ブドウ糖を分解する解糖系から脂肪合成に必要なグリセリンを得る

糖から脂肪をつくる話です。魚の脂肪はオメガ3の脂肪酸EPAやDHAをたくさん含んでいますが、それは藻由来の脂肪酸だといわれています。藻は、光合成をしますが、光合成で作られるのはブドウ糖です。ブドウ糖はエネルギーをつくる燃料として使われますが、余れば脂肪として蓄えられます。脂肪は性能のよい燃料です。

つまり、藻がつくって蓄えた脂肪が、魚に受け継がれます。

藻が脂肪をつくるには、ブドウ糖が脂肪になるまでには、解糖系という経路をたどって、ピルビン酸まで分解され、さらにアセチルCoAになります。そして、アセチルCoAから脂肪酸が作られていきます。

解糖系は、炭素数6のブドウ糖から炭素数3のピルビン酸まで分解する過程だといえばその通りなのですが、順番に見ていくと得るところがあります。

脂肪は脂肪酸とグリセリンのエステルでした。グリセリンも炭素(C)、水素(H)、酸素(O)からできています。炭素を同化する手段は光合成しかありませんから、グリセリンも解糖系の反応の中からそのもとになる材料が得られます。

この記事では、解糖系について書きます。

砂糖

解糖系の反応

解糖系は、細胞質ゾルで行われます。また、反応を進めるために酸素を必要としません。解糖系でもエネルギーであるATPをブドウ糖1分子につき2分子産生します。このため、無気呼吸とも呼ばれます。

ブドウ糖からスタートして、ピルビン酸までは10個の反応があります。ピルビン酸からはピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によってアセチルCoAになります。

アセチルCoAから先は、脂肪酸の生合成反応があります。

まず、解糖系の一連の反応をご覧下さい。

解糖系の反応を知る目的は、脂肪酸ではなく、脂肪をつくるために必要なグリセリンをどうやって得るかということです。脂肪酸の生合成はアセチルCoAからですから、解糖系の反応はそれほど重要ではありません。

α-D-グルコースからα-D-グルコース6-リン酸

α-D-グルコースの6位にリン酸がつきます。このリン酸はATPのリン酸を1つグルコースの6位に結合させることになり、ATPはADPになります。最初にATPを使います。この時の酵素は、グルコキナーゼです。図の一番右は、リン酸を省略しないで書いたものです。

α-D-グルコース6リン酸

α-D-グルコース6リン酸

α-D-グルコース6-リン酸からD-フルクトース6-リン酸

次に酵素ホスホヘキソースイソメラーゼによって、リン酸はそのままでグルコースからD-フルクトースへと糖の部分が変化します。図の一番右は、リン酸を省略しないで書いたものです。

D-フルクトース6-リン酸

D-フルクトース6-リン酸

D-フルクトース6-リン酸からD-フルクトース1,6-2リン酸

酵素ホスホフルクトキナーゼによって、さらに1位にもリン酸が結合します。この時もATPからリン酸を受け取ります。ATPはADPになります。これでATPを2分子消費しました。図の一番右は、リン酸を省略しないで書いたものです。

D-フルクトース1,6-2リン酸

D-フルクトース1,6-2リン酸

D-フルクトース1,6-2リン酸からジヒドロキシアセトンリン酸/グリセルアルデヒド3-リン酸

酵素アルドラーゼの働きによって、D-フルクトース1,6-2リン酸は2つに分かれます。3位の炭素と4位の炭素の間の結合が切れます。この時、4位の炭素についていたOHのHだけが3位側に移動します。

DHAP02

グリセルアルデヒド3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸

こうして2つの物質ができます。

グリセルアルデヒド3-リン酸の3は、官能基であるアルデヒド(-CHO)から数えて3番目の炭素にリン酸が結合していることを示しています。もう一つは、ジヒドロキシアセトンリン酸です。

これら2つの物質は酵素の作用によって相互に変換することができます。

グリセルアルデヒド3-リン酸は、リン酸を取り込んで1,3 ビスホスホグリセリン酸に変化します。ビスは2を意味し、ホスホ(phospho)はリン酸を意味します。

ジヒドロキシアセトンリン酸は、グリセルアルデヒド3-リン酸が反応して無くなると、自分がグリセルアルデヒド3-リン酸になり、同じくリン酸を取り込んで1,3 ビスホスホグリセリン酸に変化します。

つまり、D-フルクトース1,6-2リン酸からグリセルアルデヒド3-リン酸が2分子できたことになります。

グリセルアルデヒド3-リン酸から2×1,3 ビスホスホグリセリン酸

そして、1,3 ビスホスホグリセリン酸も2分子できます。Piはリン酸のこと。H3PO4

1,3-ビスホスホグリセリン酸

1,3-ビスホスホグリセリン酸

2×1,3 ビスホスホグリセリン酸から2×3-ホスホグリセリン酸

2分子できた1,3 ビスホスホグリセリン酸は、リン酸を1つ切り離して、2分子の3-ホスホグリセリン酸になります。この時切り離されたリン酸は、ADPに取り込まれてATPになります。もちろん、2分子のATPができます。

3-ホスホグリセリン酸

3-ホスホグリセリン酸

2×3-ホスホグリセリン酸から2×2-ホスホグリセリン酸

2分子の3-ホスホグリセリン酸は、酵素によってリン酸の位置を上から2番目の炭素に移動させ、2分子の2-ホスホグリセリン酸となります。

2-ホスホグリセリン酸

2-ホスホグリセリン酸

2×2-ホスホグリセリン酸から2× ホスホエノールピルビン酸

次に、2分子の2-ホスホグリセリン酸はエノール化されて、2分子のホスホエノールピルビン酸になります。エノールとは、二重結合の炭素にOHがついたもの。オール(-ol)はアルコールを意味します。メタノール、エタノールなど。エネ(Ene)は不飽和炭化水素、つまり二重結合を表します。

ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)を分解して考えると、ドコサ (docosa)は「22」。ヘキサ (hexa)は「6」。エン酸(enoic acid)は不飽和のカルボン酸です。炭素数22で6個の不飽和炭素をもつカルボン酸という意味になります。

ホスホエノールピルビン酸は、ピルビン酸がエノール化されてエノールピルビン酸になったものにリン酸が結合した形をしていると考えるとよいです。

ホスホエノールピルビン酸

ホスホエノールピルビン酸

2× ホスホエノールピルビン酸から2× ピルビン酸

2分子のホスホエノールピルビン酸は、酵素の働きでリン酸を切り離して2分子のピルビン酸になります。この時切り離されたリン酸は、ADPに取り込まれて2分子のATPができます。ピルビン酸は、次にクエン酸回路に入ります。

ピルビン酸

ピルビン酸

グリセリンはジヒドロキシアセトンリン酸から

脂肪酸の生合成は、アセチルCoAから始まりますが、脂肪を合成するにはグリセリンが必要でした。そのグリセリンは、解糖系の4番目の反応でできるジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)がもとになります。

ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼによってグリセロール3-リン酸になります。もう、ほとんどグリセリンですね。

グリセロール3-リン酸

グリセロール3-リン酸

グリセロール3-リン酸は、脂肪が完全に分解され、脂肪酸とグリセリンになった時、グリセリンがまた脂肪に戻るときの最初の反応でできる物質です。

グリセロール3-リン酸から、脂肪(トリグリセリド)に向かって反応が進んでいきます。

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