野菜炒めは、意外にもビタミンCをそれほど破壊しません。しかし、ゴマサラダ油を使うと、他の油に比べて少し多くビタミンCを破壊します。とはいうものの、野菜をゆでることに比べれば些細な違いです。
野菜炒めを食べなくなった
以前はよく食べたのに、今はほとんど食べなくなっているものの一つが、野菜炒めです。多分、中華料理を食べに行ったとき以外、食べないと思います。たまに食べるとおいしいのですが、油炒めをするとカロリーが増えるので、何となく避けているのです。
そして、野菜のビタミンCが熱に弱いと知っていることも関係があるかもしれません。なるべく生で食べた方がよいなと思っています。
しかし、実際、野菜炒めをするとどのくらいビタミンCが壊れてしまうのかは知りませんでした。
油脂を熱媒体とした野菜の加熱調理とビタミンC 残存量を読ませていただいて、ビタミンCの残存量や、使う油によっても違いがあることが分かりました。
野菜ビタミンCランキング
最初にビタミンCが多い野菜ベスト10を書いておきましょう。私はピーマンもパセリも生で100g食べられますが、ブロッコリー以外100gも食べなくてもよいものばかりですね。
順位 | 食品名 | 含有量100gあたりmg |
1 | トマピー/果実生 | 200 |
2 | 赤ピーマン/果実生 | 170 |
3 | めキャベツ/結球葉生 | 160 |
4 | 黄ピーマン/果実生 | 150 |
5 | 和種なばな/花らい茎生 | 130 |
6 | パセリ/葉生 | 120 |
6 | とうがらし/果実生 | 120 |
6 | ブロッコリー/花序生 | 120 |
9 | 洋種なばな/茎葉生 | 110 |
9 | なずな/葉生 | 110 |
実験に使われたピーマン以外の野菜のビタミンC含有量を調べておきました。
緑豆モヤシ | 8 |
ほうれんそう/葉生 | 35 |
キャベツ/結球葉生 | 41 |
じゃがいも/塊茎生 | 35 |
さつまいも/塊根生 | 29 |
実験の概要
この論文の実験で使われた野菜は、ピーマン、ホウレン草、キャベツ、モヤシ、ジャガイモ、サツマイモです。
使用された油は、サラダ油、紅花油、大豆油、シソ油(えごま油)、ゴマサラダ油(以後ゴマ油という)、 オリーブ油、ココナッツ油の7種類でした。
材料についてはサツマイモだけ素揚げと天ぷらにされましたが、それ以外は、油で炒められました。それらが生の時と比較してどのくらいビタミンCの量が変化したかが、炒め直後と24時間後に調べられました。
実験の結果
こういう論文を読ませていただくと、日常何となくやっている調理の結果が数値化されて出てくるので、助かります。野菜炒めは、中華料理店では食べたとき歯ごたえがあるように強い火力で短時間炒めます。家庭でも同じように食べたいから、炒める時間は短くというのが常識として身についています。
炒めても野菜のビタミンCは意外と減らない
少し驚いたのは、野菜炒めを作ってもビタミンCは大して減らないと分かったことです。文中VCはビタミンCのことです。
ただし、中華料理屋で野菜炒めを頼むとたくさん入って来るモヤシは、炒め直後でもビタミンCが30%くらい減ってしまいます。
ピーマン,ホウレン草,キャベ ツの総 VC 残存率は,炒め直後,炒め後 24時間保存後ともに高かった.
各野菜の生の総 VC 量 を 100%とすると,ピーマン,ホウレン草ではともに総 VC 残存率が炒め直後 95%,24時間後 92%であった.
キャベツでは炒め直後 101%,24時間後 95%であった.
ジャガイモでは炒め直後 86%,24時間後 81%,モヤシでは炒め直後 71%,24時間後 60%と低くなった.
ジャガイモは,炒め時間が 3分と長かったため VC の損失が多くなったと考えられる.
