のいびつさがそれほどでもなく、リノール酸に比べると壊れにくいからです。
NOTE
リノール酸とオレイン酸、構造に大した違いはないのですが、リノール酸は必須脂肪酸だけあって、体の中で変化して特別な働きをもつ生理活性物質の材料になります。
そういう意味では、オレイン酸は、自分でも作ることができるありふれた脂肪酸なのかもしれません。
オリーブ油でニンニクを炒めている(焼いている?)においは食欲をとてもそそられますけれども。
また、この他のリノール酸についての記事は、リノール酸についてをお読み下さい。