ごま油は酸化しにくく、ごま油で揚げたものも酸化しにくい

ごま油はゴマリグナンのおかげで酸化しにくいことが知られていますが、特に、焙煎ごま油は酸化しにくいです。ご自宅で揚げ物をする時は、体のためにも焙煎ごま油を混ぜるのがよいです。揚げ油の30%を焙煎ごま油にすると、加熱前より加熱後の方が酸化が抑えられるようです。

天ぷら

揚げ物を食べる時は油を気にしよう

私は50代後半に入ったので、普段の食事で揚げ物を食べることはほとんどありません。たまに、発作的に食べたくなる時があり、そういう時は好きなように食べます。

しかし、揚げ物にするとカロリーが激増するのと、過酸化脂質が気になるのでなるべく避けるようにしています。

蕎麦屋さんに行っても、もう天丼を頼むことがなくなりました。カツ丼はそれよりも前から頼まなくなっていました。

ところが、揚げ物をする時、ごま油を使うと酸化がかなり抑えられるのです。

外で天ぷらを食べる時は、ごま油のにおいがしたら、なかなかよいお店だと思ってよいかもしれません。そして、もし、ご家庭で揚げ物をする時は、ごま油を30%混ぜた油で揚げましょう。

ごま油は酸化しにくく、揚げた物も酸化しにくい

科学でひらくゴマの世界 (クッカリーサイエンス 福田靖子 建帛社 2013)を読みました。

まずは、最初にグラフを見てください。グラフは本に掲載されていたものを書き写しました。目分量で書き写しているのでアバウトですが、特徴がはっきりしています。

もともとは、ゴマの食品科学という論文に出ています。
下のグラフは、大豆油、ナタネ油、コーン油、ゴマサラダ油(白ゴマ油)、焙煎ゴマ油を摂氏60度で保存して油の重量増加率を比較したものです。

酸化すると重量が増加するので、変わらないものが酸化されにくいものです。見ての通り、焙煎ゴマ油は50日間変化なしです。

食用油の酸化度

室温が60℃になることはありません。室温20℃程度で焙煎ごま油を保存したら一体どのくらいの期間、酸化せずに持つんでしょうね。

焙煎ゴマ油とは、色がついて香りがよい普通のごま油のことです。

ごま油で揚げたお菓子なら長持ち

いつだったか、揚げせんべいを買って来て食べたら古い油の味がしました。よく知られたメーカーのものではありませんでした。賞味期限内でしたが、こんなものかと思いました。古くなった油は、においで分かります。

では、下のグラフを見てください。

これは3種類の油で揚げたクルトンを袋に入れて保存。30日間の過酸化物価を比べたものです。過酸化物価が分からなくても、数字が上がらなければ酸化されていないということです。

ここでも焙煎ゴマ油は抜群の性能のよさを発揮しています。

何となくですが、老舗和菓子屋さんの「かりんとう」なんか、ごま油を使っているお店がありそうです。ごま油を使うと、保存料を入れなくても30日は平気です。

 

クルトンの酸化度

焙煎ごま油で天ぷらを揚げると廃油が出ない

前を通るとごま油のにおいがする天ぷら屋さんで、思い出すのは神保町のいもやさんです。カロリーを気にして油を避けているので、何度も行ったわけではないですが、安くておいしい天丼が食べられます。

毎日天ぷらだけを揚げているので、廃油がたくさん出るんだろうなとふと思ったことがありますが、ごま油を使うと、さし油をすればずっと使えるそうです。

初めて知りました。

こういうことは料理が好きな人は知っておくべきことです。

天ぷら屋の職人は,揚げ油の良し悪しを,油の腰が強いとか,力が強いという言葉で表現する。これは,たくさんの種物を揚げたときや何回も使った後でも,種物がからっと揚がる油を意味している。

江戸の天ぷら屋は焙煎ごま油を好んで使っていた。その理由は,何回揚げてもからっと揚がること,さし油(油をつぎ足すこと)によって廃油が出ないことだとされている。

このように焙煎ゴマ油はフライ(180℃)の熱酸化にも耐える,強い油なのである。

セサモリンがセサモールになる

筆者がその謎に挑戦してみたところ,目からウロコのサイエンスが潜んでいた。

焙煎ゴマ油はフライのときに,リグナンのセサモリンが分解してセサモール(抗酸化成分)が生じる魔法の油だったのである.

