この記事は、脂質は脂肪と同じものではないの補足記事です。エステルの生成とエステルの加水分解について説明します。
エステルとは何か?
脂質の一つとしてエステルがあると説明されていました。エステルとはどんなものでしょう?
有機化学(第2版) (ベーシック薬学教科書シリーズ 化学同人 2008)にこのように説明されています。
カルボキシ基(-COOH)の水素が炭素置換基に置き換わったものを総称してエステル(ester)という。
また、カルボキシ基をもつものを総称してカルボン酸といいます。
エステルを説明するために、構造が簡単な酢酸エチルを使います。酢酸エチルは酢酸(お酢の主成分)とエタノール(エチルアルコール)のエステルです。
酢酸エチルは、日本酒の中でも吟醸酒のフルーティーな香り、吟醸香の成分の一つです。
酢酸もエタノールも構造がとても簡単なので見やすいと思います。
酢酸とエタノールから酢酸エチルをつくる
酢酸は、確か中学校の理科に出て来たと思います。化学式は、 CH3COOH です。上で説明した通り、カルボン酸です。また、炭素数2の短鎖脂肪酸です。
エタノールは、お酒のアルコールです。化学式は、 C2H5OH です。
酢酸とエタノールが反応し、下図にあるように酢酸の赤く塗った OH とエタノールの H が結合して水(H2O)になり離れて、エタノールからHを除いたものが酢酸の残りと結合して酢酸エチルができます。
エタノールからHを除いたものが、上で引用した説明の中にある「炭素置換基」になります。
この図のような反応を脱水縮合といいます。
加水分解
また、逆方向にも反応が進みます。酢酸エチルに水が加わると、加水分解し、酢酸とエタノールができます。
脂質は脂肪と同じものではないに出てきた「エステル結合やアミド結合をもち,加水分解が可能なもの」の中で、エステル結合と加水分解が可能なものについては意味が分かるようになったと思います。
では、記事に戻りましょう。