スパイスは油の酸化を抑える

ラードは、ローズマリー、セージ、サボリ、ジンジャー、ナツメグ、タイム、クローブ、メース、オレガノによって酸化が抑えられることがわかりました。てんぷら油(大豆油となたね油の混合油)は、ローズマリーとセージだけが酸化に対して効果がありました。

スパイス

私はカレーが好きで、冷凍庫にはいつも何種類かスパイスが入っていて自分でも作ります。しかし、スパイスの役割についてあまり考えたことがありませんでした。

はるか昔は冷蔵庫がないので、肉の保存方法はせいぜい、塩漬けか乾燥くらいしかなかったのではないかと思います。それで時間が経った肉のくささを消すために、スパイスが使われていたのだろう程度にしか思っていませんでした。

ところが、スパイスには抗酸化作用があり、保存性を高めるのだそうです。カレーは食べると元気が出るのでよく作っていますが、体に案外よいのかもしれないですね。

ずっと油の酸化について調べているのですが、香辛料の油脂に対する抗酸化性という論文を見つけました。

油にスパイスを添加し酸化抑制を調べる実験の概要

実験は、ラード、てんぷら油、てんぷら油を使ったドレッシング、てんぷら油を使ったマヨネーズ、バターを使ったクッキーを作り、実験試料となるスパイスを足して、ラード、てんぷら油、てんぷら油を使ったドレッシングは40℃にして保存。マヨネーズは室温で保存。クッキーも40℃で保存して、一定時間毎に酸化の度合いを測定するものでした。

天ぷらや炒め物など加熱調理中の油の酸化を測定しているのではなく、油の保存性をスパイスで高められるかどうかを実験しています。

てんぷら油は、抗酸化剤が入っていない市販の大豆油となたね油の混合油です。

スパイスの添加は、油脂各20gに対し0.5%になるように調整されています。添加量は0.1gです。

ドレッシングは、天ぷら油35ml、マヨネーズは天ぷら油200mlの重量に対し、0.5%スパイスを添加しています。クッキーもバター75gに対し、0.5%ですから0.375g添加しています。

使われたスパイスは、以下の通りです。

ハ ー ブ類:バジル、ベイリーブス、マージョラム、ミ ントリーブス、オレガノ、ローズマリー、セージ、サボリタラゴン、タイム

スパイシースパイス類:オールスパイス、カルダモン、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、レッドペッパー、シナモン、クローブ、ジンジャー、ターメリック、ガーリック

シードスパイス 類:アニス、キャラウエイ、セルリー、 コリアンダー、クミン、ディル、フェンネル、メース、 ナツメグ、マスタード

ラードはスパイスで酸化が抑えられる

ラードの酸化実験期間は5週でした。

スパイスを添加したラードは、レッドペッパー以外はいずれも酸化を抑え、最も効果があったのはローズマリーで、次にセージ、サボリ、ジンジャー、ナツメグ、タイム、クローブ、メース、オレガノの効果が大きいという結果がでました。

特にローズマリーは、4週経ってもPOV がほとんど変化しません。対照となる何も加えていないラードは、順調にPOV値が上昇していきます。POVについては過酸化物価(Peroxide Value: POV)とはをご覧下さい。

てんぷら油ではスパイスはあまり効果的ではない

てんぷら油の酸化実験期間は7週でした。

てんぷら油では、一般にラードに比べて顕著な効果は見られませんでした。ただ、ローズマリーとセージだけは大きな効果を示しました。次いでタイム、ナツメグ、ブラックペッパーの順にな り、マージョラム、オレガノ、サボリ、ジンジャーは弱い効果を示しました。

7週で、スパイスを何も添加しないてんぷら油は、POV が100meq/kgになりましたが、ローズマリーを添加した油は、13meq/kg、セージを添加した油は、14meq/kgでした。

家庭でよく使うブラックペッパーは、60meq/kgで効果的とはいえない結果でした。

ドレッシングには黒コショウが効果バツグン

てんぷら油をドレッシングにしたものの酸化実験期間は5週でした。

ドレッシングは2週目ではスパイスを入れないものと差がつかず、何ら効果はないように見えましたが、5週目ではかなりの差がでました。特にブラックペパーの効果がはっきりと出ました。

試料(ドレッシング)調製時の測定値1.0meq/kgに対し、5週では、スパイスを入れない対照が、17.0meq/kg、ローズマリーが11.0meq/kgに対し、ブラックペッパーは、3.0meq/kgでした。

ドレッシングにたいていブラックペッパーが入っていますが、保存性に効果があるようです。

マヨネーズとクッキーにはほとんど効果なし

マヨネーズに対しては、よく一緒に加えられるマスタードは効果がなく、セージ、オレガノ、ブラックペッパー、ローズマリ一にわずかに効果があった程度です。

マヨネーズは、卵黄に含まれている鉄分のせいでとても酸化されやすい性質があります。昔からあるマヨネーズですが、メーカーの品質管理はとても高い技術に支えられています。

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また、バターを多量に使用したクッキーに対しては、実験に使用したスパイス(ローズマリー、ジンジャー、ナッメグ 、シナモン)は、どれも抗酸化性は示しませんでした。

NOTE

ラードとてんぷら油(サラダ油といってもよいと思います)にローズマリーやセージを重量比0.5%加えると酸化が効果的に抑えられることが分かりました。

ラードはそれ以外にも、サボリ、ジンジャー、ナツメグ、タイム、クローブ、メース、オレガノで酸化防止の効果が大きいです。カレーと関係があるのでしょうか?

てんぷら油で作ったドレッシングには、黒胡椒がバツグンに効果があったことを知ると、昔からのレシピは多くの人の試行錯誤の結果であることがわかります。

ローズマリーは私は使ったことがないのですが、クックパッドを見ると、あると便利♪ローズマリーオイルなんてやっている人がいました。

香りが移るから料理によると思います。

アマゾンでもローズマリー(ホール)100gが買えますが、ご近所の乾物屋さんに頼むと送料はかかりません。

ちなみに、私はギャバンの100g入りスパイスをこよなく愛しています。香りがいい。

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