アラキドン酸が多く含まれる食品を調べた

アラキドン酸は炎症の原因になるエイコサノイドの材料だといわれます。日本人はオメガ6脂肪酸のほとんどをリノール酸で摂っています。アラキドン酸が多く含まれる食品を順番に並べてみましたが、オメガ3の脂肪酸と比較するとそれほど多いという感じではないです。

黄身

アラキドン酸はこのようなもの

アラキドン酸は、炭素数20、炭素の二重結合数が4の多価不飽和脂肪酸です。

分子式 C20H32O2で、示性式は CH3(CH2)4(CH=CHCH2)4(CH2)2COOHです。融点は-49℃です。

構造式はこのようになります。

アラキドン酸

アラキドン酸

日本人が摂取するn-6系脂肪酸の 98% はリノール酸

日本人の食事摂取基準(2015年版)を読むと、アラキドン酸はリノール酸の代謝産物と考えられていて、アラキドン酸自体の不足も過剰摂取も特に書かれていませんでした。

 n-6 系脂肪酸には、リノール酸(18:2n-6)、γ-リノレン酸(18:3n-6)、アラキドン酸(20:4n-6)などがあり、γ- リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸の代謝産物である。

生体内では、n-6 系脂肪酸をアセチル CoA から合成することができないので経口摂取する必要がある。

日本人で摂取される n-6 系脂肪酸の 98% はリノール酸である。γ- リノレン酸やアラキドン酸の単独摂取による人体への影響について調べた研究は少ない。

このようにオメガ6(n-6)必須脂肪酸としては、リノール酸がほとんどを占めています。

参考のため、オメガ6(n-6)1日の摂取基準の表を載せておきます。

n-6 系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)(出典
 性 別  男 性  女 性
 年齢等  目安量  目安量
 0~5(月) 4 4
 6~11(月) 4 4
 1~2(歳) 5 5
 3~5(歳) 7 6
 6~7(歳) 7 7
 8~9(歳) 9 7
 10~11(歳) 9 8
 12~14(歳) 12 10
 15~17(歳) 13 10
 18~29(歳) 11 8
 30~49(歳) 10 8
 50~69(歳) 10 8
 70 以上(歳) 8 7
 妊 婦 9
 授乳婦 9

目安量とはこのように説明されています。

十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安量」(adequate intake:AI)を設定する。

一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。

アラキドン酸が多い食品

アラキドン酸が多い食品について調べてみました。加工品は除いて生(なま)の食品だけ載せました。加工品は水分が減るので100gあたりの成分量は多くなります。

卵黄が多く、次がぶたの内臓だと覚えておきましょう。アラキドン酸は、これら生物にとっても必須脂肪酸であり、エサから摂ったリノール酸かアラキドン酸そのものが元になっています。

アラキドン酸 : 含有量
日本食品標準成分表2015年版
(七訂)による
食品名 成分量100g
あたりmg
鶏卵/卵黄/生 480
ぶた/じん臓/生 370
くじら/本皮生 360
やつめうなぎ/生 320
ぶた/肝臓/生 300
あんこう/きも生 260
くじら/うねす生 210
うこっけい卵/全卵生 210
みなみまぐろ/脂身生 190
きちじ/生 190
あひる/皮生 190
うに/生うに 180
まさば/生 180
あゆ/養殖内臓生 180
しろさけ/すじこ 180
いしだい/生 180
はと/肉皮なし生 180
くろまぐろ/脂身生 170
まがも/肉皮なし生 170
うし/肝臓/生 170
ぶり/成魚/生 160
ぶた/心臓/生 160
あぶらつのざめ/生 160
ほんもろこ/生 160
うし/じん臓/生 150
ぶた/かた/脂身生 150
ぶた/かたロース/脂身生 150
にわとり/心臓/生 150
鶏卵/全卵/生 150
ぶた/ロース/脂身生 150
かじか/生 150
ぶた/もも/脂身生 150
うさぎ/肉赤肉生 140
ぶた/そともも/脂身生 140
まながつお/生 140
かたくちいわし/生 140
あいがも/肉皮つき生 130
うずら/肉皮つき生 130
かます/生 130
うずら卵/全卵生 130
なまず/生 120
はも/生 120
あひる/肉皮つき生 120
にわとり/肝臓/生 120
いぼだい/生 120
たちうお/生 120

細胞膜の構成成分になる

それほど多い量ではありませんが、食品から入ってきたアラキドン酸は体の中でどうなるのか?

ロイコトリエンと炎症を読むと書かれていました。

アラキドン酸は食餌として摂取されるが,細胞内に取り込まれると速やかに細胞膜の構成成分の一つであるリン脂質の中へ入る.

リン脂質には脂肪酸の入りうる場所が2つあるが,アラキドン酸は,C-2位のところヘエステル結合により入り込む.

以前、細胞膜の単位はリン脂質だけど、コレステロールはその隣に存在するという記事を書いて、リン脂質について少し説明しました。

リン脂質には、2本脂肪酸があり、その一方であるC-2位へ入り込むということです。

そして、リン脂質に存在するアラキドン酸は、エイコサノイドの材料になります。この続きは、アラキドン酸から炎症に関係があるエイコサノイドができるでお読みください。

アラキドン酸から炎症に関係があるエイコサノイドができる
アラキドン酸は、プロスタグランジン(PG)とトロンボキサン(TX)になるほか、ロイコトリエン(LT)とリポキシン(LX)という生理活性物質になります。まとめてエイコサノイドと呼ばれます。これらの反応は、小さな滝が連続するcascade(カス...

NOTE

アラキドン酸は、オメガ3の脂肪酸で同じ炭素数20のイコサペンタエン酸(EPA)と対比してよく書かれます。

それで、含有量を多い順に調べてみると、アラキドン酸に比べてイコサペンタエン酸(EPA)の量の方がずっと多いです。もちろんEPAは魚に含まれています。

魚にとってもオメガ3は必須脂肪酸なので、食べているエサに豊富に含まれているのでしょう。

エイコサノイドで問題になるアラキドン酸は、意外と食品には含まれていないのだなと思いました。

この他のアラキドン酸についての記事は、アラキドン酸についてをご覧下さい。

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