「そのオリーブオイルは偽物です」を読んだ

普段うちで使っているエキストラバージンオリーブオイルが本物なのかな?と思ったら、まず、「そのオリーブオイルは偽物です」を読んで、本物(高いですが)を一度買って来て、自分の舌で比較して確かめてみましょう。

オリーブ油

オリーブオイルを使っている人は読んだ方がよい本

そのオリーブオイルは偽物ですを読みました。表紙デザインから一瞬、古い本なのかなと思いますが、2016年の本です。

オリーブオイルには偽物が多いとずっと言われています。この本にも店頭にある80%は偽物であると書かれています。

私はそのものズバリのタイトルにひかれました。どのようにしたら本物とにせ物を見分けることができるのだろうと興味があったからです。

自分が買っていたエキストラバージンオリーブオイルは本物なのか知りたいところです。

オリーブオイルはひどく安いものは別として、一般的なものは、ものすごく高いわけではないけれど、決して安いものではないです。わざわざ偽物を買っているならばかばかしいと思います。

著者の多田俊哉さんは、日本オリーブオイルソムリエ協会の理事長です。またこの協会は、国際オリーブオイルコンテストOLIVE JAPANを2012年から開催しています。

偽物を見分けるのは、本物を一度味わって比較するのが一番

本を最後まで読んでよく分かりました。結論から行きましょう。本物を見分けるのは、自分の舌しかありません。味覚は裏切りません。

一度本物を味わって、普段買っているエキストラバージンオリーブオイルが本物かどうか自分で決めるのが一番よい方法です。

3ヵ月前に、国産のエキストラバージンオリーブオイル、蒼のダイヤを味見してから私はいつも買っていた銘柄のエキストラバージンオリーブオイルを買わなくなりました。私は味にうるさい人間ではありませんが、そんな人間でもハッキリとわかる差がありました。

私の好きな日本酒でたとえると、開封してしばらくたった安い日本酒と、開封したばかりの純米吟醸酒を口に含んだ時くらいの差がありました。

蒼のダイヤは、香川県多度津町で栽培されたオリーブ100%のオリーブオイルです。OLIVE JAPANでは2015年から2018年まで金賞を受賞していました。

詳しくは、蒼のダイヤ。エキストラバージンオリーブオイルとは本来こんな味なのかを是非、お読みください。

蒼のダイヤ。エキストラバージンオリーブオイルとは本来こんな味なのか
国産オリーブ100%のエキストラバージンオリーブオイル、蒼のダイヤを味わって驚きました。エキストラバージンオリーブオイルとは、こんな味だったのか。そして、つくっている会社に興味を持ち、(株)蒼のダイヤについても調べました。 蒼のダイヤ 数日...

口の中に広がる香り、辛み、軽さなど、本物を味わうと、普段買っているものはもっさりしていて重く、何か別なものを混ぜているだろうとわかりました。

なぜ、こんなことが許されるのだろうと思ったら、日本にはオリーブオイルの品質に対して厳しい基準がないのです。

日本にはエキストラバージンオイルを決める基準がない

日本のオリーブ油(オイル)の規格は、オリーブ油と精製オリーブ油しかありません。このように書かれていました。

日本には「エキストラバージン」表示に関する法規定が何もないという事実です。
かろうじてJAS法(日本農林規格)といわれる規格で、かなり緩いオリーブオイルの品質規定があることはあるのですが、「エキストラバージン」と表示することには何の規制もありません。
言ってみれば、どんなにひどい品質のオリーブオイルであっても、日本ではラベルに「エキストラバージン」と書いて何のおとがめもありません。

実際に日本農林規格を調べてみました。

JAS(日本農林)規格でのオリーブオイル

JAS規格では、オリーブオイルは、以下の表にある通り、オリーブ油と精製オリーブ油しか区別がありません。エキストラバージンとそれ以外を区別することはできません。

食用植物油脂の日本農林規格に最終改正平成28年2月24日のものがあります。このように書かれています。

食 用 オ リ ー ブ 油 オリーブの果肉から採取した油であつて、
食用に適するよう処理したものをいう。

次に、具体的に決められているのは以下の通りです。

この記事では、オリーブ油と精製オリーブ油の区別しかないこと。また、オリーブ油には、等級となる区別が何もないことをご確認いただければよいので、用語の解説はしません。

