細胞膜を構成するリン脂質には、グリセリンを骨格とするグリセロリン酸と、スフィンゴシンを基本骨格とするスフィンゴ脂質の2種類あります。
リン脂質は細胞膜を構成する脂質です。
有機化学(第2版) (ベーシック薬学教科書シリーズ 化学同人 2008)にはこのように書かれています。リン脂質には2つのタイプがあります。
リン脂質には極性の高いリン酸が含まれるが,中性脂肪と同様にグリセロール骨格をもつものをグリセロリン酸,スフィンゴシンを基本骨格とするものをスフィンゴ脂質とよぶ.
グリセロリン脂質
グリセロリン脂質について説明していきます。
グリセロリン脂質は生体膜のおもな成分であり,構造的にはグリセロール-3-リン酸の誘導体である.
グリセロール-3-リン酸は下図のような構造です。グリセリンにリン酸が1個結合しています。
さらに、続きがあります。
グリセロール-3-リン酸の二つのヒドロキシ基に脂肪酸がエステル結合したものをホスファチジン酸(1,2-ジアシルグリセロール-3-リン酸)とよび,そのホスファチジン酸のリン酸部がさらにエステル誘導化されたものを総称してグリセロリン脂質とよぶ.
ヒドロキシ基は-OHのことです。グリセロール-3-リン酸には、2個ヒドロキシ基がありますが、そこに脂肪酸がエステル結合をすると、下図のホスファチジン酸になります。
R1とR2は脂肪酸の炭化水素部分を表しています。
さらに、ホスファチジン酸のリン酸にコリン(緑色の破線で囲まれた部分)が結合すると、よく耳にするレシチンになります。
レシチンはグリセロリン脂質の一つです。卵黄や大豆に豊富に含まれています。
スフィンゴ脂質
次にリン脂質のもう一つのタイプ、スフィンゴ脂質について。
スフィンゴ脂質はグリセロールの代わりにスフィンゴシンを基本骨格としたもので,生体膜の主要な成分の一つである.
スフィンゴシンのアミノ基が長鎖脂肪酸でアシル化されたものはセラミドとよばれ,脳や神経の膜の構成成分として重要である.
スフィンゴシンは、下の様な構造を持ちます。ウイキペディアにはこのような説明が書かれています。
18個の炭素を持つ長鎖アミノアルコールで、1本の不飽和炭化水素鎖を含んでいる。(出典:スフィンゴシン)
さらに、スフィンゴシンのアミノ基(NH2)に長鎖脂肪酸からOH基を取り除いて結合させた(アシル化)ものがセラミドになります。
セラミドの1位のヒドロキシ基(-OH)に酸性基が結合したものが、スフィンゴ脂質と呼ばれるものになります。
このセラミドの1位ヒドロキシ基に酸性基Xが結合したものをスフィンゴ脂質とよぶ.1位のヒドロキシ基に極性基であるリン酸をエステル結合させ,さらにそのリン酸にコリンをエステル結合させた分子がスフィンゴミエリンであり,神経軸索のミエリン鞘に多く存在する.
スフィンゴ脂質の一例として、スフィンゴミエリンを取りあげます。