短鎖脂肪酸はくさい

食用油のにおいをかいでもくさくありませんが、脂肪酸が短くなるとにおうようになります。ギンナンのにおい、靴下のにおい、汗臭いにおいなど短鎖脂肪酸が原因です。炭素数2から6の短鎖脂肪酸のにおいを調べました。

においをかぐ

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納豆がくさいのは短鎖脂肪酸のせいだ

昨日、納豆の本を読んでいたら、納豆のにおい成分のことが出ていました。納豆のにおいは納豆菌が大豆を分解してつくったにおいです。

納豆

においを構成する成分が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸・・・と出て来て、これはみんな短鎖脂肪酸です。脂肪が分解されたのだなとわかります。

納豆、クサヤ、ギンナン、熟れ寿司などこの種類のにおいは、食品用語で「不精臭」と呼ばれています。もちろん、「不精者の臭さ」「不精する人に出る臭み」から来たことばだそうです。あんまりよい感じはしませんね。

それぞれ、どんなにおいなのでしょう。調べてみようと思いました。

炭素数は2から6

短鎖脂肪酸の生理活性を読むとこのように書かれていました。

短鎖脂肪酸というのは酢酸やプロピオン酸や酪酸などのような炭素数が2から4の脂肪酸のことである。ときに炭素数6までの脂肪酸を短鎖脂肪酸に含めて考えることもある。

これにならって私も炭素数が2から6までの脂肪酸について調べて書きます。

脂肪酸はカルボン酸

また、脂肪酸の構造は簡単で、炭化水素の鎖にカルボキシ基(-COOH)がついたものです。カルボン酸でもあります。Rは特定の元素ではなく、炭化水素の鎖だと思ってください。

下まで読んでいくとすぐに意味がわかります。

カルボン酸

では、炭素数2の酢酸から始めましょう。

酢酸

酢酸は、エタン酸ともいわれます。炭素数は2です。お酢の成分です。特有のにおいがあり、弱酸性です。エチルアルコールが酸化されるとできます。お酒を放っておくと酸化して酢になります。

酢酸は「お酢」のにおい

酢酸のにおいはお酢のにおいです。お酢のにおいは説明する必要がないですね。

酢

酢酸の炭素数は2です。炭素と水素を省略しない構造式と省略したものを載せておきます。

通常は、省略した構造式が書かれます。慣れると省略したものの方がずっと見やすいです。

酢酸

酢酸は生体内で活性化体であるアセチルCoA(アセチル補酵素A)としてさまざまな役割を果たす。(出典

体の中でアセチルCoAは、脂肪酸やコレステロールの材料となり、また、ミトコンドリアの中でクエン酸回路に入る一番最初の物質です。つまり、細胞のエネルギー(ATP)をつくる燃料にもなります。

とても大切なものです。

プロピオン酸

プロピオン酸はプロパン酸ともいいます。プロパンなので炭素数は3です。反芻動物にとってのエネルギー源になります。

哺乳類の大腸やルーメンでは細菌が食物の中のセルロースやヘミセルロースを嫌気発酵し、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を生成しており、これが草食性動物の体内では重要なエネルギー源となっている。(出典

プロピオン酸は刺激的なすっぱいにおい

下図にあるとおり、プロピオン酸の炭素数は3です。プロピオン酸のにおいはどんなものか、かなり深く調べましたが、刺激的なすっぱいにおいだということ以外、わかりませんでした。

プロピオン酸

酪酸

酪酸はブタン酸ともいいます。メタン、エタン、プロパン、ブタンなので炭素数は4です。また、酪酸の「酪」は酪農の酪です。

オンライン漢和辞典を引いてみるとこのように書かれていました。

牛や羊などの乳からつくった飲料。また、ミルク・バター・チーズなどの乳製品。

酪酸はギンナンと足のにおい

酪酸はもともとバターから発見されたそうです。

構造式は下図の通り。炭素数は4です。においについて、ウイキペディアでこのように書かれていました。銀杏(ぎんなん)と足の悪臭だというのですから、かなりくさい。

ぎんなん

バターから得られたのでこの名で呼ばれるようになった。銀杏の異臭の原因でもあり、足の悪臭の原因でもある。

脂肪酸の分解過程で生合成されるほか、バターやチーズ、皮脂に含まれている。(出典

酪酸

吉草酸

吉草酸は、分子式C5H10O2

ヨーロッパ産のハーブ・セイヨウカノコソウ(吉草、学名 Valeriana officinalis L.)から最初に発見されました。バレリアン酸、1‐ペンタン酸、n‐ペンタン酸とも呼ばれます。

