ごま油に含まれるビタミンEは大豆油やえごま油より少ない

ごま油が酸化されにくいこと、抗酸化力が高いのはビタミンEが多いからだと本で読んだのですが、実際に調べるとかなり少ないです。とても酸化されやすい油だと知られている大豆油とえごま油と比較しても、ビタミンEの含有量は少ないことがわかりました。

ごま

ごまについてこんな本を読みました。

この中にちょっと気になることが書かれていました。

ごま油の抗酸化力はトコフェロール(ビタミンE)によるもの?

ごま油には、ビタミンE、ビタミンB1、B2、ナイアシンなどビタミン類が多く、また、ごま油のビタミンEは体の中の体内脂質の過酸化を防ぎ、ごま油自体の保存性の高さにも関係していると書かれていました。

植物油には、大豆油を始め、コーン油、ナタネ油などのポピュラーなものから、ベニバナ油やごま油のような高級植物油まであります。

このうちごま油は、中華料理だけでなく日本料理でも、テンプラや炒めものなどに使われるようになりました。ところで、このごま油ですが、他の植物油とはひと味もふた味も違う強力なものなのです。

ごま油には、ビタミンEを始めビタミンB1、B2、ナイアシンなど人の栄養上重要なビタミン類をきわめて高濃度に含有しています。

ただ摂取する量がそれほど多くないので、私たちの食生活でごまがこれらのビタミンの主要な供給源となっていることはありません。

ところがごま油には、トコフェロール(ビタミンE)が共存していて油脂の酸敗(不快なにおい、すっぱさ)を防いでいます。

じつはごま油のビタミンEはちょっと特殊なもので、それが、生体内過酸化脂質と疾病あるいは老化との関連で、その働きが重要視され、多くの人の関心を集めています。ここが他の植物油と大きく違うところです。

まず、ごまの保存性がいいのは、油脂中に存在するビタミンE(トコフェロール)も酸化を防いでいるからだといわれています。

このトコフェロールには八つの種類があり、そのうち主にごま油に存在するのは前にちょっと触れましたようにガンマー型です。

これはひまわり油、オリーブ油など大部分の種実油に含まれるアルファ型と同様に抗酸化性を示しています。

ごま油のトコフェロールが多いのか少ないのか比較できるように大豆油とえごま油と比較した

まずは、栄養成分を調べてみました。ごま油だけだとトコフェロール(ビタミンE)の重量が多いのか少ないのかわからないので、酸化されやすい大豆油とえごま油も調べることにしました。

原料自体の栄養成分も調べた

さらに、原料と油にしたときのビタミンやミネラルの変化をみるため、それぞれの乾燥物の栄養成分も調べました。

それが下の表です。

大豆、えごま、ごま、それぞれ、乾燥物と油を比較すると、すべて、油の方がトコフェロールが多いことがわかります。

ビタミンEは、α-トコフェロールが主

日本人の食事摂取基準(2015年版)には、ビタミンEについてこのように書かれていました。体(からだ)の抗酸化について有効なのは、α-トコフェロールのようです。

ビタミン E には、4 種のトコフェロールと 4 種のトコトリエノールの合計 8 種類の同族体が知られており、クロマノール環のメチル基の数により、α-、β-、γ-及びδ-体に区別されている。

血液及び組織中に存在するビタミン E 同族体の大部分がα-トコフェロールである。このことより、α- トコフェロールのみを指標にビタミン E の食事摂取基準を策定し、α- トコフェロールとして表すことにした。

トコフェロールは、大豆油>えごま油>ごま油

表を見比べると、原料の乾燥物でも油でもトコフェロールは、大豆油>えごま油>ごま油であることがわかります。

また、3つともγ-トコフェロールが最も多いことがわかります。

トコフェロールはごま油の抗酸化力の説明に有効なのだろうか?