区 分 基 準
オリーブ油 精製オリーブ油
一 般 状 態 オリーブ特有の香味を有し、
おおむね清澄であること。
おおむね清澄で、
香味良好であること。
特有の色であること。
水分及びきょう雑物 0.30%以下であること。 0.15%以下であること。
比重〔25/25 ℃〕 0.907~0.913であること。
屈 折 率(25℃) 1.466~1.469であること。
酸 価 2.0以下であること。 0.60以下であること。
け ん 化 価 184~196であること。
よ う 素 価 75~94であること。
不 け ん 化 物 1.5%以下であること。
原 材 料 オリーブ油以外のものを
使用していないこと。
添 加 物 使用していないこと。
内 容 重 量 第3条の規格の内容重量と同じ。

これ以外のことは何も求められませんから、ラベルに「エキストラバージン」と自由に書いてもよいのです。「エキストラバージン」とは、商品名みたいなものです。

どんなものが流通しているのか?

低品質のオリーブオイルにエキストラバージンのラベルを貼って出荷されています。

低いグレードのオイルにもかかわらず高品質を偽ってラベルに表示して販売する品質偽装です。

19ページの表(注:省略します)のオリーブオイルの等級規格のうち低級のバージン、あるいはオーディナリーバージン規格に該当するオリーブオイルなのに「エキストラバージン」とラベルに明記して販売してしまうこと。

時には食用には適さないランバンテやポマースオイルでさえエキストラバージンに化けてしまうこともあります。

実はこうした品質偽装オイルはきわめて多くて、偽エキストラバージンオリーブオイルの大半を占めます。

日本は基準がないことをいいことに、やりたい放題やっているのは輸入する会社が悪いことを企んでいるのかと思ったのですが、そうではないようです。

アメリカ、オーストラリア、カナダでも偽物が流通している

日本だけが偽物を輸入しているわけではありません。アメリカも、オーストラリアもカナダもです。

日本やアメリカ、オーストラリアやカナダといった輸入大国が、スペインイタリアから最高品質のエキストラバージンとして輸入したはずのオリーブオイルは、実は生産国側であるスペインやイタリアから輸出されたエキストラバージンの数量と一致しません。

前者が後者を遥かに上回っていることがわかります。つまり、多くの精製オイルやエキストラバージンになれない低級のバージンが、どこかでエキストラバージンに姿を変えてしまっているわけです。(中略)

「最高品質の証であったエキストラバージン格付けは有名無実化し、消費国に届けられる際には、何もかもがその品質に関係なくエキストラバージンのラベルをまとって輸出されてしまう。本当にひどい市場です」

エキストラバージンとはいえないものをラベルを貼って輸出しているのは、もっと大がかりなよくない仕組みがあるようです。

この記事とは関係がないので書きませんが、詳しくは、是非、本を読んでみてください。

輸入業者ではとてもチェックできないと思いました。ブランドと言われた通りに品質を信じて輸入するしかないのです。次に解説しますが基準となる数字は、あまりあてにならず、残りは官能検査なのでどうにでもなります。

本来、エキストラバージンオイルの基準を決めるIOCはオリーブオイルの品質に厳しい目を向けていなければならないのですが、あまり機能していないようです。

国際オリーブ理事会(IOC)の基準は「ぬるい」

IOCが定めるエキストラバージンオイルのオレイン酸の遊離脂肪酸比率0.8%以下という基準は実に「ぬるい」数字でした。この数字を鵜呑みにしてオリーブオイルを買わない方がよいと思います。

この本を読まなければ、酸度を表す数字の具体的な意味がわかりませんでした。

たとえば「酸度(Free Fatty Acidといい、オレイン酸の遊離脂肪酸比率を測る尺度)」という理化学分析規格を調べてみましょう。

「驚異の酸度0.3%以下」などといった表示がオリーブオイルのラベルに躍っているのを目にされることもあるかもしれません。

この「酸度」(日本のJAS法では酸価)は、原料のオリーブ果実が発酵したかどうかを表す指標なのですが、IOCの定める「エキストラバージン」規格では0.8%以下となっています。

まず酸度と呼ばれる遊離脂肪酸について説明しましょう。

オリーブが発酵すると遊離脂肪酸(オレイン酸)が増える

油の消化はグリセリン(グリセリド)と脂肪酸に分解されることでした。オリーブが発酵するのも分解されることです。自己消化か微生物によるものかわからないですが。

オリーブオイルの70%以上を占める主成分となる脂肪酸はオレイン酸であり、それがどのくらい遊離しているかを調べることで、収穫後時間が経って発酵したオリーブを搾ったかどうかわかるのです。

