脂肪のとりすぎとガン

このブログを書き始めるまで、脂肪はC(炭素)H(水素)O(酸素)からできていて、炭水化物の仲間ぐらいにしか思っていませんでした。農業に興味があったので、窒素(N)のやり過ぎが作物の病気の原因になることは知っていました。

そして、その窒素が入っているタンパク質は、アレルギーのもとになる少し面倒なところがあるので、タンパク質のとりすぎが一番よくないだろうと思っていました。

脂肪については、肥満になる以外に害はないと思っていました。

しかし、癌と脂質栄養というとても短くまとめられた論文を読んで、唸ってしまいました。たいていの人は仕事のことが毎日頭の大部分を占めていると思いますが、何を食べるのかということも同じように考えなければいけないなと思いました。

この記事では、読ませていただいてとても重要だと思ったことを書いておきます。

高脂肪食とガン

以前、日本人は肉を食べて米を食べなくなったという記事で、日本人の食生活は、カロリーは増えていませんが、その分、米が減り、肉が増えて脂肪が増えた話を書きました。

自分が年をとってきているせいかもしれませんが、ガンの話を聞くことが増えたのは日常的に感じることです。特に、大腸ガン、乳ガンや肺ガンの話が増えたように感じます。

この論文によると欧米型の ガン(大腸ガン、乳ガンならびに前立腺ガン)の発生には食事性因子が重要な影響を及ぼしていることが 動物実験や人での疫学的研究によって示されており、栄養が関与するガン(Nutrition related cancers)と呼ばれているそうです。もちろんその栄養とは脂質です。

脂質といういい方は、三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の中での呼び方なので、脂肪と読みかえていただいても問題はないと思います。

疫学的研究は、人間集団を対象にして研究しますから、相当な人数について調べたということです。

1942年には高脂肪食が乳癌の発生を促進することが動物実験で示され、大腸癌においても高脂肪食の発癌増強作用が1974年に報告され、それ以降も同様の結果が多く報告されている。

疫学的には脂質摂取量と乳ガンの死亡率との間には強い相関があることが1973年に報告されており、さらに1967年に大腸癌についても報告された。

高脂肪食は、動物実験でも疫学的研究でも乳ガン大腸ガンに関係があることが、今から40~70年も前に分かっていました。1973年頃の日本人の食生活は、今よりまだ和風のメニューが多かった記憶があります。

脂質の種類とガン

高脂肪食がガンと関係があることが分かりましたが、脂質にも種類があります。脂肪は脂肪酸によって性質が決まります。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸についてはこのように書かれていました。

脂質の種類によっても発癌への影響は大きく異なる。ヤシ油などに多 く含まれている飽和脂肪酸の餌中の含有量を増すと、高カロリー食としての影響を受けて実験的には乳癌や大腸癌の発生を増強するが、飽和脂肪酸自体には癌の発生を促進する作用が無いこ とが動物実験で示されている。

飽和脂肪酸自体には、ガンの発生を促進する作用がないというのは意外でした。高脂肪食はよくないが、飽和脂肪酸自体は悪くはないということです。

一価不飽和脂肪酸

また、オリーブオイルについては、このような見解が示されていました。

イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸地方では油脂(オリーブ油)を多く摂取しているにもかかわらず、乳癌の発生が低率であり、オリーブ油を多く使用する地中海料理が健康に良いとされ、注目されることとなった。その後の実験的研究の結果、彼らが多く摂取しているオリーブ油は植物油だがリノール酸を多く含んでいないために癌の発生を促進しないのであり、オリーブ油自体には癌の発生に対する抑制作用は無いであろうとの結論となった。この乳癌発生が低率である一因として、彼らが好んで飲む赤ワインに含まれている成分(resveratrol)が乳癌の発生を抑制している可能性が推察されている。

