アラキドン酸から炎症に関係があるエイコサノイドができる

アラキドン酸は炎症を亢進するエイコサノイドの材料になると知られています。脂肪酸がどんな変化をするとそんな作用を持つようになるんだろう。できあがるプロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)ロイコトリエン(LT)リポキシン(LX)の構造式を調べて、作用についても調べました。

卵の黄身には、アラキドン酸が生の食品の中で一番多く含まれています。

黄身

リノール酸とりすぎがよくないといわれて何年か経ちました。アラキドン酸からできるエイコサノイドという物質が炎症をひどくするらしい・・・というところまでは、何となく知っています。

アラキドン酸がどんな物質に変化してそれがどんな働きをするのか?文字だけで読んでもよく分かりません。

ここは、構造式を調べてみようと思いました。脂肪酸は単純な構造です。

ともかく、「見たい」と思いました。

脂肪酸という脂肪を構成する部品は、短く切られて(β酸化)ミトコンドリアで燃料になったり、リン脂質として細胞膜の材料になったりしていましたが、今度は、何やら体に指令を出す生理活性物質になるというのです。

アラキドン酸からどの程度変化したらそのような物質になるのか。そして、それらがどんな働きをするのか並べてみたいと思いました。

その前に、少し予備知識をつけましょう。

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エイコサノイド

エイコサノイドとは eicosanoid と綴ります。eicosa とは「20」という意味です。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版にはこのように書かれていました。

アラキドン酸とほかのC20多価不飽和脂肪酸から,プロスタグランジン(PG),トロンボキサン(TX),ロイコトリエン(LT),リポキシン(LX)とよばれる生理的,薬理的効果を有する脂質(エイコサノイド)が産生される.

エイコサノイドは、C20、炭素数が20の多価不飽和脂肪酸からつくられる生理活性物質だということですね。

オメガ3の場合、炭素数が20の脂肪酸にはEPA(エイコサペンタエン酸)があります。この記事では、まず、問題になっているオメガ6のアラキドン酸がどのような物質に変わるのか調べていきます。

アラキドン酸は、リノール酸から変化して来る場合と食べものから入って来る場合があります。リノール酸から変化する経路は、リノール酸はアラキドン酸に変換されるに詳しく書きました。

この記事では、リノール酸がアラキドン酸に変換され、さらにドコサペンタエン酸に変換されるまでを順番に説明します。エイコサノイドは炭素数20の脂...

アラキドン酸は2つの経路で変化する

アラキドン酸がエイコサノイドに変化する経路は2つあります。いろいろ聞き慣れない名称が出てきてめんどくさいですが、プロスタノイドとは、プロスタグランジン(PG)とトロンボキサン(TX)を合わせた呼び方です。

ややこしいので表をつくっておきましょう。

エイコサノイド プロスタノイド プロスタグランジンPG
トロンボキサンTX
ロイコトリエンLT
リポキシンLX

アラキドン酸からつくられるエイコサノイドは第2グループと呼ばれます。第1と第3があるのですが、それは別記事にします。

アラキドン酸は、2つの経路でエイコサノイドをつくります。

アラキドン酸カスケード

シクロオキシゲナーゼ経路とリポキシゲナーゼ経路です。アラキドン酸からこのようにたくさんの生理活性物質ができるので、この反応全体をアラキドン酸カスケードと呼びます。カスケードとは「滝」の意味です。

アラキドン酸2つの経路

まずは、プロスタノイドについて見てみましょう。

シクロオキシゲナーゼ経路(COX)

下図は、イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版に載せられていた図からプロスタノイドの関係分を抜き書きしました。

アラキドン酸がシクロオキシゲナーゼ(COX)によって環構造になりますが、とんでもなく構造が変わったという感じではないです。

プロスタグランジンとトロンボキサンへの変換

これらプロスタノイドの作用は、ウイキペディアのプロスタグランジンに書かれていました。これらは炎症を亢進させる作用があると分類されています。

PGD2 血小板凝集作用・睡眠誘発作用
PGE2 平滑筋収縮作用
末梢血管拡張作用
発熱・痛覚伝達作用
骨新生・骨吸収作用
PGF2 黄体退行・平滑筋(子宮・気管支・血管)収縮作用
PGI2 血管拡張作用・血小板合成阻害作用
TXA2 血小板凝集作用、血管・気管支収縮作用

アスピリン、インドメタシン、イブプロフェンはプロスタノイドを作らせない

上図右に「アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン」が出てきます。アスピリンはバファリンでよく知られていて、インドメタシンやイブプロフェンは痛み止めの薬に入っています。

これらは、非ステロイド系抗炎症剤(nonsteroidal anti-inflammatory drug NSAID)と呼ばれています。

プロスタグランジンが発見される歴史を調べてみたに書きましたが、1969年にアスピリンがなぜ炎症に効くのか発見されたのです。

1969年には,イギリスのウェルカム研究所のP.J.PiperとJ.R.Vaneが,それまで作用機序の明らかでなかった抗炎症剤のアスピリンがPGの生合成の阻害剤であることを報告した.