セサモールは,フライの温度160~180℃で,2時間後に約0.1%油の中に出て,徐々に分解または気化した。

焙煎ゴマ油は,多くの人が認めているように,油の中では最も抗酸化力が強い。ゴマリグナンとビタミンE,さらに褐変成分メラノイジンの抗酸化補強作用(シネルギスト)によって,油の酸化を防いでいるようである。

東京の老舗天ぷら屋では,ゴマ油を好んで使い,さし油で廃油をほとんど出さない。これは,まさに,さし油でセサモリンが補強され,セサモールが絶えず生じて,油の酸化(劣化)を防ぎ,何回揚げてもからっと揚がるからである。

セサモリンと揚げ油の温度で加熱しているとできてくるセサモールの構造式は次の通りです。分解してできるという感じですね。

また、メラノイジンとは味噌の褐色を出す色素です。メラノジンも抗酸化力があります。

揚げる温度で保温している油に抗酸化成分ができてくる

この説明を読んでいると、揚げ物がすぐにできる温度でごま油を保温していると2時間で抗酸化成分のセサモールが0.1%できてくる。時々、さし油をすると、セサモールが途切れずできてくるということになります。

油って加熱していると酸化していってしまうのだと思っていました。

セサモール

揚げ油の30%を焙煎ごま油にすると、加熱前より加熱後の方が酸化が抑えられる

揚げ物をする時は、焙煎ごま油を混ぜた方がよい、じゃなくて、混ぜるべきですね。

フライや天ぷらの油に焙煎ゴマ油を30%くらい混ぜると香りもよく,からっと揚がると宣伝している。

この理由を実験で確かめたところ,揚げ油の30%をゴマ油に変えただけで,加熱前に比べて加熱後の油のほうが,酸化がおさえられているという驚くべき結果であった。

一方,セサミンは熱にめっぽう強く,分解は少ない。そのためゴマリグナンの健康増進効果は,揚げ調理に使った油でもほとんど変わらない。

では,ゴマサラダ油の場合はどうだろう。この油でフライすると,製造のときに化学反応で生じたセサミノールとビタミンEが油の酸化を防ぎ、揚げ物がからっと揚がる。

一方,油中のセサミノールとセサミンは熱に強いので,天ぷらとともに体内に入る。

ゴマ油はただの油ではなく,抗酸化性が抜群に高く,しかも,健康増進作用も期待される油である。

ゴマ油で揚げたおいしい天ぷらを食べると,知らず知らずのうちにゴマリグナンも体内に入り,健康が増進するというすばらしい油である。

セサミンはサプリメントで名前がよく知られています。セサミノールも構造式を載せておきます。

セサミン

セサミンやセサミノール、上で紹介したセサモリンやセサモールの総称がゴマリグナンです。

NOTE

揚げて時間が経ったコロッケや天ぷらはクタッとして味が落ちているのと、高温にさらした油で揚げたのだから、過酸化脂質が増えて体に悪いのだろうとずっと思っていました。

しかし、焙煎ごま油を30%混ぜた油で揚げれば大丈夫。抗酸化力がとても強いことが分かりました。

天ぷらはカロリー増になります

とはいうものの、揚げ物はカロリーが高いことには変わりがありません。ある年齢を超えた方はほどほどにしておくのがよいです。日本食品標準成分表2015年版(七訂)で調べることができた天ぷらについてカロリーを比較して表にしておきます。

食品100gあたりのエネルギー
天ぷら
バナメイエビ 91kcal 199kcal
きす 80kcal 241kcal
するめいか 83kcal 189kcal
さつまいも 140kcal 221kcal
なす 22kcal 180kcal

だいたいカロリーは2倍になると思っておけば間違いないでしょう。

他の油については、油の種類で紹介した記事まとめをお読み下さい。

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