中鎖脂肪酸は体にたまりにくくインスリンも効きやすくなる

中鎖脂肪酸は、炭素数8~10の脂肪酸で、中鎖脂肪酸からできた油は胃の中でほぼ、グリセリンと脂肪酸に分解されます。ミトコンドリアの中までそのまま入っていくのでエネルギー源になりやすく体にたまりにくい性質があります。また、糖尿病の改善に効果があり、膵臓のβ細胞を直接刺激してインスリン分泌を促し、さらに、脂肪細胞でのPPARγの発現を増加させ、インスリンの感受性を高めるアディポネクチンを増やします。ココナッツオイル

脂肪の功罪と健康(人と食と自然シリーズ)を読みました。

その中に、中鎖脂肪酸のことが書かれていました。いままで中鎖脂肪酸についてあまり興味を持っていなかったのですが、読んでみるととても面白かった。

中鎖脂肪酸の記事を解説しながら紹介しましょう。

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炭素数8~10の脂肪酸

中鎖脂肪酸は炭素数8~10の脂肪酸で、炭素同士の二重結合を持たない飽和脂肪酸で、特有のにおいがします。

最初に中鎖脂肪酸についてサイズ(長さ)を知っておきましょう。

中鎖脂肪酸(medium-chain fatty acid : MCFA)は炭素数8~10を持つ脂肪酸を指しており,その特異な吸収特性から,脂肪の消化吸収能力が低下している患者に対する効率的なエネルギー補給源となる経腸栄養剤の脂肪源として用いられてきた。

炭素数8から10の脂肪酸は、二重結合のない、いわゆる飽和脂肪酸です。毎日使っている食用油に含まれる脂肪酸は、炭素数18のものがとても多いです。比べるとだいぶ短いです。

中鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸ではないがにおいはあるぞ

ただ、脂肪酸は短くなると「におい」がするのです。それも足のにおいとか、生乾きの洗濯物のにおいとか、うれしくないにおいが・・・。

以前、短鎖脂肪酸はくさいという記事を書きましたが、中鎖脂肪酸もやはりよくないにおいがあります。

  • カプリル酸は、「常温常圧においては、弱い不快な腐敗臭を持つ油状の液体」(出典)「汗臭」(出典
  • ペラルゴン酸は、「使い古した食用油に似た不快なにおい」(出典
  • カプリン酸は、「汗臭」(出典

中鎖脂肪酸からできた脂肪はすぐに分解される

中鎖脂肪酸とグリセリンからできた油は、胃でほぼ、脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸でそのまま腸の膜を通過し、肝臓に送られ、ミトコンドリアの膜もそのまま通過します。

中鎖脂肪酸は、食用油の脂肪酸で一番多い炭素数18の脂肪酸と比べると代謝の過程がかなり単純です。

すなわち,
①胃リパーゼにより速やかに加水分解され,胆汁酸ミセルへの溶解を介さずにそのまま小腸上皮細胞へ吸収される。

②吸収後,TG再合成には利用されず,血流に放出され門脈を経て肝臓へ取り込まれる。

③肝臓においてミトコンドリア膜通過にカルニチン依存性輸送系を必要としない,という特徴がある。

①から③を読んで、「なるほど」と思える人は、相当知識がある人です。私はすぐに引っかかって読み進むことができなくなりました。あなたはいかがですか?

まず、これはグリセリンに中鎖脂肪酸が3本ついたトリグリセリド(TG)の消化の話です。トリグリセリドは、脂肪つまり油のことです。

胆汁酸ミセルへ溶解されない

油はリパーゼで分解されて胆汁酸ミセルへ溶解されずに、直接小腸上皮細胞へ吸収される・・・。さらに、吸収後TGに再合成されない・・・。

中鎖脂肪酸でできた油は、普段使っている油に比べて消化過程を、かなりショートカットしているのは確かです。しかし、それを具体的にイメージしようとすると、すごくあやふやになってしまう。

