脂肪酸の化学構造式を見た方が油のことをずっと理解できる

油に水素添加するとマーガリンになります。油を構成するのは脂肪酸であり、その脂肪酸には水素添加できる不飽和脂肪酸があり、適当な割合に水素添加するとちょうどよい硬さの油になってバターのようになります。構造式を見ながら脂肪酸の性質を知ると理解が早くなります。

α-リノレン酸

まだ、油の話を始めて数話ですが、構造式を無視しないでながめながら読んだ方が早く理解できるようになる話を書いておきます。

私と同じ文系の方は、きっと化学を抜かして油を理解したいと思うのですが、それは多分とてもむずかしいことです。

油に水素添加するとマーガリンができる?

以前勤めていた会社で、ちょっとした短い文章を書くことになりました。話題は油についてだったのですが、その時読んだ資料がトランス脂肪酸についての話でした。

『マーガリンやショートニングを作るには、油に水素添加するのだが、それが体によくないらしい』

一文でいうとこんな内容の話をまとめる作業でした。

ところが、油に水素添加するという意味がさっぱり分からなくて、書きながら私自身が全く理解できませんでした。

あなたは分かりますか?

それで依頼してきた人に聞いてみたらその人も分かっていなかったのです。こういう仕事、私は嫌いです。

はるか昔に学んだ知識で、油も糖も炭素(C)、酸素(O)、水素(H)だけでできていることは知っていました。そして、その構成ならまず毒にはならないだろうということぐらいは分かります。

しかし、油に水素(H)をつけることができること、それがマーガリンになること。しかも、それが体によくないとは一体どういうことだろう?

その時に感じた疑問が油の話を調べていくことになった一番大きなきっかけです。

構造式を見比べると理解が早くなる

目次通りに記事を読んで来ていただいた方は、この記事を読み始める前にいくつか記事を読んでいただいているので、以下のことをすでに知っています。思い出してください。ちょっとした復習です。

そして、上に書いた、水素添加したらマーガリンになる話を読んでどのように考えますか?

油の構造は、グリセリン(グリセロール)に脂肪酸が3本結合している

この記事で、脂肪酸は油の部品みたいなものだと書きました。

油の構造を知ろう
油は脂肪と同じものです。油には基本的な構造があります。グリセリンと3本の脂肪酸がエステル結合したものです。脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、炭素の長さで性質も違います。油の性質は、結合する脂肪酸によって決まります。

脂肪酸は、炭化水素鎖とその端にカルボキシ基(-COOH)がついた構造をしている

脂肪酸の構造は共通しています。炭素(C)と水素(H)からできた鎖と、その端にカルボキシ基(-COOH)がついています。

脂肪酸には炭素がつながっていて、そこにたくさん水素が結合していることが分かりました。

そしてもう一つ。

不飽和脂肪酸には水素と完全に結合していない炭素がある

不飽和脂肪酸には炭素の二重結合があります。炭素の反応する腕が水素と結合していない箇所があるのです。

これらのことは、この記事から分かることです。

脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸は直線的で炭化水素鎖が長くなるほど融点が高くなります。一方、不飽和脂肪酸は炭素同士の二重結合を持ち、二重結合数が増えるほど融点が低くなります。

そして、次は、油が固体なのか液体なのかという話です。

脂肪酸は長くなるほど融点が高くなる

脂肪酸は炭化水素の鎖の長さが変わります。長くなると融点が高くなります。飽和脂肪酸の場合は、炭素数が10になると、常温で固体になります。

飽和脂肪酸を短いのから長いのまで書いた
飽和脂肪酸は、炭素の余っている腕に水素が全て結合している脂肪酸です。炭素数が少ない、短い飽和脂肪酸は、くさいにおいがあるのが特徴です。また、飽和脂肪酸は、長くなるほど融点が高くなります。飽和脂肪酸は炭素に水素がまんべんなく結合し...

脂肪酸に二重結合があって、さらにその数が多いほど融点が低くなる

二重結合があると脂肪酸が長くても融点が下がります。2個あると融点が氷点下になり、冷蔵庫に入れても液体です。

不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸がある
不飽和脂肪酸は炭素の二重結合を持つのが特徴です。二重結合を1個持つ一価不飽和脂肪酸はオメガ9の脂肪酸が知られており、二重結合を2個以上持つ多価不飽和脂肪酸には、オメガ6の脂肪酸とオメガ3の脂肪酸がよく知られています。不飽和脂肪酸...

以上のことをつなげていくと、油に水素添加したらマーガリンになることが説明できそうではないですか?

不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸にする

もし、「なぜ、油に水素添加するとマーガリンができるんだ?」と思った私が、その後文字だけで説明してくれる本を読んでも、大して理解できなかったと思います。

しかし、構造式を見ながらだったら話は別です。

上で紹介した4つの記事は、それぞれ関係がある脂肪酸の構造式を紹介しながら書いています。

水素をどのように結合させるのか、これまでの記事ではわかりませんが、こんなことが予想できます。

  1. マーガリンは植物性と宣伝されているので、植物油が原料だとすると不飽和脂肪酸が多い液体の油だとわかる。
  2. 水素添加とは、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸にすることだとわかる。
  3. 不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸になると、常温でも固体の油になる。つまり、液体の油がバターのようになる。

マーガリンは、本来常温で液体になる二重結合をもつ不飽和脂肪酸をもつ油からつくられています。マーガリンは冷蔵庫から出したばかりでもバターより扱いやすいですが、それは油の脂肪酸をコントロールして、適度な割合の脂肪酸に水素添加して飽和脂肪酸にしてあるからです。

水素添加すると一定割合のトランス脂肪酸ができます。トランスとは水素がつく位置のことを指しています。すべての二重結合に水素がつけば、それは飽和脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、形が直線的になるので、融点が上がるのと、生理的な影響を持ちます。

このあたりのことは、別記事ですが、油に水素を結合させる、水素添加をする意味はわかりますか?をご参照ください。

油に水素を結合させる、水素添加をする意味はわかりますか?
水素添加は、不飽和脂肪酸にできますが飽和脂肪酸にはできません。不飽和脂肪酸にある炭素の二重結合部分に水素を添加するのです。水素添加されると不飽和脂肪酸は、融点が上がり酸化されにくく保存性がよくなります。つまり、飽和脂肪酸化されます。...

NOTE

油のことを調べ始めた頃、構造式が出てくるのが嫌いでした。それで、なるべく化学式の出てこない本を探して読んでいたのですが、ある時、脂肪酸の構造が炭素数の違いはあるものの、ほとんど同じだということに気がつきました。

すると脂肪酸の性質の違いが、それまではバラバラに感じていたのが、「決まり」があることがわかり、急に理解が進むようになりました。

これは、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でも、似たような脂肪酸の構造式をいくつも見比べたから理解できたのです。文字だけの説明を読んでもきっとわかりませんでした。

もし、あなたが文系で化学の知識に乏しくても、油のことを詳しく知りたいと思うなら、少しガマンして初めから構造式を「ながめる」ことをおすすめします。

そのうち、構造式があった方がよいと気がつきます。そして脂肪酸ってなんて単純な構造なんだろうと思いますよ。

タイトルとURLをコピーしました