ごま油はきわめて酸化しにくい油だと知られています。

もし、α-トコフェロールがごま油の抗酸化性の理由となるなら、α-トコフェロールがごま油よりも多い、大豆油、えごま油についても抗酸化性の高い作用があるはずです。

また、もっとも量が多いγ-トコフェロールも含めた全てのトコフェロールの量で比較しても、大豆油>えごま油>ごま油の順番になり、ごま油の抗酸化性が説明できません。

つまり、ごま油の保存性の高さの根拠として、ビタミンE(トコフェロール)であるということはできないと思います。

100g中の栄養成分
食品成分 黄大豆/乾 えごま/乾 ごま/乾 大豆油 えごま油 ごま油
エネルギー 422kcal 544kcal 586kcal 921kcal 921kcal 921kcal
水分 12.4g 5.6g 4.7g 0g Tr 0g
たんぱく質 33.8g 17.7g 19.8g 0g 0g 0g
脂質 19.7g 43.4g 53.8g 100g 100g 100g
炭水化物 29.5g 29.4g 16.5g 0g 0g 0g
灰分 4.7g 3.9g 5.2g 0g 0g 0g
ナトリウム 1mg 2mg 2mg 0mg Tr Tr
カリウム 1900mg 590mg 400mg Tr Tr Tr
カルシウム 180mg 390mg 1200mg 0mg 1mg 1mg
マグネシウム 220mg 230mg 370mg 0mg Tr Tr
リン 490mg 550mg 540mg 0mg 1mg 1mg
6.8mg 16.4mg 9.6mg 0mg 0.1mg 0.1mg
亜鉛 3.1mg 3.8mg 5.5mg 0mg 0mg Tr
1.07mg 1.93mg 1.66mg 0mg 0mg 0.01mg
マンガン 2.51mg 3.09mg 2.24mg 0mg 0.01mg 0mg
ヨウ素 0μg Tr Tr 0μg 0μg
セレン 5μg 3μg 10μg 0μg 1μg
クロム 3μg 2μg 4μg 0μg 1μg
モリブデン 350μg 48μg 92μg 0μg 0μg
β-カロテン 7μg 23μg 8μg 0μg 22μg Tr
レチノール活性当量 1μg 2μg 1μg 0μg 2μg 0μg
ビタミンD ‘(0) ‘(0) ‘(0) ‘(0) ‘(0) ‘(0)
α-トコフェロール 2.3mg 1.3mg 0.1mg 10.4mg 2.4mg 0.4mg
β-トコフェロール 0.9mg 0.3mg 0.2mg 2mg 0.6mg Tr
γ-トコフェロール 13mg 23.6mg 22.2mg 80.9mg 58.6mg 43.7mg
δ-トコフェロール 8.6mg 0.5mg 0.3mg 20.8mg 4.6mg 0.7mg
ビタミンK 18μg 1μg 7μg 210μg 5μg 5μg
ビタミンB1 0.71mg 0.54mg 0.95mg 0mg 0mg 0mg
ビタミンB2 0.26mg 0.29mg 0.25mg 0mg 0mg 0mg
ナイアシン 2mg 7.6mg 5.1mg 0mg 0mg 0.1mg
ナイアシン当量 10.2mg 11.6mg 11mg 0mg 0mg 0.1mg
ビタミンB6 0.51mg 0.55mg 0.6mg ‘(0) ‘(0)
ビタミンB12 ‘(0) ‘(0) ‘(0) ‘(0) ‘(0)
葉酸 260μg 59μg 93μg ‘(0) ‘(0)
パントテン酸 1.36mg 1.65mg 0.56mg ‘(0) ‘(0)
ビオチン 27.5μg 34.6μg 11.7μg 0μg 0μg
ビタミンC 3mg Tr Tr ‘(0) ‘(0) ‘(0)
食物繊維総量 17.9g 20.8g 10.8g 0g 0g 0g
16:0パルミチン酸 1900mg 2300mg 4500mg 9900mg 5600mg 8800mg
18:0ステアリン酸 510mg 940mg 3000mg 4000mg 1900mg 5400mg
18:1計 4700mg 6500mg 19000mg 22000mg 17000mg 37000mg
18:2
n-6リノール酸
8800mg 5100mg 23000mg 50000mg 12000mg 41000mg
18:3
n-3α-リノレン酸
1500mg 24000mg 150mg 6100mg 58000mg 310mg
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用

NOTE

今回読んだ本では、ごま油の保存性の高さを説明する根拠として、ビタミンE(トコフェロール)の抗酸化力が強調されていたので、酸化されやすい大豆とえごまとそれぞれ乾燥物と油を比較してみました。

トコフェロールの量は、大豆油>えごま油>ごま油であり、大豆油とえごま油が酸化されやすい油であることから、ビタミンE(トコフェロール)はごま油の保存性の高さを説明することができないと思います。

いま、改めてごま油を見直してみようと思って、本や論文を探しています。ごま油にはリノール酸が40%くらいあり、一部アラキドン酸に変換されることを考えると、とり過ぎはよくないと思います。

しかし、ごま自体、昔から体によい、不老長寿につながる食べものとして重用されてきた歴史があり、そのことをもっと知りたいと思っています。

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

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