ごまは栄養豊富な食べ物なので、ごまを搾って精製していない油には、どのくらい栄養成分が入って行くのかなと思ったら、栄養成分としては、ほぼ、ただの脂質(油)でした。ただし、ごま特有のセサミン、セサミノール、セサモリンなど抗酸化作用がある物質は栄養成分として出てこないので別です。
ごまの栄養成分
ごまは、栄養豊富な食べ物です。たんぱく質が多く、カルシウムがとても多い。もちろん、油を搾るのですから、脂質もとても多いです。ごまを搾ったごま油にはどのくらいもともとの成分が残るのか調べました。
ごまはたんぱく質とカルシウムが豊富
ごまは乾燥させたもの100gにたんぱく質が20g程度あり、また、カルシウムが1200mgもあります。炭水化物は17g近くありますが、ほとんどが食物繊維で、ショ糖(砂糖の成分)が1g弱です。脂質は53gあり、ごまの約半分が油であることがわかります。
必須アミノ酸がそろっている
表の下の方を見ると、たんぱく質を構成するアミノ酸の数値が書かれていますが、必須アミノ酸が全て含まれています。
栄養成分の数字は日本食品標準成分表2015年版(七訂)で調べました。
ごま/乾 | ごま油 | |
エネルギー | 586kcal | 921kcal |
水分 | 4.7g | 0 |
たんぱく質 | 19.8g | 0 |
脂質 | 53.8g | 100g |
炭水化物 | 16.5g | 0 |
灰分 | 5.2g | 0 |
ナトリウム | 2mg | Tr |
カリウム | 400mg | Tr |
カルシウム | 1200mg | 1mg |
マグネシウム | 370mg | Tr |
リン | 540mg | 1mg |
鉄 | 9.6mg | 0.1mg |
亜鉛 | 5.5mg | Tr |
銅 | 1.66mg | 0.01mg |
マンガン | 2.24mg | 0 |
ヨウ素 | Tr | 0 |
セレン | 10μg | 1μg |
クロム | 4μg | 1μg |
モリブデン | 92μg | 0 |
レチノール | ‘(0) | 0 |
αーカロテン | 0 | 0 |
βーカロテン | 8μg | Tr |
βークリプトキサンチン | 1μg | 0 |
βーカロテン当量 | 9μg | Tr |
レチノール活性当量 | 1μg | 0 |
ビタミンD | ‘(0) | ‘(0) |
αートコフェロール | 0.1mg | 0.4mg |
βートコフェロール | 0.2mg | Tr |
γートコフェロール | 22.2mg | 43.7mg |
δートコフェロール | 0.3mg | 0.7mg |
ビタミンK | 7μg | 5μg |
ビタミンB1 | 0.95mg | 0 |
ビタミンB2 | 0.25mg | 0 |
ナイアシン | 5.1mg | 0.1mg |
ナイアシン当量 | 11mg | 0.1mg |
ビタミンB6 | 0.6mg | ‘(0) |
ビタミンB12 | ‘(0) | ‘(0) |
葉酸 | 93μg | ‘(0) |
パントテン酸 | 0.56mg | ‘(0) |
ビオチン | 11.7μg | 0 |
ビタミンC | Tr | ‘(0) |
脂肪酸総量 | 50.69g | 93.83g |
飽和脂肪酸 | 7.8g | 15.04g |
一価不飽和脂肪酸 | 19.63g | 37.59g |
多価不飽和脂肪酸 | 23.26g | 41.19g |
コレステロール | ‘(0) | 0 |
単糖当量 | 1g | – |
水溶性食物繊維 | 1.6g | 0 |
不溶性食物繊維 | 9.2g | 0 |
食物繊維総量 | 10.8g | 0 |
食塩相当量 | 0 | 0 |
アルコール | – | – |
n-3系多価不飽和脂肪酸 | 0.15g | 0.31g |
n-6系多価不飽和脂肪酸 | 23.11g | 40.88g |
16:0パルミチン酸 | 4500mg | 8800mg |
18:0ステアリン酸 | 3000mg | 5400mg |
18:1計 | 19000mg | 37000mg |
18:2n-6リノール酸 | 23000mg | 41000mg |
18:3n-3αーリノレン酸 | 150mg | 310mg |
20:4n-6アラキドン酸 | – | 0 |
20:5n-3イコサペンタエン酸 | – | 0 |
22:6n-3ドコサヘキサエン酸 | – | 0 |
イソロイシン | 830mg | |
ロイシン | 1500mg | |
リシン | 610mg | |
メチオニン | 680mg | |
シスチン | 490mg | |