もう少し詳しく知りたいので、文献を探しました。中鎖脂肪酸の栄養学的研究一最近の研究を中心に―というとても詳しい論文が見つかりました。

詳しくとてもわかりやすいです。

中鎖脂肪酸だけからなる中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(MCT)を摂取すると,ロの中で舌リパーゼの分解を受けるが,その割合は長鎖脂肪酸に比べるとかなり多い。

また,胃内に入ると胃リパーゼや胃酸での分解を受け,殆どのMCTがグリセリンと3つの中鎖脂肪酸に分解されることがわかってきている。

これは,中鎖脂肪酸が水に親和性が高く,加水分解しやすいためであると推測されている。従って,十二指腸に到達した時には,既にMCTの殆どが中鎖脂肪酸としての遊離脂肪酸のかたちで存在することから,膵リパーゼの分解を必要としない。

また,中鎖脂肪酸は水に親和性が高いことから,胆汁酸とミセルを形成することなく,糖質やタンパク質の分解物であるグルコースやアミノ酸と同様に門脈を通って肝臓に直接運ばれる。

このことは,LCTのように,十二指腸でのトリアシルグリセロールの分解を必要としないことを示しており,脂肪分解酵素である膵リパーゼや脂質成分のキャリアである胆汁酸なしで吸収できることを意味している。

(出典:中鎖脂肪酸の栄養学的研究一最近の研究を中心に―)

中鎖脂肪酸だけからなる油、MCTは、胃でほとんどグリセリンと中鎖脂肪酸に分解されます。

文中に出てくるLCTは(Long Chain Triglyceride)のことで、長鎖脂肪酸による油のことです。

普段食べている食品に含まれている脂肪は、おもに炭素数18の長鎖脂肪酸でできています。こちらの場合は、十二指腸で膵リパーゼによって分解され、2本の脂肪酸と1本脂肪酸をつけたグリセリン、モノグリセリドになります。

そして、胆汁酸が脂肪酸とモノグリセリドをくるんでミセルをつくります。ミセルは径が小さいので腸から吸収されやすくなります。もしミセルにならないと・・・水と油を混ぜることを思い出して下さい。油は油でまとまって大きくなり、吸収できません。

胆汁酸ミセルの形で小腸の微柔毛に運ばれた脂質成分はほとんどが小腸上部の空腸から吸収されますが、胆汁酸自体はすぐには吸収されず、脂質成分だけが吸収される特徴があります。

そして、小腸上皮細胞に吸収された脂肪酸とモノグリセリドは、小腸上皮細胞内で再びトリアシルグリセロールに再合成されます。

小腸膜をそのまま通過

つまり、トリアシルグリセロールは小腸膜を通過するために一旦は分解されるのですが、体の中に入ると、再びトリアシルグリセロール、油として運ばれることになります。再合成されたトリアシルグリセロールは、一緒に入ってきたコレステロールやリン脂質とともに小さなカイロミクロンとなり、血液中を流れていきます。

一方、MCTは、胃から十二指腸に来た時は、すでにバラバラになっていて、膵リパーゼによる分解が必要でなく、また、脂肪酸の長さが短いためミセルにくるまれる必要がなく、そのまま小腸膜を通過し、カイロミクロンにくるまれる必要がなく、そのまま血液中を流れていきます。

長鎖脂肪酸がついたトリアシルグリセロールが小腸膜を通過するために、2本の脂肪酸と1本の脂肪酸がついたグリセリンに分解されることを考えれば、中鎖脂肪酸のサイズは、小腸膜を通過するために、十分に小さいことがわかります。

ふたたび脂肪の功罪と健康(人と食と自然シリーズ)に戻ります。

中鎖脂肪酸は燃えやすい

中鎖脂肪酸は一般的な長鎖脂肪酸に比べてミトコンドリアの中まで障害なく入って来るので、速やかにβ酸化されてエネルギー源となって体に蓄積されにくく、加熱調理を考慮して作られた中長鎖脂肪酸トリグリセリド(MLCT)でもその性質は変わりません。
中鎖脂肪酸は速やかにβ酸化を受けて炭素数2のアセチルCoAになります。

