炭水化物をなるべく摂らず血糖値を上げないようにすると脂肪をたくさんとっても太りにくいらしい・・・。時々気になっていた話が、「適正な糖質摂取についての考察」という論文を読んで調べてみたい話に変わりました。
あらためて油は太るのか?
最近、改めて油は太る原因になるのか考えるようになりました。油の話を調べながら書くようになって5年。以前は、カロリーが高いから当然太るものだと思っていました。何しろ食用油は、すべて1gあたり9kcalあります。
ところが、時々、その常識を覆すような話を読むことがあるのです。それは炭水化物を摂らないで油だけを摂った場合に限ります。
さらに、今回、適正な糖質摂取についての考察という論文を読んで、アメリカでは2015年から肥満予防のため総脂肪を制限することは推奨されていないことを知りました。
これから、血糖値を上げないようにすると脂肪を摂っても太りにくいらしい話を調べて行こうと思います。この記事では、こんな考えを持つようになった経緯をまとめておきます。
もちろん、油と炭水化物を一緒に食べていると太りますよ。お間違いなく。
油と糖の組み合わせは肥満のもと
油と糖を一緒に食べると確実に太ります。よく経験することです。昔、知人に高級な亜麻仁油を紹介したら、えらく気に入ってもらったのはよかったのですが、玄米おにぎりにつけて食べるとおいしいおいしいといいながら、1ヵ月で5キロも太りました。
当時は油のせいだと思いましたが、今は油について勉強してきたので、糖質+油が一番太る組み合わせだと知っています。
上の写真のドーナツなんかおいしくて仕方がないですが、食べ続けると確実に太ります。以前、脂肪は脳に作用するという記事を書いて説明しました。油と糖の組み合わせは、「油が多い」「甘すぎる」という感覚が起きにくくなるのです。
ところが、時々、例外のような話を読むことがあります。そうすると、油だけを摂っても太らないのだろうか・・・?と考えるようになるのです。
炭水化物を抜くと油を摂っても太らない?
最初にそれを感じたのは肉だけを食べて生活するとどうなるか?という記事を書いた時です。
毎日、肉と油だけ食べて1年間生活する。体は引き締まり健康状態もよくとても元気だったという話でした。
しかし、このときは、実験したのがアイスランド人だったことと、肉は蒸すかゆでるかして食べていました。(焼いていませんでした)
日本人が、毎日焼肉屋に通って、野菜をまったく食べずに1日1キロ以上の肉を1年間食べ続けることはとても考えられません。人種の違いによるものなのかと思いました。
また、健康状態がよかったのは、焼かないで食べたからだろうと思っていました。
炭水化物をほとんどとらない高脂質食
ところが、つい最近、「まさか! の高脂質食ダイエット」を読んだという記事を書きました。
この記事で紹介した金森重樹さんは、1970年生まれなので今年50歳。私は2000年頃に金森さんが書かれた通販関係の本を読んで知っていたのですが、当時よりやせて健康状態もよさそうに見えます。
高脂質食というのは、低糖質ダイエットと違って、限りなく糖質0(ゼロ)にするのです。その分のカロリーを油(脂)で補う。脂は新鮮な牛脂を買って来て焼いて食べていました。牛脂は飽和脂肪酸が多いです。
また、たんぱく質は、通常の食事に摂る量と同じにするのが原則です。そして脂質はいくらたべてもよい。糖質を摂らなければ血中のインスリンが増えないので太らないのだとか。
どうやら血糖値を上げないで血中のインスリンを上下させないようにすると太らないようです。インスリンは血糖値を下げるホルモンだと習ってきましたが、同時に、脂肪を細胞内に貯蔵する働きと脂肪を分解させない働きが強いようです。
私は真似してみたいとは思わないですが、アスリートではない普通の人が、この食事法でこれだけ効果がでるのはすごいなと思っています。
栄養学の常識が変わりつつある
そんなことを何となく思っていると、なかなか衝撃的な論文を見つけました。
適正な糖質摂取についての考察という論文で2018年に発表されたものです。書かれた山田悟先生は、北里大学の先生で、テレビでも見かける先生です。
総脂肪消費量の制限がなくなった
この論文を読んで驚いたことが2つあります。
- 米国食事ガイドラインアドバイス委員会がコレステロールだけでなく総脂肪消費量の制限をなくしたこと。
- アメリカ糖尿病学会が糖質制限食を第一選択で推奨するようになったこと。