アスピリンはヤナギの樹皮からで書きましたが、ヤナギの樹皮に解熱、鎮痛、消炎作用があることは昔からよく知られていたのです。

その効く原因が、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するからだと分かったのです。

プロスタグランジンが炎症、発熱、痛みの原因とは

アスピリンがなぜ効くか?シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するからだと分かれば、アスピリンが効く対象である、炎症、発熱、痛みの原因に基本的にプロスタノイド、プロスタグランジンが関係していると考えられるのは、自然なことだと思います。

リポキシゲナーゼ経路(LOX)

一方、リポキシゲナーゼ経路では、ロイコトリエン(LT)とリポキシン(LX)をつくります。こちらもアラキドン酸と比較して、ひどく形が変わったようには見えません。

ただ、図中、一番下のロイコトリエンC4、ロイコトリエンD4は、結合するものが多いと思います。

下図も、イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版に載せられていた図から関係分を抜き書きしました。

ロイコトリエンとリポキシンへの変換

さらに、反応経路は分からなかったのですが、LXC4、LXD4、LXE4についても調べることができました。(出典

構造式は、イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版に書かれていた図に合わせて少し変えてあります。

よく見ると、ロイコトリエンC4、ロイコトリエンD4、ロイコトリエンE4に結合していた、「グリシン+システイン+グルタミン酸」と「グリシン+システイン」と「システイン」の組み合わせとまったく同じです。

LXC4とLXD4とLXE4

ロイコトリエン(LT)

ロイコトリエンとリポキシンの働きについて調べました。ロイコトリエンと炎症に説明されていました。まずは、表を見てください。

ロイコトリエンは、炎症を起こす作用があります。リポキシンは反対に炎症を鎮める作用があります。LXC4、LXD4、LXE4については、現時点で作用が分かりませんでした。

分かればここに書き足します。

LTA4 半減期が1分ほどの不安定な中間体。
これといった生物活性は見出されていない.
LTB4 きわめて強い白血球の誘引作用ならびに脱顆粒作用
LTC4 きわめて強い気管支平滑筋および肺実質組織の収縮作用
喘息原因物質SRS-A
(slow rcacting substance of anaphylaxis)の正体
きわめて強力な血管透過性亢進作用
LTD4
LTE4
LXA4 炎症収束に関与する
LXB4 炎症の消退反応
LXC4
LXD4
LXE4

分かりにくいところを説明していきましょう。

ロイコトリエンB4(LTB4)について

ロイコトリエンB4はが白血球の誘引作用を持つというのはどういうことなのでしょう?

化学運動性物質と呼ばれる性質を持ちます。

化学運動性物質とは、それが存在するだけで白血球や細胞が活性化され、活発ですが無秩序に動き回るようになる物質のことです。白血球が誘引されるというのは、この性質によります。

また、脱顆粒作用というのは、細胞の中に入っているヒスタミンなどの分泌物質が外に放出されることをいいます。

血管透過性とは

血管透過性とはたまに聞いたことがありましたが、意味が分かっていませんでした。炎症に関係があります。

このように書かれていました。

血管の内側はすべて一層からなる内皮細胞層で覆われている.

各内皮細胞間は,普段はぴったりと閉じられているので,分子サイズの大きな血漿蛋白などは血管外へ漏れ出ることはない.

しかし炎症時には,毛細管に続く細静脈において,内皮細胞間の間隙が拡大されるため,そこから血漿蛋白が血管外へ漏れ出て,いわゆる浮腫を形成する.

炎症時には白血球などもこの間隙を通って血管外へ浸潤するものと思われる.

このように,細静脈の内皮細胞間の間隙が開いているときに細動脈が拡張すると,その分だけ多くの血液が毛細血管およびその後に続く細静脈にも流れ込み,開いている孔からより多くの血液成分を血管外へ漏出させることになる.

このようなわけで,内皮細胞の間隙を拡大する作用をもった物質と細動脈を拡張する作用をもった物質は,ともに血管透過性を亢進させる必要条件を備えた物質であるといえよう.

炎症ができると、腫れます。それは血管の細胞にすき間ができて、血しょう蛋白がもれ、白血球も血管から外に出て来ます。

アラキドン酸は炎症をひどくするだけなのか?

アラキドン酸は、炎症を亢進させる物質になると思いながら調べてきましたが、どうも、そう単純ではないようです。

プロスタグランジンの中でも、PGI2は血管拡張作用・血小板合成阻害作用があり、これは他のプロスタグランジンとは反対の働きをしています。

また、リポキシンは反対に炎症を鎮める作用があります。

さらに、アスピリンを始めとする非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)を頻繁に服用すると、胃の粘膜障害(胃炎・胃潰瘍)を引き起こすことが知られています。炎症や痛みを鎮めるものを飲んでいて胃の炎症が起きるのですから、おかしな話です。

プロスタグランジンについてはもう少し知りたいと思います。

まとめ

アラキドン酸は炭素数20で二重結合が4個ある脂肪酸です。脂肪酸の構造は簡単なものです。

アラキドン酸からできるプロスタノイドやロイコトリエンやリポキシンが炎症に関係する物質になるとは、アラキドン酸を材料にしてどんな変化をさせたのだろうと思っていました。

しかし、意外にもアラキドン酸を少し変形させたものでした。

しかも、炎症を亢進したり鎮めたりと正反対の働きをしていることも分かり、もう少し知りたいと思いました。

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