オリーブとオリーブオイルの栄養成分を比較

エキストラバージンオリーブオイルって、オリーブを搾って水と分けた油だから、栄養豊富なのではないかと思って調べました。しかし、精製していないオリーブ油でも、脂溶性のビタミンがわずかに入っているだけなのですね。

オリーブ

搾っただけの油なら栄養成分が豊富かなと思った

こんなこと思ったことはありませんか?

搾っただけの精製していない油だったら、栄養成分もそのまま入っているんじゃない?

エキストラバージンオリーブオイルは、オリーブを搾って、果汁を遠心分離機にかけて水と油に分けて得られた油の中で、品質が一番よいもののことです。

精製されていないから、どのくらいビタミンやミネラルが含まれているのだろうと思いました。

早速、調べてみましょう。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)では生のオリーブは出ていませんでしたが、塩漬けのオリーブが2種類出ていました。

塩漬けのオリーブとオリーブ油の栄養成分を比較してみましょう。

ちなみに、日本のJAS規格にはエキストラバージンオリーブオイルの基準がありません。詳しくは、こちらの記事をお読み下さい。

「そのオリーブオイルは偽物です」を読んだ
普段うちで使っているエキストラバージンオリーブオイルが本物なのかな?と思ったら、まず、「そのオリーブオイルは偽物です」を読んで、本物(高いですが)を一度買って来て、自分の舌で比較して確かめてみましょう。オリーブオイルを使っている人は読...

しかし、「オリーブ油」と「精製オリーブ油」の違いがあるので、オリーブ油と書かれているものは、精製されていないオリーブ油のことです。このような基準があります。

オリーブの果肉から採取した油であつて、食用に適するよう処理したものをいう。

まず、オリーブの栄養成分からです。

オリーブの栄養成分

オリーブの栄養成分は、脂質以外、大したことがありません。

オリーブの栄養成分は、脂質が12~15%、タンパク質が1%程度、炭水化物が4%程度あり、全体の約80%が水分です。ミネラルである灰分は2~4%あり、ずいぶん多いなと思いましたが、大部分が塩漬けの塩です。

塩はNaClです。Na(ナトリウム)が多いのです。

水分を別にすると、脂質が一番多く、その1/3程度が炭水化物そして、1/10未満がタンパク質になります。もちろん、油が一番多い。

炭水化物は食物繊維

アミノ酸の組成も調べることができますが、オリーブに含まれるタンパク質が1g程度でそもそも栄養分としては少ないので省略します。

炭水化物はグリーンオリーブ、ブラックオリーブとも、3~4g程度ありますが、甘い糖分ではなく、ほぼ食物繊維です。

ミネラルはあるが多くはない

ミネラルには、特徴を感じません。ナトリウムが多いのは、前にも書きましたが、塩漬けだからです。ナトリウムは除外して考えます。特に多いミネラルはないですね。

ビタミンも少しずつあるが多くはない

ビタミンについてもそれぞれ少しずつあるものの、特に多いとはいえないです。β-カロテンはビタミンAの前駆体です。450μgと多いように見えますが、ビタミンAの効力としては、1/12になるので、レチノール活性当量が見るべき数字になります。