そのため速やかにβ酸化を受けてエネルギー源となり,長鎖脂肪酸と比較して,食事誘発生体熱産生の上昇が高い,などの作用が臨床研究で認められている。

また,動物実験やヒトの臨床試験において,長期摂取による体脂肪蓄積抑制効果が報告されている。

中鎖脂肪酸がβ酸化を受けやすいことについては、上で引用した「③肝臓においてミトコンドリア膜通過にカルニチン依存性輸送系を必要としない,という特徴がある」が関係あります。

このことは、以前書いた記事、脂肪はエネルギーになるためにβ酸化されアセチルCoAまで分解されるで説明しています。

脂肪酸は細胞の中で補酵素A(CoA)によって運搬されています。

しかし、脂肪酸がミトコンドリアの中に入るために、一度補酵素A(CoA)から外れてカルニチンに結合します。そしてミトコンドリアの外膜と内膜を通過します。

ミトコンドリアの中に入ると、カルニチンから外れて、再び、補酵素A(CoA)と結合します。

中鎖脂肪酸は、この過程をすっ飛ばして、ミトコンドリアの中に入ることができるのです。ミトコンドリアの中では、β酸化が行われます。

β酸化は、脂肪酸を炭素数2個ずつ短く切って、アセチルCoAをつくることです。アセチルCoAはとりあえずエネルギー源になります。

アセチルCoA

中鎖脂肪酸からできた油がエネルギー源になりやすい、つまり、摂取すると体に蓄積するよりも燃えやすい性質がわかります。

しかしながらMCFAを食用油として利用するには,発煙点が低く泡が立ちやすいなどの欠点があったことから,加熱調理適性を改善する目的でMCFA-TGと長鎖脂肪酸を組み合わせた中長鎖脂肪酸トリグリセリド(MLCT)が開発された。

健常人を対象に厳密な食事管理下で3ヵ月間行ったダブルブラインド試験では,大豆油となたね油を単純ブレンドした調合油と比較して,MLCTを摂取した群では体脂肪,内臓脂肪,ウエスト・ヒップ周囲径に有意な低下が認められている。

この辺は、油の使いやすさの話なので、そのままスルーします。

中鎖脂肪酸は膵臓を刺激してインスリン分泌を促し、PPARγ発現を増加させアディポネクチン濃度が上昇する

中鎖脂肪酸は膵臓のβ細胞を直接刺激してインスリン分泌を促し、脂肪細胞でのPPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の発現を増加させ、血中のアディポネクチン濃度が上昇し、インスリンの感度が向上します。

中鎖脂肪酸は、糖尿病にも効果があります。

糖尿病との関係においては,MCFA-TGの摂取によりインスリン依存性の糖代謝が亢進されることがヒト試験で示されている。

さらにラットを用いた実験では,MCFA-TG摂取によりPPARγ発現の増加に伴って,血中アディポネクチン濃度が上昇し,糖代謝異常の改善が認められた。

「インスリン依存性の糖代謝が亢進される」は、インスリンによって細胞に糖が取り込まれることで血糖値が下がる働きが亢進するということです。

直接膵β細胞を刺激する

MCFA-TGは、中鎖脂肪酸からなる脂肪(油)のことです。

中鎖脂肪酸とインスリンの関係は、1971年の論文、中鎖脂肪の血糖降下作用とインスリン分泌作用についてに書かれていました。

MCFはin vitroで直接,膵β細胞を刺激してインスリンを分泌することが知られ,in vivoにおいても同様の作用が認められている.

(出典:中鎖脂肪の血糖降下作用とインスリン分泌作用について)

in vitro:試験管内で
in vivo:生体内で

中鎖脂肪酸(MCF)は、膵臓のβ細胞を直接刺激するのです。

PPARγとは?

