アラキドン酸から炎症に関係があるエイコサノイドができる

アラキドン酸は、プロスタグランジン(PG)とトロンボキサン(TX)になるほか、ロイコトリエン(LT)とリポキシン(LX)という生理活性物質になります。まとめてエイコサノイドと呼ばれます。これらの反応は、小さな滝が連続するcascade(カスケード)にたとえられ、アラキドン酸カスケードと呼ばれます。

カスケード

アラキドン酸はプロスタグランジンとトロンボキサン以外にも変化する

アラキドン酸は、たくさんの生理活性物質に変化します。

すでに、アラキドン酸からプロスタグランジン(PG)とトロンボキサン(TX)ができる話は書きました。

プロスタグランジンE2とE3、E1の違いを構造式から調べたに書きました。プロスタグランジンE2を中心に、EPAからできるE3、ジホモ-γ-リノレン酸からできるE1の構造式の違いについて書きましたが、主役はアラキドン酸です。

アラキドン酸は、下図の黄色に塗ったPGD2からPGI2までのプロスタグランジンとTXA2というトロンボキサンの合計5個のプロスタノイドができます。

また、プロスタノイドの発見は、アスピリンがなぜ効くか作用機序の発見ももたらしました。アスピリンは柳の樹皮から発見されました。しかし、なぜ解熱、鎮痛、消炎作用があるのかわからなかったのです。アスピリンはヤナギの樹皮からという記事に詳しく書きました。

アスピリンはヤナギの樹皮から
アスピリンはヤナギの樹皮に含まれる物質をルーツに持ちます。ヤナギの樹皮に解熱、鎮痛、消炎作用があることは昔からよく知られていました。さらに肩こりやねんざに使われる湿布薬のスースーする成分もアスピリンと近い物質です。アスピリンは古くからある薬

アスピリンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するので、そこから先の変化が起きなくなり、プロスタグランジンとトロンボキサンが作られなくなります。それで、解熱、鎮痛、消炎作用が起きます。この発見のきっかけについて、プロスタグランジンが発見される歴史で疑問に思った2つのことに書きました。

プロスタグランジンが発見される歴史で疑問に思った2つのこと
プロスタグランジンは、細胞膜のリン脂質にあるアラキドン酸、γ-リノレン酸とEPAから作られます。もともと精液から発見され、その後、脂肪酸が材料になることが分かりました。また、アスピリンが効くのは、プロスタグランジンを作らせないからだと発見されました。

アラキドン酸からPGとTX

しかし、アラキドン酸からできる生理活性物質はこれだけではありません。下図をご覧下さい。左側に広がる別なルートもあります。

アラキドン酸カスケード

ロイコトリエン(LT)とリポキシン(LX)

こちらのルートでできるのは、薄い紅色で塗ったロイコトリエンLT)と薄い緑色に塗ったリポキシンLX)です。

図を見るとアラキドン酸から何通りにも反応が進んでいます。これはアラキドン酸カスケードと呼ばれます。

cascade(カスケード)は、英辞郎によると「滝のように落ちる、滝になって落ちる」という意味です。(連続した)小さな滝、〔次々に起きる〕多くのものという意味もあります。なるほど。

アラキドン酸カスケード

青色に塗った5-リポキシゲナーゼ15-リポキシゲナーゼは酵素の名前です。

その下の5-HPETEと15-HPETEは、ヒドロペルオキシ-6-トランス-8,11,14-シス-イコサテトラエン酸の略称です。頭にそれぞれ数字がついています。文字だけ読んでもよくわかりませんが、下に構造式を載せます。それと見比べてください。

それぞれ構造式を見てみよう

構造式を書いた図にするとこのようになります。(クリックすると大きくなります)

