サチャインチオイルの脂肪酸組成の特徴は、α-リノレン酸が約50%でリノール酸が35%とリノール酸が意外と多いところです。リノール酸が多く、α-リノレン酸がほとんど含まれないコーン油と比較する実験では、サチャインチオイルの方が、総コレステロールも中性脂肪(トリグリセリド)も抑えられ、EPAもDHAもつくられていることがわかりました。
サチャインチオイルはインカインチオイルのことです。オメガ3の油の加熱についてを書いた時に、インカインチオイルに興味を持ちました。一番に知りたいと思ったのは、脂肪酸組成です。それでネットを念入りに探していきました。
しばらく探しているとサチャインチ油がラットの脂質代謝に及ぼす影響という論文を発見し、早速、読ませていただきました。サチャインチオイルの脂肪酸組成も分かりましたが、この論文に書かれていたリノール酸/α-リノレン酸比率が、脂質代謝に与える影響が大きいことが分かりました。
この記事では、それを書いておきます。
サチャインチオイルの脂肪酸組成
新しい油を知ると、脂肪酸組成がとても気になります。この論文には、サチャインチオイルの脂肪酸組成が出ていました。オメガ3のα-リノレン酸が一番多いですが、リノール酸も多いですね。それが特徴です。表の一番下にn-6系/n-3系がありますが、オメガ6/オメガ3、つまりリノール酸/α-リノレン酸のことです。えごま油や亜麻仁油の方がリノール酸の割合が少ないので、もっと小さい数字になります。
パルミチン酸(C16:0) | 3.9 |
パルミトオレイン酸(C16:1) | 0.1 |
ステアリン酸(C18:0) | 2.9 |
オレイン酸(C18:1) | 9.2 |
リノール酸(C18:2) | 35.2 |
α-リノレン酸(C18:3) | 48.8 |
n-6系/n-3系 | 0.7 |
ちなみに、対照群として、コーン油と大豆油が選ばれていますが、それぞれのn-6系/n-3系の数字は、コーン油が24.5。大豆油は9.2でした。
コーン油も大豆油も脂肪酸組成ではリノール酸が55%程度を占めています。つまり、コーン油にはαリノレン酸がごくごくわずかしか含まれていない、大豆油にはα-リノレン酸が少ししか含まれていないという意味です。
リノール酸ばかり摂っているとよくないみたいだ
実験の内容は、同じエサを与えほぼ同じ大きさに育ったラットを3つのグループに分け、一定期間、油以外を全く同じにしたエサを与えます。
油は全く同じ量ですが、①サチャインチオイル、②コーン油、③大豆油とそれぞれのグループに与える油だけが変わります。エサに占める油の割合は、エサ100g中油は7gです。7%です。
その後、体重、内臓脂肪として腎臓周囲脂肪量を測定、 血漿脂質濃度、肝臓脂質脂肪酸組成を測定しています。
この論文では、特に結果考察でも触れられていませんでしたが、n-6系/n-3系比を表に入れているので、サチャインチオイルの対照群として、コーン油と大豆油を選んだのには意味があるのだと思います。
実験の結果、体重変化はほぼ同じようなもの。腎臓周囲脂肪量もあまり差が見られませんでした。興味をもったのは、血漿脂質濃度と肝臓脂質脂肪酸組成です。
血漿脂質濃度
サチャインチ油群 (n=9) |
コーン油群 (n=9) |
大豆油群 (n=8) |
|
総コレステロール | 64.7±5.8a | 123.2±9.5b | 94.3±16.4a,b |
トリグリセライド | 44.6±2.7a | 61.5±5.4b | 54.3± 5.0a,b |
HDL-コレステロール | 22.9±2.6a | 20.5±2.5a | 32.4± 4.1b |
リン脂質 | 63.6±3.2a | 99.2±4.2b | 90.7± 8.1b |
数値:平均値±標準誤差,異なった文字(a,b)のついた値は危険率 5%で有意差あり |
危険率については、統計における危険率をご覧下さい。