valerian

メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンと思い出せば炭素数が5だとわかります。

セイヨウカノコソウはウイキペディアでこのように説明されています。

根や茎を不眠症や精神高揚等に効果がある薬草として用いる。ドイツでは不眠症、精神不安への使用を承認している。

日本では非医薬品に分類される。古くから薬草として利用され、中世では修道院の薬草園で盛んに栽培された。(出典

吉草酸は蒸れた靴下のにおい

吉草酸の構造式は下の通りです。炭素数は5。においはこのように書かれていました。

蒸れた靴下に例えられる臭気を有する。(出典

しかし、もっとすごいのは吉草酸ではなく、どうやら次に書くイソ吉草酸です。吉草酸の記事にこのように書かれています。

足の裏の臭いはこの異性体であるイソ吉草酸が原因である。閾値が非常に低いことから、悪臭防止法の規制対象となっている。(出典

吉草酸

イソ吉草酸

イソ吉草酸も、分子式C5H10O2炭素数は5。吉草酸と同じですが、異性体です。「イソ」とは、異性体を示す接頭語です。異性体とは同じ数、同じ種類の原子を持っているが、違う構造をしている物質のことです。

具体的には、直鎖の炭化水素の端から2番目の炭素原子にメチル基(-CH3)の側鎖をもつ異性体を示します。確かに今まで描いてきた脂肪酸と形が違っています。

イソ吉草酸は、お父さんの靴下のにおい

多くの植物、精油に見られる天然の脂肪酸だそうですが、イソ吉草酸自体は、お父さんの靴下のにおいの本質だそうです。

靴下

さらにこのようにも書かれていました。

チーズもしくは汗、足、加齢による口臭のにおいのような不快感を伴う刺激臭がある(出典

日本経済新聞(2011/5/20)に足のにおい 何とかしたい!! 効果のある対策は?という記事があり、実際に履いた靴下のにおいを測定した話がでています。

イソ吉草酸

カプロン酸

カプロン酸は炭素数6の脂肪酸です。ヘキサン酸とも呼ばれます。

メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンです。6番目です。ヘキサンは食用油を抽出するときに溶剤として使われます。

ちなみにヘキサンのにおいは灯油のようなにおいです。ベンジンの主成分でもあります。(出典

それが脂肪酸であるカプロン酸(ヘキサン酸)になると。

カプロン酸はヤギの体臭

ウイキペディアにはこのように書かれていました。

やぎ

きわめて不快な臭いを有する。カプリ (capri) とはヤギ (Capra aegagrus) のことであり、ヤギの毛の油の分解物から得られたことを意味する。すなわちカプロン酸はヤギの体臭様の臭気を持つ。(出典

カプロン酸

カプロン酸には吉草酸とイソ吉草酸の関係のような異性体は7個ありますが、それぞれのにおいは調べにくくここでは触れません。

まとめ

普段、使う油はほとんどにおいがありません。肉や魚の脂身も同じです。脂肪はグリセリド(グリセリン)に脂肪酸が3本結合してできています。

脂肪はにおいの元になる

脂肪が分解され、さらに脂肪酸が短く切られるとにおうようになります。

大豆についた納豆菌が大豆の脂肪を分解し、脂肪酸が短鎖脂肪酸に短く切られて納豆のにおいをつくります。

同じように、お父さんの足の裏のにおいは、お父さんの足の裏から直接出ているわけではなくてしみじみよかったです。(笑)

足の裏のにおいの仕組みも同じで、足の裏から出た汗の中に含まれる脂肪や脂肪酸が、皮膚についている常在菌で分解されて、短鎖脂肪酸になって足のにおいに変わるのです。

同じ種類のにおいなのに、納豆は好ましく食欲を刺激されるように感じ、足のにおいは不快だというのは面白いです。ちなみに、この種のにおいは、外国人の大半は好まず、しかめっ面をするそうです。

しかし、不思議なことに、同じ種類の短鎖脂肪酸によるにおいのきついチーズを日本人は敬遠するのに、西欧人は好んで食べます。

くさいものは慣れる

昔のことを思い出すと、もう酒を飲むのが当たり前になった20代のある日、初めてくさやを口の中に入れたとき、ものすごく違和感がありました。びっくりしたのを覚えています。

正直、こんなもの食べてよいのかと思いました。しかし、今は好んで食べるわけではないですが、出てくれば普通に食べます。

においの感じ方は学習によって変わるのかもしれません。私の足のにおいも慣れるとよいにおいに感じられるのでしょうかねえ?

体の表面にはたくさんの常在菌が棲んでいるらしいです。一時流行った滅菌とか殺菌をしてはいけないそうです。菌叢が壊れてしまって体にもよくないそうです。しかし、常在菌の種類をコントロールできるとにおいが変わりそうで面白いです。案外、近い将来、そんなビジネスが登場するかもしれませんね。

このブログを書きながら、化学を少し学べたのでよかったと思います。納豆のにおいとお父さんの足の裏のにおいが脂肪の分解による同類のにおいだと理解できるようになりました。

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