短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞が増殖するための栄養だった

食物繊維をヒトは消化できませんが、かわりに腸内細菌が短鎖脂肪酸に分解します。短鎖脂肪酸は、大腸上皮細胞のもっとも重要なエネルギー源となり、血液から送られてくるものよりもずっと依存度が高いです。

短鎖脂肪酸はクサイで短鎖脂肪酸のことを少し書きました。加齢臭について調べていたので、においのことしか書いていなかったのですが、つい最近、短鎖脂肪酸は、腸内でとても重要な働きをしていることが分かりました。

これは是非書いておかなければ。

食物繊維は、腸内をきれいにして腸内細菌のえさになるという話は知っていましたが、腸内細菌で話は終わらず、そこでつくられた短鎖脂肪酸は、大腸の上皮細胞のエネルギー源になるというのです。大腸の上皮細胞は生まれ変わりが早く1週間程度で入れ替わってしまいます。

今まで、こんにゃくは鍋物やおでんに入れるものぐらいにしか考えていませんでしたが、最近、増えている大腸がん対策にこんにゃくを食べるようにしようと思うようになるかもしれません。

この記事では、難消化性糖類、いわゆる食物繊維が大腸の上皮細胞のエネルギー源になるまでの話を書きます。

大腸は反芻動物の胃と同じ?

ヒトの大腸には腸内細菌がたくさん棲んでいますが、ウシやヒツジのような反芻動物の胃の中にも細菌がたくさん棲んでいます。反芻胃は4つありますが、その第1胃に細菌がたくさん棲んでいてセルロースやヘミセルロース、リグニンなど多くの繊維性物質を分解して酢酸、プロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸にします。(反芻胃のしくみ

反芻動物は短鎖脂肪酸を主要なエネルギー源にして生きています。

一方、ヒトの場合は、消化酵素で消化できないいわゆる食物繊維は、便通をよくしたり、腸内細菌のえさになるので間接的に腸内環境を整えると聞いていました。

私は、多分、一度も便秘になったことがないので、食物繊維が大切かもしれないと今まで考えたことがありませんでした。

ヒトの腸内細菌は、反芻動物と同じように食物繊維を分解して酢酸、プロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸をつくります。

今回読んだとても面白い論文短鎖脂肪酸の生理活性によれば、魚類や両生類、は虫類、鳥類、ほ乳類の消化管内に細菌が検出されていて、しかも、短鎖脂肪酸が同じような濃度で検出されているそうです。脊椎動物に共通する性質のようです。

短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞に吸収される

大腸内でできる短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸です。その95%以上が吸収されます。吸収の過程で短鎖脂肪酸の一部は大腸上皮細胞に消費され、残りの大部分が肝臓で代謝され、ほんのわずかの部分が末梢組織に回ります。

短鎖脂肪酸は、大腸上皮細胞のもっとも重要なエネルギー源となり、これは血液から送られてくるものよりもずっと依存度が高いそうです。

短鎖脂肪酸は、大腸上皮細胞のエネルギー源になるほか、からだ全体のエネルギーにも貢献します。また、肝臓や末梢での脂肪合成の材料にもなります。

短鎖脂肪酸の作用

短鎖脂肪酸、いや、脂肪酸は、基本的にトリグリセリドを構成する材料ぐらいにしか思っていなかったのですが、短鎖脂肪酸は大腸内でいくつか作用を持っています。

大腸粘膜の血流を増やす

短鎖脂肪酸が大腸粘膜に触れると粘膜の血流量が増えます。血流が増えると酸素の供給も増えます。短鎖脂肪酸がたくさん粘膜から中に入っても、血流が増えていれば、滞ることなく必要なところに流れていきます。

腸上皮の増殖促進作用

短鎖脂肪酸は、上皮細胞を増殖させます。今までの話の流れなら、短鎖脂肪酸が直接触れた部分を刺激するように思えますが、大腸を刺激したのに小腸の上皮細胞を増殖させる働きもあり、短鎖脂肪酸の刺激は神経を伝達するようです。

大腸粘膜からの粘液分泌に対する作用

大腸の粘膜には粘液を生産している細胞がたくさんあります。短鎖脂肪酸は、大腸粘膜からの粘液放出をさかんにします。

消化管運動に対する作用

短鎖脂肪酸を回腸内にいれると回腸の蠕動運動が充進します。回腸は、小腸の最後の部分です。この反応は大腸からの逆流を防ぐ反応だと考えられています。もちろん大腸でも短鎖脂肪酸があると収れんして内容物が肛門の方へ向かいます。

膵臓外分泌への作用

膵外分泌細胞には、短鎖脂肪酸に反応して酵素を放出する仕組みがそなわっているそうです。ただ、実 際に大腸のなかに短鎖脂肪酸を入れた ときに起こる膵液や酵素の分泌充進は、吸収された短鎖脂肪酸が膵臓 に達 して刺激して起こる直接的な作用というよ りは、大腸粘膜にある自律神経系によって膵外分泌細胞に伝えて起こさせた間接作用ではないかと考えられています。

短鎖脂肪酸が、エネルギー源になるばかりでなく、こんな信号物質のような役割を果たしているとは。今までは食物繊維がこんな変化をするなんて考えたこともありませんでした。

NOTE

さて、食物繊維として何を食べましょうか?食べ応えがあるからこんにゃくでも買ってきましょうかね。こんにゃく上野屋さんの腸力アップを見ると、こんにゃくと短鎖脂肪酸のことを説明してくれています。

そうそう、ところてんもありました。ところてんは寒天からつくります。寒天は、ほぼ100%食物繊維である。という記事も書きました。

寒天は、ほぼ100%食物繊維である。
寒天のことを知りたいと思いました。食物繊維が気になっているのです。しかし、似たような「ツルン」とした食感のものでゼラチン、葛(くず)があることを思い出しました。栄養成分をはじめ、どんな違いがあるのか。そして食物繊維の働きについて調べました。