食品からのコレステロールは気にしなくてよいという話は、2015年に日本でも話題になりました。産経新聞の2015年4月29日の記事、食事コレステロールもう気にしなくていい?「血中濃度と無関係」厚労省は抑制目標値「撤廃」を読むことができます。
しかし、総脂肪消費量の制限をなくしたと聞いてもピンと来ない方もいるかもしれません。
これは、この論文の脚注にあった、The 2015 US Dietary Guidelines: Lifting the Ban on Total Dietary Fatを読むと意味がよく分かります。
総脂肪量を、1980年から総カロリーに対してある割合(%)に制限するよう勧告されていたのです。
1980年に始まった食事療法ガイドラインでは、当初はカロリーの30%未満に制限し、2005年にはカロリーの20~35%に制限することが強調されていました。
その間、主な根拠は、総脂肪の直接的な害についての明確な証拠よりも、飽和脂肪と食餌性コレステロールを低下させることでした。
2015年まで35年続いた基準が全部廃止されたのですから、おどろくべきことです。代わりに、精製された穀物や添加された糖分について注意が喚起されています。
総脂肪を制限することも肥満予防のためには推奨されていない;代わりに、野菜、果物、全粒穀物、魚介類、豆類、乳製品を多く、肉類、糖分を多く含む食品や飲料、精製された穀物を少なくした、エビデンスに基づいた健康的な食事パターンが強調されていた。
糖尿病の治療に糖質制限食がすすめられる
同じような考えで、糖尿病学会では、糖質制限食について、最初は否定、一部容認、その後推奨とわずか7年でがらりと主張を変えています。
こちらは、また、適正な糖質摂取についての考察からです。
糖質についても考え方が真逆になっており、2006 年の段階では、アメリカ糖尿病学会は「糖質制限食は推奨されない(推奨できないと同意)」としていたものの、2008年に「肥満治療の一選択肢である。ただし1 年までである。」と記述を変え、ついに 2013 年に「糖尿病治療の第一選択肢(の一つ)である。時間制約はない。」と推奨するようになった。
記述の変遷を見れば、徐々に記述が変化していることがわかるが、結果としては、わずか7 年(2006 年から 2013 年)で、推奨できないと言っていた糖質制限食を第一選択で推奨するようになったということになる。
日本で、糖質制限が流行ったのは最近のことですが、本当に短い間に考え方が変化しています。
さらに油については、総量制限をしなくてよい根拠としてこのような話が書かれていました。動脈硬化や心臓疾患などに関係ないという話なのです。
それどころか、魚油(ω-3 多価不飽和脂肪酸)のサプリメントにより心血管死、全死亡を予防できる研究結果が今世紀になって報告され、さらには植物性油脂(ナッツ30 g/日もしくはエクストラ・バージン・オリーブ油 1 L/ 週)の付加により心血管イベントを予防できるという研究結果が報告されるに至り、脂質制限は不要であるとの概念が定着するようになった。
動物性油脂(飽和脂肪酸)についてもそれを植物性油脂に変更することにより心血管イベントや死亡率が増加するとのオーストラリアや米国の研究結果があり、特に日本人においては飽和脂肪酸の摂取量が多いほど脳卒中から保護されるとのデータが複数存在し、飽和脂肪酸も避ける必要はなさそうである。
魚油が太りにくい話は、魚油は体重・体脂肪を増加させないという記事を以前書きました。
それ以外の話は、出典が書かれていたので、それぞれ読んでみて記事を書こうと思います。特に飽和脂肪酸の話は興味があります。飽和脂肪酸はステアリン酸は悪い影響はないのですが、それより短い飽和脂肪酸がコレステロールを上げる働きがあるといわれています。
NOTE
短い期間に糖質制限食が糖尿病の人へすすめられるようになったのは、ネット時代でみんな検索して読んだことをためすようになり、それをSNSに自分はどうだったかと投稿するようになったからかなと思いました。
「まさか! の高脂質食ダイエット」を書いた金森重樹さんもツイッターで発言されています。フォローワーは同じような食事をするようになり、自分の成果をまたツイートします。私も、金森さんの本だけ読んでいたら、そういう話もあるのかという程度で終わっていたかもしれません。
しかし、ツイッターをフォローしてしばらく読んでいたので、少なからぬ人たちが血糖値を上げないで脂肪を摂ると太らないらしいことがわかってきて、なぜなのか知りたいと思うようになりました。
糖質制限と油についての他の記事は、糖質制限と油についてをご覧下さい。