ぱっと見るとサチャインチ油とコーン油の差が大きいですね。論文の結論はこの通り。余分なことは書かれていません。
サチャインチ油は,コーン油に比べ有意にラッ トの血漿トリグリセライド濃度および総コレステ ロール濃度を抑える。
それ以上のことは書いてありませんが、コーン油の特徴は、α-リノレン酸がごくわずか2%くらいしかないことです。食べるものがほぼ同じ、油の違いだけでこんなに差ができるのかと思いました。
肝臓脂質脂肪酸組成
次に、肝臓の脂質を分析した結果ですが、比べてみてください。
サチャインチ油群 (n=9) |
コーン油群 (n=9) |
大豆油群 (n=8) |
|
パルミチン酸 | 15.3±0.5 | 18.4±0.4 | 17.5±0.9 |
パルミトオレイン酸 | 7.6±0.5 | 8.4±0.5 | 7.6±0.9 |
ステアリン酸 | 5.1±0.4 | 3.8±0.5 | 4.1±0.6 |
オレイン酸 | 17.4±1.6 | 32.7±0.9 | 28.8±0.8 |
リノール酸 | 23.5±0.6 | 28.2±1.0 | 32.1±2.4 |
α-リノレン酸 | 19.0±0.7 | 0.5±0.1 | 2.2±0.3 |
アラキドン酸 | 4.7±0.5 | 6.5±0.7 | 5.8±0.7 |
エイコサペンタエン酸 | 3.7±0.8 | 0.2±0.1 | 0.3±0.0 |
ドコサペンタエン酸 | 1.2±0.2 | 0.2±0.1 | 0.4±0.1 |
ドコサヘキサエン酸 | 2.6±0.7 | 1.0±0.3 | 1.2±0.2 |
n-6系/n-3系 | 1.1 | 18.3 | 9.2 |
数値:平均値±標準誤差 |
ちなみに論文では次のように書かれていました。
サチャインチ油摂取は,ラット体内のエイコサペンタエン酸,ドコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸量を効果的に上昇させる。
ドコサペンタエン酸はオメガ3とオメガ6の場合がありますが、文中でオメガ3とありました。サチャインチ油群でエイコサペンタエン酸(EPA)がとても多いです。
生後まもなくからエサを管理されたラットの場合、油を変えるとこれだけ差が出るのですね。ヒトの場合はいろいろなものを食べるから単純に比較はできないですが、一般的な傾向として、α-リノレン酸とリノール酸をバランスよく摂っていると、エイコサノイドの材料になるアラキドン酸とEPAがほぼ同じ程度できるのが分かります。
そして、コーン油群や大豆油群ではアラキドン酸ばかりできているのが分かります。
オメガ3とオメガ6のバランスを取ろう
リノール酸をとり過ぎてα-リノレン酸をとらないと、総コレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)が上がります。さらに、生理活性物質であるエイコサノイドの材料となるアラキドン酸とエイコサペンタエン酸(EPA)の量が、アラキドン酸の方が極端に多くなってしまいます。
αリノレン酸は、10~15%程度しかDHAに変換されないといわれていますが、それでもαリノレン酸をとっていれば確実に変換されます。脳や目の健康のためにはとっていた方がよいですね。
オメガ6リノール酸が多い油と食品ランキングに書きましたが、リノール酸は、穀物、特に豆に多く含まれているので、大豆製品を日常的に食べている日本人は過剰になることはあっても不足することはありません。オメガ3をつとめてとるようにするのがよいと思います。
また、サチャインチオイルを始め、オメガ3のα-リノレン酸が多く含まれている油について、オメガ3の油は5種類あるで紹介しています。
NOTE
油を摂る時、リノール酸に対して、α-リノレン酸を一定の割合で摂っていると、総コレステロールも中性脂肪(トリグリセリド)も抑えられ、EPAもDHAもつくられているのがわかります。
やはり、リノール酸とα-リノレン酸のバランスを取った方がよいのだなとわかりますね。