ビタミンEは、体内ではα-トコフェロールだけが働くのですが、これも大したことはありません。

ビタミンB群もビタミンCもありますが、みんな少しずつです。

私の勝手な思い込みですが、脂質が多いオリーブは、他の栄養成分も「濃い」のではないかと思っていました・・・。

食品成分 塩漬/グリ
ーンオリ
ーブ
塩漬/ブラ
ックオリ
ーブ
オリーブ
エネルギー 145kcal 118kcal 921kcal
水分 75.6g 81.6g 0
たんぱく質 1g 0.8g 0
脂質 15g 12.3g 100g
炭水化物 4.5g 3.4g 0
灰分 3.9g 1.9g 0
トリアシルグリセロール当量 (14.6)g 12g 98.9g
ナトリウム 1400mg 640mg Tr
カリウム 47mg 10mg 0
カルシウム 79mg 68mg Tr
マグネシウム 13mg 11mg 0
リン 8mg 5mg 0
0.3mg 0.8mg 0
亜鉛 0.2mg 0.2mg 0
0.17mg 0.17mg 0
マンガン 0.04mg 0.08mg 0
ヨウ素 0
セレン 0
クロム Tr
モリブデン 0
レチノール ‘(0) 0 0
αーカロテン 0 0
βーカロテン 450μg 180μg
βークリプトキサンチン 0 5μg
βーカロテン当量 450μg Tr 180μg
レチノール活性当量 38μg 0 15μg
ビタミンD ‘(0) ‘(0) ‘(0)
αートコフェロール 5.5mg 4.6mg 7.4mg
βートコフェロール 0 0.1mg 0.2mg
γートコフェロール 0.2mg 0.1mg 1.2mg
δートコフェロール 0 0 0.1mg
ビタミンK ‘(0) ‘(0) 42μg
ビタミンB1 0.01mg 0.05mg 0
ビタミンB2 0.02mg 0.06mg 0
ナイアシン Tr 0.3mg 0
ナイアシン当量 0.2mg 0.4mg 0
ビタミンB6 0.03mg 0.02mg ‘(0)
ビタミンB12 ‘(0) ‘(0) ‘(0)
葉酸 3μg 2μg ‘(0)
パントテン酸 0 0 ‘(0)
ビオチン 0
ビタミンC 12mg Tr ‘(0)
脂肪酸総量 13.97g 11.46g 94.58g
飽和脂肪酸 (2.53)g 2.07g 13.29g
一価不飽和脂肪酸 (10.63)g 8.72g 74.04g
多価不飽和脂肪酸 (0.82)g 0.67g 7.24g
コレステロール ‘(0) Tr 0
単糖当量 ‘(Tr)
水溶性食物繊維 0.2g 0.4g 0
不溶性食物繊維 3.1g 2.1g 0
食物繊維総量 3.3g 2.5g 0
食塩相当量 3.6g 1.6g 0
アルコール
n-3系多価不飽和脂肪酸 0.12g 0.1g 0.6g
n-6系多価不飽和脂肪酸 0.69g 0.57g 6.64g
16:0パルミチン酸 2100mg 1700mg 9800mg
17:0ヘプタデカン酸 22mg 18mg 0
18:0ステアリン酸 390mg 320mg 2900mg
20:0アラキジン酸 67mg 55mg 420mg
22:0ベヘン酸 0 0 120mg
16:1パルミトレイン酸 200mg 160mg 660mg
17:1ヘプタデセン酸 44mg 36mg 0
18:1計 10000mg 8500mg 73000mg
20:1イコセン酸 43mg 35mg 280mg
18:2n-6リノール酸 690mg 570mg 6600mg
18:3n-3αーリノレン酸 120mg 100mg 600mg
20:4n-6アラキドン酸 0 0 0
20:5n-3イコサペンタエン酸 0 0 0
22:6n-3ドコサヘキサエン酸 0 0 0

オリーブオイルの栄養成分

次に、オリーブオイルの栄養成分をオリーブと比較してみましょう。

脂質100%でミネラルもない

オリーブオイルは脂質100%です。たんぱく質も炭水化物もありません。灰分(ミネラル)もありません。

オリーブオイルのエキストラバージンオイルなら、オリーブ果実を絞って、遠心分離機で水と油を分けたものだから、もともとのオリーブの成分が活かされているだろうと思ったのですが。

わずかに脂溶性のビタミンが残るだけ

ビタミンについては、わずかに脂溶性のビタミンが残っています。ビタミンA(β-カロテン、レチノール当量)、ビタミンE(トコフェロール)とビタミンKです。

ビタミンKは、塩漬けオリーブでは検出されていませんでしたが、もともとごくごく微量含まれていたものが、油だけが集められて検出されるようになったのだと思います。

その他の水溶性のビタミンは、油に溶けないので、水と一緒に分離されてしまったのです。

精製していない油でこの状態ですから、精製すればもっと栄養成分は減ると思います。

精製していなくても栄養成分はほとんどないかもしれない

オリーブとオリーブ油を比較すると、オリーブ油は、「油」であり、他の余分なものはほとんど入っていません。

ほかの油料作物についても調べてみますが、原料を搾って「油」にすることは、ひょっとすると、精製していなくても「油」以外のものをできるだけ入れないようにしているのかもしれません。

「一番しぼり」「しぼりたて」「しぼったまま」と聞くと、原料由来の栄養成分が入っていそうな気がするんですけれどね。

ナトリウムがあると石けんができる

この記事を書いている時点で、私が分かることが一つだけあります。油の中にナトリウム(Na)が残っていると、脂肪酸と反応して石けんができてしまいます。

油はグリセロール(グリセリン)に脂肪酸が3本ついた構造ですが、脂肪酸が外れて遊離脂肪酸になる場合があります。脂肪酸のカルボキシ基(-COOH)にナトリウムが結合すると石けんができます。だからナトリウムは取り除く必要があります。

詳しくはこちらの記事を読んで下さい。

油を精製するとき脱酸の工程では石けんを作る
油の精製と聞くだけでイメージが悪い(?)時代、「脱酸」の行程は、石けんをつくると聞くと、さらにイメージが悪くなりますか?でも、詳しく知っていくと、面白くて品質向上に役に立つことが分かります。油を精製する工程では、脱酸という工程があり...

NOTE

この記事を書く前に思っていたことは、エキストラバージンオリーブオイルなら、ビタミンやミネラルが豊富なのではないかということでした。

製造方法が、果実を絞って、遠心分離機で水と油を分けただけに近いわけですから。精製していないことに魅力を感じていました。

ところが、調べてみると、脂溶性ビタミンが少し残る以外、調べられた栄養成分は、ほぼ何も残りません。

今は情報化時代なので、油についても「あれがいい」「これがいい」の話がたくさんあります。しかし、原料由来のものはほとんど残らないかもしれません。少しがっかりしました。

しかし、もう一つ思うことがあります。オリーブ油には独特の辛味や香りがあります。これはきっとごくごく微量でそれとわかるようになるのだと思います。それがすごいなと思いました。

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