フェニルアラニン | 1000mg | |
チロシン | 750mg | |
トレオニン | 820mg | |
トリプトファン | 360mg | |
バリン | 1100mg | |
ヒスチジン | 610mg | |
アルギニン | 2900mg | |
アラニン | 1100mg | |
アスパラギン酸 | 1900mg | |
グルタミン酸 | 4400mg | |
グリシン | 1100mg | |
プロリン | 830mg | |
セリン | 1000mg | |
ヒドロキシプロリン | – | |
アミノ酸合計 | 22000mg | |
アンモニア | 470mg | |
でんぷん | 0.2g | |
ぶどう糖 | 0 | |
果糖 | 0 | |
ガラクトース | – | |
しょ糖 | 0.7g | |
麦芽糖 | 0 | |
乳糖 | 0 | |
トレハロース | ‘(0) | |
利用可能炭水化物計 | 0.9g | |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂) |
ごま油の栄養成分
一方、ごま油の数値を見ると、脂質100gです。たんぱく質や炭水化物はありません。
ミネラルとビタミンがわずかに残る
ミネラルは、カルシウム、リン、鉄、銅がわずかに残り、ビタミンは、脂溶性のビタミンE(トコフェロール)が乾燥ごまよりも濃縮され残っています。なぜか水溶性ビタミンのナイアシンがわずかに残っています。
このごま油は、JAS規格のごま油、焙煎して搾り、精製していないごま油のことです。ごま油は3種類あります。
ごま油の種類は3つある
JAS規格によれば、ごま油には、ごま油、精製ごま油、ごまサラダ油があります。(出典:食用植物油脂の日本農林規格)
ごま油の説明を読むと、このように書かれているので、焙煎されたごまを搾った油だとわかります。
いりごま特有の香味を有し、おおむね清澄であること。
ごま油は精製しない
焙煎されたごま油は、褐色の油で香りが強いものです。どんなふうに製造されるのか、かどや精油の純正ごま油ができるまでを見ると説明されています。
炒って(焙煎して)、蒸してから搾ります。それを2回濾過して終了です。
でき上がるのはこれです。パッケージの画像を見ると、香りと味を思い出せるでしょう。
焙煎して色と香りのついたごま油を精製すると、精製ごま油になるのでしょう。
ごまサラダ油は精製された油
ごまサラダ油は、いわゆる太白ごま油といわれるものです。
マルホンの太白ごま油のできるまでに説明されています。
ごまを生のまま搾り、脱色、脱臭を行い(精製)、濾過します。できあがるのはこの油です。どこのスーパーにもあります。精製した油ですがコクがあります。
油には余分なものが入っていないと考える
原料がごまのように栄養豊富なものでも、そこから油を搾ると、それが精製していない油でも、ほとんど「ただの油」になります。
わずかに脂溶性のビタミンが残りますが、あとは「ごくごくわずかな」ミネラルとビタミンが残るくらいです。
製造メーカーは、安定した品質の油を供給するために、精製しない油でもできるだけ濾過して余分な成分を入れたくないのです。
また、たとえば、水溶性ビタミンは、油を水と分離すれば水に溶け込んでいるので出ていってしまいます。
ただし、風味や色の成分は食品分析表からは分かりません。調べてみると、香りについてごま油香気成分のGCデ ータの多変量解析という論文が見つかりましたが、ここではふれません。ご興味があれば、リンク先をご覧になってください。
脂肪酸が酸化したアルデヒド類などが、ごく微量でにおいや味として感じられるようになるようです。
NOTE
ごま油とオリーブ油、ちょっとだけなめてみると味がまったく違います。その他の油もそれぞれ少し風味の違いがあります。
それで、精製していない油なら原料由来の栄養成分が油の中に入っているのかと思って調べましたが、原料から脂質以外の、たんぱく質、炭水化物が入ることはありません。また、ミネラル、ビタミン類も一部の脂溶性のもの以外は、ほぼ入ることはありません。
原料がどんなに栄養豊富なものでも、油に加工されたら、栄養成分としては、ほとんど混ざり物のない「油」になります。栄養成分としては、ほぼ脂質100%になります。
それぞれの油の味やにおいや酸化しにくいなどを決める物質は、ごくごく微量で効果が出るようです。
ただし、たとえば、ごま油ではセサミン、セサミノール、セサモリンなど抗酸化作用がある特有の物質があります。これは話が別です。食品分析表には出てきません。
他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。