「発酵」と聞くとよいことではないかと一瞬思いますが、この場合は品質が低下したという意味です。オリーブは収穫後すぐに搾らなくてはいけません。

0.8%という数字がどの程度の数字なのか、私たちにはわかりません。しかし、以下を読めばエキストラバージンの基準としては実に「ぬるい」ものだとわかります。

酸度0.8%まで行かない0.6~0.7%のもので全て風味上の欠陥が検知される

数値は低ければ低いほど高品質ということになりますが、この0.8%という基準値が高品質を表すことにおいて適当かどうかが議論の焦点です。

カリフォルニア大学デービス校(UCデービス)オリーブセンターの最近の研究によれば、同校が2010年から12年にかけて店頭で集めた260の市販品の中で、酸度0.3%以下という優秀な結果だったものが126品と約半数あったものの、これらの89%は風味官能検査で不合格だった、と報告されています。

また、酸度0.8%以上のものは260品の中には一つもなく、酸度0.6%~0.7%台だった19品のすべてに風味上の欠陥が検知された、としています。

つまり0.8%というIOCの基準自体がエキストラバージンとするには相応しくないほど緩い基準であって、販売されている多くの品質偽装オイルでもその基準であれば通ってしまう程度のもの、と言うことなのです。

同校の調査結果のように、どんなにひどい風味の品質偽装オイルであっても、酸度が0.5%を上回ることはほとんどないと言われています。

数字だけ示されてもわかりません。しかし、ここにあるように、酸度0.6%~0.7%台だった19品のすべてに風味上の欠陥が検知されたのなら、酸度0.8%以下にする根拠は何でしょうね?相当品質の悪いバージンオイルでもエキストラバージンオイルにするためでしょうか。

ちなみに、精製したオリーブオイルは遊離脂肪酸を取り除きますから、酸度はぐっと下げられます。もし、品質の落ちたバージンオリーブオイルに精製したオリーブオイルを混ぜれば、酸度がそこそこ下がったオリーブオイルになります。

酸度0.8%以下という基準は偽装するときの隠れみのになりそうでもあります。

まともなオリーブオイルの値段はどのくらいだと予想できるか

ご参考まで、スペイン産の品質がまともなエキストラバージンオリーブオイルを日本で販売すると適正な値段が書かれていました。

先ほどスペインの小売店では、特殊なヴィンテージのようなものを除けば、品質の確かなエキストラバージンオリーブオイルが500ミリリットル10~12ユーロ程度(注:千数百円程度)で販売されていると申し上げました。

これを仕入れて日本で販売すれば、おそらく3000円から高くても6000円程度でしょう。

500ミリリットルで3000~6000円のオリーブオイルを毎日の食事に使う油として、私は買いません。しかし、これが標準的な値段だと考えておくのがよいでしょう。

もっと安い値段のもの、たとえば1リットルのペットボトルに入っているエキストラバージンオイルがまともな品質のわけがありません。

しかし、値段が高ければ全て本物かというと、そういうわけでもないようです。

高ければ高品質が保証されていると考えないこと

偽装を考える人は、効率よく稼ぐことを考えます。高い商品なら稼ぎも大きくなります。

エキストラバージンに品質偽装する最大の動機は、儲けをたくさん上げることです。そもそも安価な商品で儲けをたくさん上げるには、それこそ膨大な量を売らなければなりませんが、高価な商品であればあるほど少ない販売本数でも利益は大きくなります。

つまり、品質偽装を行う人たちにとっては、この輸入ブランドの比較的単価の張るエリアがもっとも狙いやすいのです。

まとめ

日本で販売されているオリーブオイルに偽物が多いのは、日本にオリーブオイルについての厳しい基準がないため、輸入業者が好きなようにエキストラバージンのラベルを貼っているのかと考えたことがありました。

しかし、オリーブオイルの偽装は、日本だけでなく、アメリカ、オーストラリア、カナダでも同様でした。

国際オリーブ理事会(IOC)の基準、酸度0.8%以下は「ぬるい」数字です。あてにならないと思った方がよいでしょう。この数字の甘さは、この本を読んで初めて知ることができました。

オリーブオイルは、一度本物(高いですが)を味わってみて、普段使っているオリーブオイルをまた買おうと思うかどうか考えてみた方がよいかもしれません。油はオリーブオイル以外にもあります。

また、オリーブオイルについて他の記事は、オリーブオイルについて書いた記事のまとめをご参照ください。

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