構造式を見比べるとよいのは、でき上がるロイコトリエンとリポキシンが、アラキドン酸から形がひどく変わっていないことがわかるところです。

脂肪酸であるアラキドン酸からそれほど大きくない変化で、生理活性物質になるのだなと目で見て、納得できます。簡単に変化するでしょう。

アラキドン酸カスケード構造式

どんな作用をするのか

ロイコトリエンとリポキシンの働きについて調べました。ロイコトリエンと炎症に説明されていました。まずは、表を見てください。

ロイコトリエンは、炎症を起こす作用があります。リポキシンは反対に炎症を鎮める作用があります。

LTA4 半減期が1分ほどの不安定な中間体。
これといった生物活性は見出されていない.
LTB4 きわめて強い白血球の誘引作用ならびに脱顆粒作用
LTC4 きわめて強い気管支平滑筋および肺実質組織の収縮作用
喘息原因物質SRS-A
(slow rcacting substance of anaphylaxis)の正体
きわめて強力な血管透過性亢進作用
LTD4
LTE4
LXA4 炎症収束に関与する

分かりにくいところを説明していきましょう。

脱顆粒とは

脱顆粒は、アレルギー反応でよく知られたヒスタミンなどをマスト細胞(肥満細胞)が放出することです。アレルギー反応を起こすことです。

血管透過性とは

血管透過性とはたまに聞いたことがありましたが、意味が分かっていませんでした。炎症に関係があります。

炎症ができると腫れます。それは血管の細胞にすき間ができて、血しょう蛋白がもれ、白血球も血管から外に出てくるからです。

このように書かれていました。

血管の内側はすべて一層からなる内皮細胞層で覆われている.

各内皮細胞間は,普段はぴったりと閉じられているので,分子サイズの大きな血漿蛋白などは血管外へ漏れ出ることはない.

しかし炎症時には,毛細管に続く細静脈において,内皮細胞間の間隙が拡大されるため,そこから血漿蛋白が血管外へ漏れ出て,いわゆる浮腫を形成する.

炎症時には白血球などもこの間隙を通って血管外へ浸潤するものと思われる.

エイコサノイド

エイコサノイドとは eicosanoid と綴ります。eicosa とは「20」という意味です。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版にはこのように書かれていました。

イラストレイテッド ハーパー・生化学について
2017年の春にイラストレイテッド ハーパー・生化学原書29版を買ってそれ以来使っています。きっかけは、アセチルCoAからコレステロールが合成される図を見たからです。 最新版は2016年刊行の30版です。出版社に敬意を表して先...

アラキドン酸とほかのC20多価不飽和脂肪酸から,プロスタグランジン(PG),トロンボキサン(TX),ロイコトリエン(LT),リポキシン(LX)とよばれる生理的,薬理的効果を有する脂質(エイコサノイド)が産生される.

エイコサノイドは、C20、炭素数が20の多価不飽和脂肪酸からつくられる生理活性物質だということですね。

今まで書いて来た、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、リポキシンはエイコサノイドです。

少しややこしいので表をつくっておきましょう。

エイコサノイド プロスタノイド プロスタグランジンPG
トロンボキサンTX
ロイコトリエンLT
リポキシンLX

NOTE

脂肪酸は細胞膜の材料になったり、ミトコンドリアで燃やされるエネルギー源になったりします。タンパク質がアレルギーの原因であるアレルゲンになるのと比べると、「大人しい」ものだと思っていました。

ところが、炭素数20の多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸は、些細な刺激で簡単に細胞膜から遊離され、酵素によって、生理活性物質プロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンやリポキシンに変化します。

しかも、構造式を眺めると、アラキドン酸から少し形が変わったくらいの変化しかありません。これは簡単に変わるということだと思います。

生理活性物質になると様々な作用を持ちますが、私たちが困るのは炎症がひどくなるかもしれないところです。

しかし、これは自然の反応で、アラキドン酸が悪いわけではありません。

また、アラキドン酸は、イヌイットのような食生活をしているのでなければ細胞膜に一番存在する脂肪酸です。EPAの効果についてという記事に、グリーンランドイヌイットとデンマーク人の血しょう中のアラキドン酸とEPAを比較した表を載せてあります。

今の時代、アレルギーになる人が増えています。私自身も47歳から花粉症になりました。炎症を軽くするには、プロスタグランジンE2が炎症を促進する仕組みとそれを抑制する仕組みで書きましたが、EPAやDHAを摂る。つまり魚を食べる回数を増やすことだと思います。

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