PPARはperoxisome proliferator-activated receptorの頭文字を取ったもので、たとえば、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体といわれています。γ(ガンマ)は受容体の名前です。

少し前に書いた、魚油は体重・体脂肪を増加させないという記事にもPPARが出てきたので少し調べました。こちらはPPARαのことですが、ペルオキシソームについて調べて書いてあります。

ペルオキシソームは、ミトコンドリアのような細胞小器官の一つです。

「PPARγ発現の増加に伴って,血中アディポネクチン濃度が上昇し,糖代謝異常の改善が認められた」とはどういうことなのか、もう少し知りたい。脚注にもともとの論文タイトルがあったので探しました。

Medium-chain fatty acids: Functional lipids for the prevention and treatment of the metabolic syndromeというタイトルの論文がそれです。

早速、グーグル翻訳にかけて、英文と見比べながら読んでみました。関係がある箇所はここです。

Takeuchi et al.,also indicated that the antidiabetic effect of MCT with increased levels of plasma and adipocyte adiponectin was due to the enhanced expression of adiponectin mRNA in perirenal adipose tissue.

The authors showed that expression of transcriptional factors PPAR-gamma and retinoid X receptor (RXR) mRNA was increased simultaneously in adipose tissue, and they speculated that an increased amount of PPAR-gamma/RXR heterodimer enhanced the promoter activity of adiponectin in adipocytes.

(出典:Medium-chain fatty acids: Functional lipids for the prevention and treatment of the metabolic syndrome)

優秀なグーグル翻訳は、このような日本語訳を出してくれました。

Takeuchiらはまた、血漿および脂肪細胞のアディポネクチンレベルの増加によるMCTの抗糖尿病効果は、腎周囲脂肪組織におけるアディポネクチンmRNAの発現増強によるものであることを示した。

著者らは、転写因子PPAR-γおよびレチノイドX受容体(RXR)mRNAの発現が脂肪組織において同時に増加することを示し、PPAR-γ/ RXRヘテロ二量体の量の増加が脂肪細胞におけるアディポネクチンのプロモーター活性を増強すると推測した。

mRNAはメッセンジャーRNAのことです。mRNAはDNAから写し取られた遺伝情報からタンパク質を合成する鋳型になるものです。

PPAR-γとレチノイドX受容体(RXR)は結合する

その次に書かれているPPAR-γとレチノイドX受容体(RXR)の関係がよくわかりませんが、脂肪の功罪と健康(人と食と自然シリーズ)の中の代謝調整因子に書かれていました。

PPARにはいくつか種類があるので、PPARsと書かれています。

PPARsは、環境や食事からの刺激に応答する核内転写因子であり,標的遺伝子のPPAR response element (PPRE)にPPAR/retinoid X receptor (RXR)ヘテロダイマーとして結合する。

PPAR-γはレチノイドX受容体(RXR)と結合し、さらに標的遺伝子のPPREに結合するのです。

このとき、アディポネクチンが作られます。アディポネクチンは、インスリンの感受性を高める作用があります。

中鎖脂肪酸がPPAR-γに特異的に結合する「リガンド」になるのだろうと思ったのですが、中鎖脂肪酸からなる油を摂取すると、「モデル動物の血中のアディポネクチン濃度が上がることは報告されているが、PPAR-γに対する直接的なリガンド活性などは不明である」そうです。

しかし、中鎖脂肪酸からなる油を摂っていると、アディポネクチンが増えてくることは確かです。

NOTE

今回、中鎖脂肪酸が、長鎖脂肪酸よりもずっと簡単に代謝されることを初めて知りました。しかし、ふと、炭素数を見ると、中鎖脂肪酸は8~10です。

もっとも大切なエネルギー源であるブドウ糖は、炭素数が6でした。中鎖脂肪酸のサイズは、ブドウ糖とあまり変わらないのです。なるほどなあと思いました。

一方、食品に含まれる長鎖脂肪酸は、オレイン酸もリノール酸もα-リノレン酸もそうですが、18が多いです。こちらはだいぶ大きいです。

炭素数8のカプリル酸と炭素数10のカプリン酸が一番多い食品は、ココナッツオイル(ヤシ油)です。しかし、ココナッツオイルの脂肪酸は、炭素数12のラウリン酸が最も多く、ラウリン酸を摂っていると、総コレステロール値とLDLコレステロール値が上昇するようです。

飽和脂肪酸がコレステロールを上げるのはなぜ?に詳しく書きました。

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