ごま油には、オメガ3の脂肪酸が100gあたり0.3g程度しか含まれていません。その一方で、リノール酸が100gあたり40g以上を占めます。ごま油に含まれるセサミンは、リノール酸がアラキドン酸に変わることを阻害しますが、リノール酸が多い油であることは間違いありません。
ごま油にどのくらいオメガ3の脂肪酸が含まれているか
ごま油にどのくらいオメガ3の脂肪酸が含まれているのか調べました。下の表の数字は日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用しました。
比較のため、ごま自体の成分も調べました。ごま(乾)を見ると、脂質が50%以上あります。さすが油が多いです。たんぱく質も100gあたり20gあります。ごまは、栄養豊富です。
オメガ3の脂肪酸はわずか0.3%
ところが、ごま油のオメガ3の脂肪酸は、100gあたりわずが0.31gしかありません。これは「ない」に等しい。
リノール酸が40%以上
反対にオメガ6のリノール酸が一番多く、100gあたり40g以上を占めます。次いで、オレイン酸、飽和脂肪酸のパルミチン酸とステアリン酸でほぼ構成されています。ごま油を使っていると、すぐにリノール酸とり過ぎになってしまいます。
食品成分 | ごま/乾 | ごま/いり | ごま/ねり | ごま油 |
エネルギー | 586kcal | 599kcal | 640kcal | 921kcal |
水分 | 4.7g | 1.6g | 0.5g | 0 |
たんぱく質 | 19.8g | 20.3g | 19g | 0g |
脂質 | 53.8g | 54.2g | 61g | 100g |
炭水化物 | 16.5g | 18.5g | 15.6g | 0 |
灰分 | 5.2g | 5.4g | 3.8g | 0 |
脂肪酸総量 | 50.69g | 49.41g | 54.74g | 93.83g |
飽和脂肪酸 | 7.8g | 7.58g | 8.49g | 15.04g |
一価不飽和脂肪酸 | 19.63g | 19.12g | 21.36g | 37.59g |
多価不飽和脂肪酸 | 23.26g | 22.64g | 24.77g | 41.19g |
n-3系多価不飽和脂肪酸 | 0.15g | 0.19g | 0.21g | 0.31g |
n-6系多価不飽和脂肪酸 | 23.11g | 22.44g | 24.56g | 40.88g |
16:0パルミチン酸 | 4500mg | 4500mg | 4900mg | 8800mg |
18:0ステアリン酸 | 3000mg | 2600mg | 3000mg | 5400mg |
18:1計 | 19000mg | 19000mg | 21000mg | 37000mg |
18:2n-6リノール酸 | 23000mg | 22000mg | 25000mg | 41000mg |
18:3n-3αーリノレン酸 | 150mg | 160mg | 170mg | 310mg |
20:4n-6アラキドン酸 | – | 0 | 0 | 0 |
20:5n-3イコサペンタエン酸 | – | 0 | 0 | 0 |
22:6n-3ドコサヘキサエン酸 | – | 0 | 0 | 0 |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂)による |
からだの仕組みを知るとごま油でもリノール酸のとり過ぎはよくないかなと思う
しかし、ごま油にはとても魅力があります。まず、焙煎したごま油もごまサラダ油も、風味がとてもよいです。おいしい。そしてビタミンEは「気のせい」程度、ごくわずかしかありませんが、バツグンの抗酸化力があります。
ごま油で揚げた揚げ物も酸化しにくいです。ごま油についてたくさん記事を書いているので、ぜひ読んでみてください。
セサミンの働きが興味深い
ごま油で一番、興味深いのは、サプリメントにもなっていますがセサミンです。
セサミンは、ごま、ごま油ともに含まれています。セサミンの働きで興味深いのは、リノール酸が体の中でアラキドン酸に変化するのを阻害するところです。
リノール酸とり過ぎがよくないといわれるのは、炭素数18のリノール酸が炭素数20のアラキドン酸に変化すると、炎症を促進するプロスタグランジンの材料になるからです。
そして、プロスタグランジンは、炭素数20のアラキドン酸と、同じく炭素数20の(青魚の脂肪酸で知られる)EPAが同じ酵素によって変化させられてできます。
構造自体は同じで、プロスタグランジンの違いは、炭素の二重結合数の違いだけでした。
このことはプロスタグランジンE2とE3、E1の違いを構造式から調べたという記事に書きました。
アラキドン酸は、たとえば細胞膜のリン脂質にあり、皮膚を切ったりぶつけたりすると酵素が働き、アラキドン酸がプロスタグランジンE2に変化します。
抗酸化力が強いこととリノール酸がアラキドン酸に変換されることは関係ない
ごまやごま油に含まれるセサミンが、どのくらいリノール酸をアラキドン酸に変換するのを阻害する働きがあるのか知りたいところですが、今のところ私にはわかりません。
そして、このことは、ごま油に抗酸化力が強いことと関係ありません。リノール酸は酸化して(劣化して)アラキドン酸になるわけではないからです。
このあたりのこと、ごま油メーカーにぜひとも発表してもらいたいところです。
それまでは、リノール酸が多いなら、なるべく使うのは控えようと考えるのがよいと思います。
ただし、一般的なリノール酸が多い油、大豆油や菜種油に比べると、ごま油にはセサミンというブレーキ役が含まれているので、アラキドン酸にどんどん変換されて行くわけではないことは強調しておきたいことです。
NOTE
ごま油に少し否定的なことを書きましたが、ごまは魅力的です。
ごまは昔から不老長寿のもととして食べられてきました。とんでもなくはるか昔、神農本草経や神仙術(仙人になるための方法)の抱朴子にも出て来ます。
科学的なデータを並べるよりも、長い歴史を経てよいものだといわれている方が信頼できます。
油のかわりにすりごまを使う
ごまにはたんぱく質が多いのですが、カルシウムもとても多いです。いりごま100gあたり1.2gもあります。ほとんど表皮にあります。しかし、表皮はそのままでは消化されません。
いりごまを擦ってすりごまにすると、約半分カルシウムが使えるようになります。すりごまには適度に油気もあり、たんぱく質もあり、食べると満足感があります。
しかも、すりごまの脂質は全体の約50%になるので、ごま油と同じ重量のすりごまを使ったと考えて、リノール酸の量は約50%に減らせます。
昔から、おひたしによくすりごまをかけていましたが、もっといろいろなものにかけてみるとよさそうです。
その他の植物性食品については、農産物の中にどのくらいオメガ3脂肪酸が含まれているかをご覧下さい。