赤ワインは、日本では1995年頃から知られるようになった「フレンチパラドックス」という説の影響でよく飲まれるようになりました。、フレンチパラドックスとは、フランス人が相対的に喫煙率が高く、飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を摂取しているにもかかわらず、心臓病に罹患することが比較的低いことで、その原因は、一杯の赤ワインであり、その中に含まれているポリフェノールであるレスベラトロールだといわれています。

レスベラトロールはサプリメントとしても販売されています。何年か前にちょっとしたブームになりました。

しかし、よく読ませていただいているWIREDにも記事がありましたが(赤ワインは健康にいい、わけではない:研究結果)赤ワインの効果を疑問視する記事をよく見かけるようになりました。元の記事は、WIREDにも記載されていましたが、Resveratrol Levels and All-Cause Mortality in Older Community-Dwelling Adultsのようです。

この論文では、レスベラトロールの効果について実験されていないようなので、赤ワイン以外に理由があるのかもしれないと思うことにしました。

オメガ6のリノール酸

さらに、必須脂肪酸であるオメガ6のリノール酸についてはこのように説明されていました。

 リノール酸を多く含む植物油(コーン油、ヒマワリ油など)は飽和脂肪酸を多く含むココナツ油な どと比べ、実験動物において乳癌や大腸癌の発癌を促進することは、乳癌ではすでに 1971 年に、また大腸癌では 1976 年に判明していた。しかしながら、これら食品として使用されている油脂には各種の脂肪酸が含まれており、どの脂肪酸が植物油の発癌増強作用の本態なのかについ ては明らかではなかった。我々は高純度のリノール酸と飽和脂肪酸であるステアリン酸を用いて、 大腸発癌への影響について詳細に検討を行い、リノール酸の大腸発癌増強作用とその機序の一端を明らかにした。その後の研究によってリノール酸は癌の発生を促進するのみならず、癌の増殖や転移までも促進することが明らかとなっている。

リノール酸は、相変わらず分が悪いです。しかし、40年前にすでにこんな話があったとは。

EPAとDHA

イヌイットの食生活は、野菜がなく魚や海獣を食べているのに成人病が少ないことがよく知られています。EPAとDHAについて、このように書かれていました。

1986年にReddyとMaruyamaはn-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚油を用い、実験的大腸発癌に対する 抑制作用を初めて報告した。我々は高純度のEPAを用いてラットでの実験的大腸癌の発癌をEPAが抑制することを1988年に報告するとともに、乳癌の発癌抑制についても報告した。我々はその後の研究によって、n-3系脂質であるα―リノレン酸、EPAならびにDHAは発癌を抑制するのみならず癌の増殖や転移までも抑制することが明らかにしてきた。さらにEPAとDHAではどちらがより発癌抑制作用が強いかについてもN-methyl-N-nitrosourea誘発の乳癌モデルを用いて検討を行ったところ、このモデル実験ではDHAの方がEPAよりも強い発癌抑制作用を示した。

いまさらですが、日本人は昔は肉よりも魚を食べてきたので、ガンが少なかったのかなと思います。漁獲量が減って、10年前はとても安かったイワシやサンマがとても高くなり、マグロの刺身は、値段が2倍以上になりました。今は豚肉も値上がりしていますが、それでも、魚の方が高いです。魚がずっと食べられる国であってほしいです。

まとめ

この論文で一番大事なのは、高脂肪食がよくないということです。今の食事は、カロリーはそれほど高くないですが脂肪の割合が高く、それが問題です。

油の脂肪酸組成については、その次の問題で、まずは毎日の食事から脂肪の割合を減らすようにした方がいいなと思いました。

食品に関する学説は、リノール酸や赤ワインに限らず、評価が短い間にひっくり返ることがよくあります。食べ物は薬ではないので、特定の食品や成分を持ち上げるブームを鵜呑みにしないで自分でもよく調べてみるのがよいと思います。

私が書いている記事も間違いがあるかもしれません。是非、ご自分でもいろいろ確かめてください。

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