脂質は脂肪と同じものではない

脂質=脂肪ではありません。脂質は細胞や組織にある「水に溶けない」ものであり、脂質の一つが脂肪です。脂肪は油のこと。脂肪は脂質に含まれます。コレステロールも脂質です。脂質は他にいくつもあります。

バター

脂質=脂肪だと思っていた

私は油の話を書き始めたばかりの頃、脂質=脂肪だと思っていました。三大栄養素は、タンパク質、炭水化物、「脂質」と呼ばれるからです。

実際、コトバンクの三大栄養素でもこのように書かれています。本によって、微妙に違いがあります。

栄養素のうち、動物の体をつくるもととなったりエネルギー源となったりする、タンパク質・糖質・脂質のこと。

(出典:精選版 日本国語大辞典)

動物の栄養素のうち、炭水化物・脂肪・タンパク質の三つをいう。生物体の構成物質およびエネルギー源となるもの。

(出典:大辞林 第三版)

ここだけ読んでいると、どちらでもよいのではないかと思います。ところが脂質は脂肪だけを指しているのではありません。

脂肪は脂質で、コレステロールも脂質、…同じもの?

脂肪(油)は脂質で間違いありません。ところで、生活習慣病の話に必ず出てくるコレステロール。コレステロールも脂質なのです。ご存知でしたか?

さて、ここで問題。脂肪(油)とコレステロールって同じものですか?

脂質が脂肪(油)であると思い込んでいると、混乱します。実は、私がそうでした。脂肪(油)とコレステロールの違いが分からない人は案外多いのではないかと思います・・・。

もちろん、油とコレステロールは別なものです。なぜ、違うものが同じ脂質と呼ばれるのでしょう?

脂質は脂肪(あぶら)を含む

有機化学(第2版) (ベーシック薬学教科書シリーズ 化学同人 2008)には、脂質についてこのように書かれています。この本は文系の私でも読みやすい本です。

脂質は水に溶けない天然有機化合物の総称

脂質は字が示すように「脂=あぶら」であり,水に溶けない,細胞や組織からベンゼンなどの無極性有機溶媒で抽出することによって得られる天然有機化合物を総称して脂質という.

脂質は物理的な性質(水に対する溶解度の低さ)のみを指標にして定義されるため,いろいろな化学構造をもつ分子が含まれ,大きく二つのグループに分けられる.

すなわち,「エステル結合やアミド結合をもち,加水分解が可能なもの」と,「加水分解されないもの」である.

教科書にはどうしても知らないことばが出てくるものですが、ここで大切なのは、黄色のラインマーカーを引いたところです。強調しておきましょう。

脂質は、水に溶けない、天然有機化合物。

有機化合物とは、炭素を含む化合物のことです。(出典:有機化合物脂肪(油)もコレステロールも炭素を含む化合物です。

また、上の文中に、エステル結合やアミド結合…とわかりにくいことばが出て来ました。これは別記事で簡単に説明します。下にリンクを置いておきます。

脂質は細胞や組織にある「水に溶けない」ものと定義されています。

脂肪(油)は間違いなく脂質ですが、「水に溶けない」ものは他にもあります。しかし、まず、脂肪(油)は脂質であること。脂質は、脂肪を含むことばだと理解しておきたいです。

脂肪は脂質である。脂質は脂肪を含むもっと大きなことば。

図で表すとこのような関係です。

脂質と脂肪

脂肪の形を覚えておこう

脂肪(油)について、下図を見てください。グリセリンに脂肪酸が3本結合しています。脂肪の形は決まっています。

脂肪酸

具体例として、実際の構造式を1つ書いておきます。今は意味がわからなくてもよいです。へえー、こういう形なんだとながめて下さい。

ココアバターの組成

脂質の形は一般化できない

脂肪(油)以外に「水に溶けない、天然有機化合物」である脂質は、他にいくつもあります。

もの(物質)が違えば、それぞれ形が違います。そのため、「これが脂質の形ですよ」と一般化することはできません。

脂質はいろいろある。それぞれ脂肪とは形が違います

脂肪以外の脂質として、有機化学(第2版)には下に書いたものが紹介されていました。それぞれ、リンク先には簡単な説明を書きました。また、リンク先には必ず構造式が載せてあります。

見ていただく場合、必要なことは、脂肪(油)との形の違いを確認していただくことだけです。ああ、脂肪とは違う物質なんだ!と思って下さい。

それ以外は、いま必要ではありません。

NOTE

ます、上で引用した文中に出てきた、エステル結合とアミド結合について別な記事を書いて簡単に説明しました。

脂質=脂肪(油)だと思っていた私は、コレステロールも脂質であると知ってすごく困りました。何となくコレステロールは油と近いものなのだろうと思っていたのですが、コレステロールがどんなもので、どこに存在するのかさっぱり分かりませんでした。

その後、コレステロールの構造式を初めて見た時の衝撃は忘れられません。脂肪(油)とは似ても似つかない形をしています。

文系の私は、化学式、いや、構造式を避けてことばだけでなんとか油を理解しようとしていたのですが、それはできない相談らしいと思うようになったきっかけです。

食品の油と、コレステロールを理解するために必要な化学の知識はそれほど多くはありません。そう思って、化学の記事も嫌がらずに読んでいただければと思います。

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