また,モヤシは軟弱野菜であることから,炒め中に組織から VC が溶出しやすいため残存率が低くなったと考えられる.
ちなみに、この論文ではゆでる場合のビタミンCの残存率も調べられています。
私は油について書いているので、深くふれませんが、炒めるのとゆでるのでは、ゆでた方がビタミンCが減ります。
ゆでた場合は、温度は100℃にしかなりませんが、ビタミンCは水溶性なので、お湯に流れ出てしまいます。
油の種類によるビタミンC残存率の差は、ゴマ油以外はほとんどない
炒める時に使う油の差には興味がありました。
サラダ油、紅花油、大豆油はリノール酸をたくさん含み、ゴマ油は、酸化されにくい油ですが、リノール酸が豊富です。
シソ油(えごま油)はオメガ3系のα-リノレン酸が多い油です。
オリーブ油は、オレイン酸が主成分で熱に強く、ココナッツ油は、飽和脂肪酸が多い酸化されにくい油です。
酸化されやすいリノール酸が豊富なサラダ油、紅花油、大豆油とα-リノレン酸が多いシソ油(えごま油)ではビタミンCが減ってしまうと予想したのですが、結果は意外にもゴマ油を使うと、ビタミンCの残存率が下がってしまうのです。
炒め直後の総 VC 残存率の平均値は,ゴマ油以外の油を用いた場合は 90%前後となり,AsA 残存率 の平均値は 80%前後であった.
また,24時間後の総 VC 残存率の平均値は 85%前後,AsA 残存率は 60%前後であり,油脂の種類による VC 残存率の差はほとんどみられなかった.
しかし,ゴマ油を用いた場合には炒め直後の総 VC 残存率の平均値が 83%,AsA 残存率の平均値が 70%と低い傾向がみられた.
24時間後には,AsA 残存率の平均値は最も低く 48%にまで減少し,茹で加熱の 24時間後の AsA 残存率 の平均値 55%よりも低くなった.
文中、AsAはアスコルビン酸でビタミンCのことです。
VC 残存率とAsA 残存率の数字に差があるのは、VC 残存率には、デヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid、DHA)というアスコルビン酸が酸化された化合物の残存率も加わっているからです。
デヒドロアスコルビン酸は、またリサイクルされて使われるので、VC 残存率に入っています。
抗酸化力が最も強いゴマ油で野菜炒めを作ると、ビタミンCが一番減るとは一体なぜなのでしょう?
ゴマサラダ油は焙煎していないゴマを搾った油
この実験で使われたゴマ油は、加熱されていない、焙煎しないゴマを搾った油です。ゴマ油が抗酸化力を増すのは、加熱されて、セサモリンがセサモールに変化するなど加熱がきっかけになります。
この変化にビタミンCの酸化が伴っていることが考えられます。ビタミンCも抗酸化力があることが知られていますが、ゴマ油が加熱されることで抗酸化力を高める時にビタミンCを使うところが面白いと思いました。
抗酸化力が他の油と比べて抜群に強いゴマ油ですが、野菜炒めをつくる時は、ビタミンCのことを気にする方は、焙煎された香りがあるゴマ油を使った方がよいかもしれません。しかし、ゴマサラダ油を使っても、野菜のビタミンCは80%以上残ります。ゆでるよりもビタミンCは多いですよ。
NOTE
野菜炒めはビタミンCがあまり減らない。このことは覚えておきたいです。しかし、ゆでると水溶性のビタミンCは流れ出てしまいます。
ゴマサラダ油は、焙煎していないゴマを搾って油をとり、それを精製したものです。ゴマサラダ油を使って炒めると、野菜からのビタミンCの損失は他の油に比べて多くなりますが、それでも野菜をゆでた場合に比べればたいしたことはありません。
多分、気にする人はほとんどいないでしょう。
この他の油と調理についての記事は、油と調理についてをご覧下さい。